ICHARM -- The International Centre for Water Hazard and Risk Management

ニュース


ICHARMシンポジウム 「ICHARM Quick Report on Floods 2007」 の開催について。

 (独)土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、去る11月6日(火)にICHARM棟内1階講堂において「ICHARM Quick Report on Floods 2007」と題するシンポジウムを開催しました。これは、講堂の完成を記念して企画したイベントです。当日は、土研・国総研をはじめ、大学教授や水災害の専門家及び、現在ICHARMで研修中の海外からの研修生29名を含め、約60人入る会場は満席の状態でした。

最初に、土木研究所坂本理事長が開会挨拶を行いました。近年地球規模で極端な気象現象が頻発しており、今年も中国南部をはじめイギリス、インド、アフリカなどで多くの洪水災害が発生したことを紹介し、このシンポジウムに対する期待を表明されました。 

続いて、ICHARM竹内センター長が、将来予測される気候変化への適応はICHARMが水災害の防止・軽減に向けた諸活動を展開する上で大きなキーワードの一つであることを述べるとともに、今後とも今回のシンポジウムのような情報発信の場を定期的に開催していく予定である旨を紹介しました。

続いて、海外招待講演者2名のうちの一人、中国水利水電科学研究院のDr. KUANG ShangFu院長の講演が行われました。氏は、「中国における洪水とその対策」と題して、中国における水害損失は1990年代と2000年代を比較すると減少傾向ではあるが、未だにGNPの1.8%を占めていること、洪水による死者は1950年代以降一貫して減少傾向にあるが、単位面積あたりの洪水損失は増加していることなどを紹介しました。洪水対策として、1998年の長江大洪水以降、中国水利部は、「洪水災害と渇水災害を同時に重要な問題として扱う」・「洪水のコントロールから洪水の管理へ」・「人と洪水との共生を図る」の3つを基本政策とし、三峡ダムや遊水池、堤防の建設などの構造物対策、また「中華人民共和国水法」や関連法の改正、上海における洪水災害リスクマップの作成などの非構造物対策を組み合わせて行っていることを実際の災害事例とともに話されましたが、災害のスケールの大きさに会場からは驚きの声が上がっていました。

二人目は、イギリス ブリストル大学水環境管理研究センターのDr. Ian Cluckieセンター長です。氏は、「イギリスの洪水関連災害」と題して、2007年にイギリス南部で発生した洪水災害の状況とそれから得られた教訓について報告しました。降雨発生確率が200年に1回の規模を越えた地点もあったことに触れつつ、これが気候変動によるものであるなら、もはや過去のデータの統計処理に基づく計画手法は使えなくなること、及びイギリスにおける地球温暖化による影響としては洪水よりも高潮が大きな問題であることなどを紹介し、今後は気象分野と環境分野の連携が必要であることを力説されました。

続いて、日本における最近の洪水災害発生状況と、近年の豪雨発生頻度の増加傾向を踏まえた今後の対応策について、国土交通省河川局防災課災害対策室の森範行 企画専門官が報告しました。

3名の招待講演者の講演を受け、竹内センター長を司会役としてフロアとのパネルディスカッションが行われ、将来ほぼ確実に発生すると予想される地球の気候変化がもたらす洪水被害への対応戦略等について積極的に意見が交わされ、午前10時から午後5時まで丸1日をかけたシンポジウムは幕を閉じました。



参加者全員での集合写真

 

フロアの様子
up