ICHARM -- The International Centre for Water Hazard and Risk Management

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ICHARMシンポジウム「ICHARM Quick Reports on Floods 2009」開催される

会議の概要
(独)土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、2009年12月10日(木)にICHARM講堂において、国際シンポジウム”ICHARM Quick Reports on Floods 2009”を開催しました。このシンポジウムは、世界の最新の洪水災害の状況を把握してICHARMの活動に資する目的で毎年、ICHARMが開催しています。
今回は、2008年から2009年にかけて世界各地で発生した破壊的な洪水関連災害のうち特徴的な災害について、各国で洪水研究・管理の責任者として活躍されている専門家等を招き、災害による被害やそこから得られた教訓、今後の課題等について発表を頂き、議論を行いました。
当日は、土研・国総研の研究者をはじめ、水災害の専門家や現在ICHARMで研修中の海外からの研修生13名などが参加し、約60人入る会場はほぼ満席の状態でした。

会議の内容 
最初に、竹内邦良ICHARMセンター長と大石龍太郎土木研究所理事が開会挨拶を行い、続いて国内外の5名の講演者から報告を頂きました。
まず、台湾で2009年8月に起こった洪水被害について、Liang-Chun Chen教授(台湾国立災害科学技術センター(NCDR)センター長)から講演を頂きました。講演の中では、大規模な土砂災害によりダムの機能が低下したことなどが報告され、今後の教訓として、正確な降雨予測や復旧・復興対策の強化、適切な土地利用の推進などが挙げられました。


開会の挨拶をする竹内ICHARMセンター長

開会の挨拶をする大石土木研究所理事

Liang-Chun Chen教授の発表の様子

続いて、2009年9月の洪水について、Susan Ramos Espinueva氏(フィリピン気象天文庁(PAGASA)水文気象部部長)から講演を頂きました。氏は、24時間雨量が500年に1回程度の規模に相当する箇所があったなど、外力自体が非常に大きかったものの、被害を大きくした要因として、主要河川の流下能力不足、マニラ周辺の人口急増(最近でも2%以上の増加率)、上流部の森林伐採などを挙げました。今後の課題としては、都市洪水マネジメントの強化(適正な土地利用の推進や洪水予警報の推進などを含む)や災害教育の強化などが挙げられました。


Susan Ramos Espinueva氏の発表の様子

続いて、Md Abu Taher Khandakar氏(バングラデシュ水資源開発庁(BWDB)技監)からバングラデシュの洪水の状況に関する講演を頂きました。バングラデシュは国土の大半が低平地のため、高潮による被害を受けやすく、そのため海岸植生やシェルターの整備、職員の能力向上などが課題として挙げられました。


Md Abu Taher Khandakar氏の発表の様子

続いて、2008年5月のサイクロンNargisについて、Tun Lwin氏(元ミャンマー気象水文局長)から講演を頂きました。氏は、この大被害の原因は、ハザードマップやシェルターがなく過去の経験もない、人口稠密で脆弱な低平地をサイクロンが襲ったことにあると指摘し、「防災は社会科学的な仕事であり、全ての学問・機関・分野での解決策が必要である」と述べました。
最後に、2009年夏に西日本を襲った洪水被害について大槻英治 国土交通省河川局水利技術調整官から紹介を頂きました。


Tun Lwin氏の発表の様子

大槻氏の発表の様子

講演後、竹内センター長がモデレーターとなり、パネルディスカッションを行いました。テーマは、午後のプレゼンテーションでTun氏から提起された「洪水予警報システムだけでは十分でない」を取り上げ、気候変動下での洪水被害軽減策のあり方もあわせ活発な議論が行われました。


パネルディスカッションの様子

閉会のあいさつをする田中ICHARMグループ長

シンポジウム概要のリーフレットはこちらからダウンロードいただけます。

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