ユ ネスコセンター設立推進本部ニュース (ICHARM)

4  20053

目次

このニユースレター は、ユネスコの後援のもと2005年度に土木研究所に設立予定の水災害リスクマネジメント国際センター(仮称)の設立準備活動を広く国内外の関係の皆様方に知ってい ただく目的で発行しているものです。

バックナンバーにつ いてはこちらをごらん下さい。

 1.本部長からのメーセージ
2.最近の活動と今後の予定
       i) JICA 地域特設洪水ハザードマップ作成”研修
   ii) 国連防災世界会議(神戸)
   iii) 国際洪水イニシアチブ/プログラム(IFI/P)準 備会合
3. トピックおよび研究活動
   i) 王義成教授(中国水利水電科学研究院)研究滞在
   
ii)世界水アセスメントプロウグラム(World Water Assessment Program)

ご 挨拶


2005年1月に神戸で開催された国連防災世界会議は、168の政府機関をはじめ、関連する国際機関及びNGO(非政府機関)等から、計4000名を越える参加者が集まりました。昨年末に発生したスマトラ島沖地震とそれによるインド洋津波災害の衝撃映像が世界中の人々の脳裏に焼きついた直後であっただけに、自然災害の克服に向けた国境を越えた連帯の重要性がいやがおうにもクローズアップされ る場になったと言えるかと思います。

会議最終日の1月22日に最 終成果として取りまとめられた「兵庫宣言」及び「兵庫行動枠組み」において、各国が協調して災害防止・軽減に向けて戦略的に取り組んでいくべきであること が示されました。その中で、2015年までの今後10年間で優先的に取り組むべき具体的な行動として以下 の5項目があげられています。

  1)     防災を国、地方の優先課題に位置づけ、実行のため の強力な制度基盤を確保する。
   2)     災害リスクを特定、評価、観測し、早期警報の仕組 みを向上する。
   3)     すべてのレベルで防災文化を構築するため、知識、 技術、教育を活用する。
   4)     
潜在的なリスク要因を軽減する。
   5)       効果的な応急対応のための事前準備を強化する。

土木研究所ユネスコセンターも、ここで挙げられて いる5項目のうち、特に第2、第3項の視点から、国際的な視野で「災害に強い国・コミュニティづくり」を進めるための具体的な貢献を目指します。

今年度JICAの支援を受 けて新たにスタートした「洪水ハザードマップ作成」研修には、東、東南アジアの8カ国から16名が参加しました。寒い日本の冬の現地演習は、研修員にとって正直こたえたようですが、無事に3週間のコースを終えた修了式での、各参加者の達成感にあふれた満足気な表情はとても印象的でした。こうした研修活動等によって国境 を越えて形成される人的ネットワークこそが、まさに新しいセンターの大切な財産であり、今後の活動の大きな原動力になるものと確信しています。

ユネスコセンター設立推進本部
  本部長
Signature

 

最 近の活動と今後の予定  その1


JICA 地域特設洪水ハザードマップ作成”研修


20051

31日から2月18日の期間において、JICAの支援のもと、地域特設「洪水ハザードマップ作成」研修を実施しました。

この研修は5年間継続して実施される予定であり、 洪水ハザードマップの作成に必要な専門知識、ハザードマップの効果を途上国で実務に携わる技術者に技術移転することを目的としています。本年はその1年目にあたり、東アジアおよび東南アジア地域で河川管理・洪水管理に携わる技術者や工学者を対象に研修を行いました。参加した研修員は、インドネシア、マレーシア、カンボジア、タイ、フィリピン、ラオス、中国、ベトナム8カ国16人です。

研修プログラムは講義と演習から構成しました。講義には、洪水ハザードマップ作成に必要な科学的・工学的知識に関する内容を盛り込み、洪水ハザードマップ

作成の目的、作成手順、そして先端的な究等の講義を行いました。講師には、国内の研究機関のみならず、メコン委員会や中国水利水電科学研究院といった国際機関からも協力をいた だきました。また、演習では実地訓練として、富士常葉大学の小川教授の指導のもと, タウンウォッチングを行いました。実際にタウンウォッチングを行ったのは、カスリーン台風の際に大きな被害を受けた利根川中流域の地域です。洪水が起こった場合を想定して、研修員にはタウンウォッチングの中で、安全かつ迅速な避難を行なうに際しての障害になる点、および重要なポイントを見つけてもらうようにしました。また、住民に対するインタビューを行い、洪水災害に対する意識調査も行いました。さらに、福島河川国道事務所、郡山市、関東地方整備局、そして荒川下流河川事務所への研修旅行を行いました。

本研修は、2月18日をもって無事終了することができました。

今後も、本研修を通じてつちかわれた人的ネット ワークを維持し、参加いただいた研修員たちと情報交換を継続していきたいと考えています。


またこの場を借りて、本研修に講師として参加いただいた方々をはじめ、現地調査および現地視察のためにご協力をいただいた関係者の方々に感謝の意を表します。


 

 

 

 

 

 

 

Aisatsu
JICAつくばセンターにおける開会式にて

Lecture
講義の様子

Survey
現地調査の 様子

Interview
研修員の住 民へのインタビューを助けるスタッフ


最近の活動と今後の予定  その2


参加した会議


国連防災世界会議


2005年1月 18日(火)から22日(土)にかけて、神戸国際会議場及び隣接する神戸ポートピアホテルにおいて、国連防災世界会議が開催されました。会議は、会議成果案の採択に向けた協議を行う場である政府間会合、これを補足するための意見・情報交換の場であるテーマ別会合及び一般市民の参加も想定したパブリックフォーラムの3種類の会合が10以上の会場で同時並行的に進められました。

 テーマ別会合のひとつとして土木研究所が
UNESCO及 びWMO他と共催したセッション「洪水と地すべりにかかる研究とリスク軽減のための新たな国際イニシア ティブ」(1月19日)では、国連大学ヒンケル学長の議事進行のもと、オープニングの挨拶でUNESCOの 松浦事務局長、WMOのジェロー事務局長、京大防災研究所の井上所長とともに、坂本理事長が土研ユネスコ センターの設立に向けた準備状況等を紹介しました。またセッション前半の洪水に関するプレゼンテーションのひとつとして、寺川本部長が「総合的な洪水リスク管理 と土研ユネスコセンターの役割」と題して話題提供を行いました。本セッションでは、各参加機関の支持を得て、洪水被害の防止・軽減のための国際機関横断的 な取り組みである「国際洪水イニシアティブ(IFI: International Flood Initiative)」の立ち上げが正式に宣言されました。 吉谷上席研究員がプロジェクトの具体的な内容を議論するタスクフォースメンバーの一員として参画することとしており、土研ユネスコセンターは、研究活動の一環と して本イニシアティブ推進の一翼を担う予定です。

 また、同じくテーマ別会合として国土交通省河川 局がWMO及びオーストラリア気象庁と共催したセッション「知識共有と教育研修を通じた総合的な洪水リスク管理」(1月20日)では、オース トラリア気象庁スチュワート次長とともに寺川本部長が共同議長を務めました。7名のプレゼンテーションとディスカッションを踏まえ、セッションからの提言書の中 に洪水災害軽減に向けた途上国への技術移転を図る上で、土研ユネスコセンターの研究・研修機能等を活用することが有効である旨盛り込まれました。

 スマトラ沖地震・津波災害に関する特別セッションでは、地域の災害軽減機構を早急に確立し、とりわけ自然災害に関する共同セ ンター、情報交換ネットワーク 、早期警報システム、データベースおよび知識管理システムを強化することの必要性が強調されました。国連アドバイザリーボードから、
2015年まで に津波を含む水関連災害による犠牲者を半分に減らすことを国際的な共通目標として掲げる旨提案されました。

 最終日の22日には、前日までの各会合での成果 を受ける形で、会議の最終成果として「兵庫宣言」及び「兵庫行動枠組み」が 取りまとめられ、各国が協調して災害防止・軽減に向けて戦略的に取り組んでいくべきであることが示されました。


これから開催される会議

国際洪水イニシアチブ(IFI/P)準備会合

2005 32023日に、スイスジュネーブにて、国際洪水イニシアチブ準備会合が開かれます。 4回目になるこの会合では、国連防災世界会議での正式な立ち上げ宣言を受けて、今後の活動計画の詳細を議論します。本会合の結果は、本ニュースレターにて随時お伝 えします。

現在および将来の全活動予定は、ホームページ(http://www.unesco.pwri.go.jp)をご覧ください。

 

 

 

 


ト ピックおよび研究活動


トピック

王 義成教授(中国水利水電科学研究院)、研究滞在

中国水利水電科学研究院防洪減災研究所の王義成教授が、科学技術振興機構CREST研究(長江における治水政策)のために、2005年1月18日〜2月25日の間、土木研究所に研究滞在しました。滞在期間中には、主として長江の治水計画の変遷についての文献整理および論文執筆を、吉谷上席研究員および大西研究員とともに、行いました。また、1月19日に開催された「水辺・流域再生にかかわる国際フォーラム」(主催:リバーフロント整備センター)においてコメンテータとして招聘されました。さらに、本号で紹介しましたJICA地域特設"洪水ハザードマップ作成"研修の講師としてご協力をいただきました。2月24日には、「タイ国チャオプラヤ川・中国長江の流域水管理政策に関するシンポジウ ム」(主催:科学技術振興機構CREST)の講師を務められました。今後も、このような共同研究や研修活動を推進する予定です。


研究活動

世界水アセスメントプログラム

ニュースレター第3号でご紹介しましたように、世界水アセスメントプログラムの一環として、土木研究所はWMO、ISDR、その他の国連機関との共同研究により、世界水開発レポート第2版の作成に取り組みます。私たちからの貢献は、洪水被害軽減に対する政策の有効性評価のためのリスクインディケータを提案している点にあります。このインディケータによって、洪水の脅威を増加させる環境変化の推進力と環境への圧力、洪水に対する脆弱性軽減のためにとられる政策(たとえば予算措置)との関係を分析することができます。日本を事例としたインディケータの適用事例は、国連の専門家からの大きな注目を集め、世界水アセスメントプログラム事務局から世界に広く伝えることを求められました。提案したリスクインディケータの詳細は、こちらをご覧ください。

リスクインディケータの国際的な適用に関する研究協力について関心のある方は、吉谷上席研究員またはメラブデン専門研究員までお問い合わせください。

 

 

 

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編 集・発行: 独立行政法人土木研究所 ユネスコセンター設立推進本部

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