ICHARM -- The International Centre for Water Hazard and Risk Management


ICHARM ニュースレター
International Centre for Water Hazard and
Risk Management under the auspices of UNESCO

Vol.1-No.1 2006年3月

このニュースレターは、 UNESCOの後援のもとで設立・運営される(独)土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM:アイチャーム)の活動内容を広く関係者の皆様方に知っていただく目的で発行しているものです。ICHARMの設立準備を担当したユネスコセンター設立推進本部が発行したニュースレターのバックナンバーについては こちら をごらん下さい。



土木研究所玄関にはためく 国連旗、国旗、
独法土木研究所旗
-- 目次 --

  1. 最近の活動 【洪水管理に関する国際ワークショップ開催】



水災害国際センター棟玄関前での除幕式の様子 (左から竹内センター長、
竹原非常勤監事、 中村理事、坂本理事長、国土交通省押田河川局次長、
外務省西田事務官、 文部科学省石田室長、国総研望月所長)


2006年3月6日、独立行政法人 土木研究所(茨城県つくば市)内に、水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)が正式に発足しました。

当センターは、世界の水関連災害(洪水、渇水、土砂災害、津波・高潮災害、水質汚染等)を防止、軽減するため、各地域の実態に合った、的確な戦略を提供しその実践を支援する、世界拠点(センター・オブ・エクサレンス)を目指します。


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1. 竹内センター長からの挨拶

ICHARMは2003年第3回世界水フォーラムの閣僚会議において、UNESCOの松浦事務局長自らがセンター設立構想について日本政府との合意を発表して以来、3年を経過して、発足の運びとなりました。大変うれしく存じます。この間、ご努力いただいた関係各位に、深く敬意を表します。とりわけ UNESCO、 国土交通省、 外務省、 文部科学省はじめ多くの関係する方々に、並々ならぬご支援、ご協力をいただきました。このICHARMの初代センター長を拝命し、重責に身の引き締まる思いをいたしております。関係各位のご協力を仰ぎながら、職員一同、設立の目標を果たすべく、鋭意努力いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

ICHARMは、近年増え続ける水災害に、世界的に取り組む必要性から生まれました。洪水、高潮、土石流、また逆に渇水などの災害は、各国で深刻な社会問題、経済発展の阻害要因になっています。国際防災の10年(IDNDR)や、 国際防災戦略(ISDR) などの国連の取り組みを受け、2002年にはユネスコ、 WMO による国際洪水イニシアティブ(IFI)の準備が始められました。(2005年の国連防災世界会議において、正式に発足)ICHARMはこうした背景のもとで、世界の大きな期待と注視の中、設立準備が進められてきました。ユネスコのカテゴリー2のセンターとして発足したICHARMは、水災害分野のセンターとしては、世界で初めてのセンターであり、大きな期待を担っています。

その期待は、各地域社会の実情を踏まえた、現地のニーズに的確に応えることであり、個別の災害の実態に正面から立ち向かうことであると思います。このような「現地主義」での活動を実現するためには、関係する内外の機関のご協力を仰ぎ、しっかり「アライアンス」を組んでいかねばなりません。ICHARM単独でできることはわずかです。多くの人々や機関とのネットワークの中で、相乗効果を生む活動により、この重い任務にあたっていきたいと思います。

今年の9月14日には国連大学で、第一回のICHARM国際シンポジュウムを開催し、国内外に当センターの活動内容を紹介し、ご意見や、ご協力の提案をいただきたいと考えております。  皆様の、温かいご指導とご支援を、心からお願い申し上げます。



水災害・リスクマネジメント国際センター
センター長  竹内邦良

 竹内邦良 センター長の略歴

 1968年 東京大学大学院 工学研究科修士課程 土木工学専攻修了
 1972年 ノースカロライナ大学大学院 都市地域計画学科 博士課程修了(Ph.D)
 1982年 工学博士(東京大学 水資源システム)
 1982年 山梨大学工学部教授
 2003年 山梨大学大学院医学工学総合研究部教授

 1998-2000年 ユネスコ国際水文学計画(IHP)政府間理事会議長
 1998-2000年 国際水資源学会(IWRA)副会長
 2001-2005年 国際水文科学会(IAHS)会長
 2000年- 日本ユネスコ国内委員会委員、ユネスコIHP国内委員会委員長

 

 


Dr. Takeuchi,
Director of ICHARM


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2. ICHARMの活動内容

「センターの目標」

世界の水関連災害(洪水、渇水、土砂災害、津波・高潮災害、水汚染等)を防止、軽減するため、各地域の要請に応えて、実態をふまえた的確な戦略を提供し、その実践を支援する、世界拠点(センター・オブ・エクサレンス)となる。


「センターの基本方針」

  • 現地の防災ニーズを的確に把握し、ニーズに基づいた貢献をする
  • 総合的リスクマネジメント(回避、縮小、転嫁、受容を含む)の観点から、技術のみならず、社会的、経済的、制度的、文化的な側面から、多元的、多面的な戦略を立てる
  • 政策実効性のある情報を発信し、社会の水災害認識を高める
  • 研究開発と能力開発を一体として推進し、科学を地域に根付かせる
  • 国内外の関連機関とパートナーを組んで、資源や専門を補完し合い、協働の効果をあげる
  • 世界の水防災戦略のシンクタンク、推進役を果たす

「センターの運営方針」

  • 国内外の関連機関やプログラムと協力し、世界の各地域が実際に必要としている技術を、それがどこで開発されたかによらず、提供あるいは紹介できる、情報のクレアリングハウス、技術のブローカーの役割を果たす
  • 日本および土木研究所の有する研究成果の蓄積や人的、組織的ネットワークを貴重な基礎財産として、国内外の要請に応える
  • 研究開発と能力開発を一体的に推進するため、途上国の技術者、研究者との共同研究を進めるとともに、国内外の大学、研究機関との協力体制を推進する
  • 国際公募による研究スタッフと共に、英語を日常のコミュニケーション言語として、実質、「国際機関ユネスコセンター」として活動する
  • 日本政府、ユネスコへ資金協力を求めるほか、国内外の関係機関とのパートナーシップの具体化として、国内外の外部資金を、共同申請で獲得すべく努力する

「当面のセンターの活動」

設立当初は、「洪水関連災害のリスクマネジメント」を最重点に活動します。具体的活動は、「研究、研修、情報ネットワーク」の三本柱で進めます。日本および土木研究所の経験、技術をベースとして、国内外の関連機関と積極的に連携を図りつつ、三本柱のそれぞれの活動を一体的に推進します。


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3. ユネスコ本部で行われた調印式の様子


日本政府代表とユネスコ間の協定書及び土木研究所と
ユネスコ間の契約書にサインする松浦事務局長(中央)と
佐藤ユネスコ日本代表部大使(左)及び坂本理事長(右)

 

2006年3月3日午前11時30分、ユネスコ本部(フランス・パリ)において、ICHARM設立に関する日本政府とユネスコ間の協定書及び土木研究所とユネスコ間の契約書の調印式が行われました。調印式に先立って坂本理事長が松浦事務局長を表敬した際に、事務局長よりセンター設立に対する日本政府と土木研究所の努力に敬意を表する旨、また、ICHARMが既存のユネスコセンターと発展的に結びつき、国際拠点となることを期待する旨の発言がありました。

 

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4.ICHARM 開所式の様子


挨拶する坂本理事長

 

3月3日にユネスコ本部で行われた調印式を受け、3月6日、土木研究所本館講堂において、ICHARMの開所式が行われました。

開所式への参加者は、約100人。来賓として、国土交通省からは、押田河川局次長、望月国土技術政策総合研究所長ほか多数、そして外務省、文部科学省の方々、地元からは茨城県、つくば市の関係者の方々、土木研究所の研究業務と関係の深い独立行政法人等の方々のご臨席を賜りました。

冒頭、挨拶に立った坂本理事長が、センター設立までの経緯と今後の展望についてセンター設立の意義、関係各機関への感謝の言葉を述べました。続いて、ご来賓の河川局次長押田様より、北側国土交通大臣からのご祝辞を代読頂きました。次いで外務省広報文化交流部国際文化協力室西田様に外務省広報文化交流部長からのご祝辞を、文部科学省大臣官房国際課企画調整室長石田様にユネスコ国内委員会事務総長からのご祝辞をそれぞれ代読頂きました。さらに、望月国土技術政策総合研究所長様よりご祝辞を頂きました。

場所を移して、センター棟正面玄関に掲げられたICHARMのプレートが土木研究所幹部と来賓の方々により除幕され、盛大な拍手に包まれました。そして ICHARMの初代センター長として就任した竹内センター長から、センターの目標、基本方針、運営方針及び当面の活動の概要等の紹介がありました。  その後、土木研究所玄関前にて、国旗、国連旗、土木研究所旗の掲揚が行われました。


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5. 最近の活動【洪水管理に関する国際ワークショップ開催 2006年1月24~25日】


挨拶するユネスコのSzollosi-Nagy部長

 

2006年1月24、25日につくば国際会議場(つくば市竹園)において土木研究所・ UNESCO・世界気象機関(WMO)の共催により『洪水リスク管理に関する国際ワークショップ』を開催しました。このワークショップは、水問題に関わる国内外の専門家や研究者及び実務者の参加のもと、ICHARMの活動計画及びIFIの推進方策について、世界的な洪水リスクマネジメントの現状及び将来的な動向を踏まえながら議論することを目的として開催したものです。以下にその概要を報告します。

セッション1「リスクアセスメントとモニタリング」では、水災害・リスクマネジメントチーム(現:防災チーム)の吉谷上席研究員がICHARMにおける情報ネットワーク活動の構想について発表し、フロアからは政策決定と技術協力に役立つ情報のクレアリングハウスとしての役割への期待や、災害の情報だけではなくその社会的背景についても情報を収集すること、また、他の機関との連携や、リスク評価に直結する脆弱性の扱いなどについて議論がなされました。


挨拶をする世界気象機関のTyagi部長

 

セッション2「早期予警報と実時間観測」では、水文チームの深見上席研究員が洪水予警報システムについて発表し、衛星雨量データ等を用いた地上水文情報が乏しい流域における洪水予警報システムの構築や、国際洪水ネットワーク(International Flood Network:IFNet)が推進する洪水リスク情報提供サービスの枠組みである地球規模洪水警報システム(Global Flood Alert System:GFAS)の展開について意見交換がなされました。

セッション3「統治・統合洪水マネジメント」では、ハリケーン・カトリーナ被害からの教訓として、事前にそのような被害がいずれ発生すると予測されていたにもかかわらず、多くの人々は実際には避難行動をとらなかったことが挙げられ、災害に対する住民の意識啓発が課題であるとの意見がありました。また、ユネスコセンターとしては先輩となる UNESCO-IHE Institute for Water Educationから参加頂いたPrice氏による'International Masters Course on Flood Modeling for Management ' のアイデア提案は参加者から共感を受けました。

セッション4「能力開発と技術情報の共有」では、田中上席研究員が、土木研究所がJICAの支援のもと実施している 洪水ハザードマップ作成研修活動 について報告し、フロアからは関連研究機関や大学との協力が重要との発言が寄せられました。

セッション5「技術協力」では、深見上席研究員が洪水被害軽減のための技術移転に関する発表を行い、日本の進んだ技術を他国に移転することはもちろん重要だが、その国の実情に合わせるべきとの意見等が寄せられました。

最後に竹内教授の司会のもとで総括質疑が行われ、2日間のワークショップは無事に幕を閉じました。今後、参加者から寄せられた貴重な意見やアドバイスを ICHARMの活動計画に活かすとともに、洪水災害防止・軽減に向けて国際機関連携をさらに進めるよう、引き続き努力して参ります。  


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6. ICHARMの組織と新連絡先

 

2006年3月6日付けで、土木研究所内の組織改組が行われ、『ユネスコセンター設立推進本部』が廃止となり、新たに『水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)』が設置されました。センターは1研究グループ(水災害研究グループ)と3つのチーム(国際普及、防災、水文)で構成されています。各チームの主な担当業務と連絡先は以下の通りです。

お知らせ

 このニュースレターはEメールで配布しております。 またウェブ上でも公開いたします。 メーリングリストへ登録希望の方は下記アドレスまでご連絡下さい。 また、ご意見・ご要望も随時受け付けておりますので、下記アドレスまでお送りくださると幸いです。

編集・発行:独立行政法人土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM) 〒305-8516 茨城県つくば市南原1-6  Tel : 029-879-6809 Fax : 029-879-6709

e-mail: icharm@pwri.go.jp URL: http://www.icharm.pwri.go.jp/


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