ICHARM -- The International Centre for Water Hazard and Risk Management


ICHARM ニュースレター
International Centre for Water Hazard and
Risk Management under the auspices of UNESCO

Vol.2-No.1 2007年3月

 このニュースレターは、 UNESCO の後援のもとで設立・運営される(独)土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM:アイチャーム)の活動内容を広く関係者の皆様方に知っていただく目的で発行しているものです。
 バックナンバー(ユネスコセンター設立推進本部が発行したものを含む)については こちら をごらん下さい。

目次
 


1. 竹内センター長からのメッセージ


 2007年1月26日にユネスコとWMOをはじめ、関連国際機関が共同で推進する国際洪水イニシアティブ(IFI)の参画機関が一同に会した会合が、ジュネーブにあるWMOの会議室で開催されました。この会議で、IFIの活動計画の草案が正式に承認され、今後ICHARMがIFIの事務局機能を担うことになりました。重要な責任を担うことになりますが、我々にとって非常に光栄なことと考えています。この会合は、2005年に神戸で開催された国連世界防災会議の場でユネスコ、WMO、ISDRによってIFIの発足が宣言されて以来、2年間の準備期間を経てようやく開催に至ったものでした。会合にはこれまでに参画を表明しているすべての機関からの参画を得て、WMO水文委員会の議長であるBruce Stewart氏が議長を務めました。
 IFIのミッションは、「社会面、環境面、経済面での洪水リスクを低減すると同時に、洪水によるプラスのインパクト(恵みの側面)を最大化し、氾濫原の有効利用を促進するために、総合的な洪水管理を実現することにあります。つまり、IFIは制度的な側面を含め、土地開発と水資源開発を総合的に推進すると共に、利害関係者の参画を促し、文化的な多様性を守ることを目的としています。IFIの最終目標は、その活動方針(洪水との共存、公平性、権限を与えられた参画、総合性、分野横断的な取り組み、国際的・地域的な協力)に沿って洪水の恩恵や脆弱性、災害のより良い理解とその対処方法を提言できる能力開発を推進することにあると言えます。
 これと、IFIの目標と活動方針はICHARMのそれとまったく合致しています。IFIと共通の目標を共有しつつ、多くのパートナーと活動を共にできることはICHARMにとって喜ばしいことであります。また、IFI参画機関の実施している具体的な活動内容が委員会の中で各パートナー機関から紹介されました。その中で、ICHARMはこれまで日本水フォーラムとの議論を進める中で出てきたアイデア、すなわち、各コミュニティーに洪水による想定外の事態を避けるための緊急対応に向けた準備を行えるようにするための「国際標準」の概念を提案しました。この様な標準は洪水に対する備えができているコミュニティーの数を把握するための指標として世界水発展レポート等による継続的な評価にもつながっていくのではないかと考えています。
 ICHARMが委員会で紹介したその他の重要な活動としては、政策研究大学院大学(GRIPS)と連携して2007年10月から開設する予定の防災政策修士コース(水災害リスク管理)があります。国際協力機構(JICA)の集団研修の枠組みで行う1年間の研修を終了した者に修士の学位を授与するものです。研修参加者は水管理の現場で働く若い専門家を対象としており、様々な国からの熱心な若者の参加を期待しているところです。

 


水災害・リスクマネジメント国際センター
センター長  竹内邦良



2.専門研究員の公募

 ICHARMでは、今年7月から勤務可能な専門研究員6名を国際公募しています。公募条件等の詳細は、下記のページをご覧ください。もし、皆様の周囲に関心のありそうな方がいましたら、公募情報を周知いただければ幸いです。

公募情報
http://www.pwri.go.jp/eng/news/20070315/senmon.htm

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3.
タイ、カンボジアにおける洪水災害の現状等についての現地調査

 カンボジア、タイにおける洪水災害の現状および洪水ハザードマップ作成・普及の現状および問題点を調査するために、2006年12月10日~15日にかけてICHARMのオスティ専門研究員、時岡研究員が同国において調査を行いました。タイでは、2006年の間、32の県で洪水被害を生じ、164人の死者を出したほか、2百万人の人々に影響が及んでいます。カンボジアでは、2006年の洪水被害はそれほど大きくありませんでした。しかし、プルサットやカンポンチャンなどの洪水氾濫地域では過去に多くの人命が洪水により失われ、洪水の危険に晒されています。
 調査の主な目的は、洪水ハザードマップに関わる情報を、洪水管理部署に所属する職員への聞き取り調査および現地視察によって収集することです。それにより、各国の現状を加味した効果的な洪水ハザードマップの作成方法・運用方法の提案を目指します。
 タイでは、バンコクにある灌漑排水局(RID)において聞き取り調査を行った他、南部のハジャイでは現地視察と聞き取り調査を行いました。カンボジアでは、プノンペンにある水文水資源局(DHRW)で聞き取り調査を行った他、プレイベン、プルサットにおいて現地視察および聞き取り調査を行いました。なお、詳細な調査レポートはこちらです。

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4. 「日米治水及び水資源管理会議」への参加

 1月9日、米国ニューオリンズにおいて第3回日米治水及び水資源管理会議が開催され、ICHARMの寺川水災害研究グループ長が日本代表団(団長:門松河川局長)の一員として参加しました。会議は2003年3月に日本で開催された第3回世界水フォーラムの会期中に、国土交通省と米国陸軍工兵隊の間で調印された「治水及び水資源管理分野での技術協力協定」に基づいて、毎年、日本、米国交互にホストして開催しているものです。
 会議では、日本側より4件、米国側より5件の報告と質疑応答が行われました。寺川は「総合的な洪水リスク管理に向けて-ICHARMの活動概要」と題して話題提供を行い、世界の水災害防止・軽減に向けた日本の貢献の意思と取り組みの現状を説明しました。


会議に先立って陸軍工兵隊本部のストローク長官を表敬訪問

 


会議では、リスク管理、環境影響、合意形成及び流域管理に関して
全部で9件のプレゼンテーションが行われました。

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5. 「第2回アジア水循環シンポジウム」への参加

 第2回アジア水循環シンポジウムが2007年1月9日-10日に東京大学にて開催されました。シンポジウムでは、AWCIの活動また、デモンストレーションプロジェクトの実施に欠かせない、地域/国家的な水資源管理における宇宙・気象機関、国際機関や研究者の間での効果的な協力のありかたについて話し合われました。ICHARMからは深見上席研究員が参加し、ICHARMにおける研究・情報ネットワーク・研修活動について紹介しました。また、デモンストレーションプロジェクトの基本的な実施計画や、各国のプロジェクトの対象とされた河川流域におけるそれぞれの提案の検討が行なわれました。

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6. タイ王国チャオプラヤ川2006年洪水に関する国際シンポジウム:新たな課題と水文研究の貢献の開催

 2007年1月19日、Chao Phraya川沿いのRoyal River Hotelにおいて、標記の国際シンポジウム(英語名:International Symposium on 2006 Flood of Chao Phraya River: Emerging issues and contribution of hydrological studies)を日本学術振興機構(Japan Science and Technology Agency)の支援を受け、灌漑排水タイ国内委員会(Thai National Committee on Irrigation and Drainage)、 土木研究所及び京都大学 防災研究所が共同で開催しました。チャオプラヤ川が,2006年9月から12月にかけて大洪水に見舞われたことを受け、新たに浮上した洪水問題に対して現地を対象とした後述のCREST等の研究成果がどのように貢献できるのか、という課題について、特に流域の社会・経済発展と水循環との関係から議論する場を作ったものです。
 本シンポジウムの主目的は、戦略的創造研究推進事業(CREST)「水の循環系モデリングと利用システム」(代表:虫明功臣 福島大学教授)の採択課題の一つである「社会変動と水循環の相互作用評価モデルの構築」(代表:寶馨 京都大学教授)の研究グループである土木研究所が課題としてきた「Chao Phraya川流域における社会変動と水循環の相互作用」の研究成果をタイの研究者や行政関係者等を対象に報告することにあります。そのため、本シンポジウムでは、日本語とタイ語の同時通訳を利用しました。また、 2006年チャオプラヤ川洪水の被害や新たな課題についての情報収集も行いました。
 本シンポジウムへの参加者は83名で、そのほとんどは地元の専門家でした。シンポジウムの報告書は2007年6月に発行予定です。



主催者と一部の参加者とのグループ写真
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7. 「第8回水文・水資源に関する日米ワークショップ」への参加

 1月28-29日に米国コロラド州デンバーにおいて、土木研究所、米国内務省地質調査所(USGS)及び国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)の共催により第8回水文・水資源に関する日米ワークショップが開催されました。このワークショップは、平成4年2月にUSGSと建設省土木研究所(当時)との共同研究の一環として第1回がつくばにて開催されて以来、2~3年に1回の割合で、日米交互に開催されてきたものです。
 本ワークショップにおいて、寺川水災害研究グループ長がICHARMの活動概要を紹介し、ICHARMの研修活動等を通じたUSGSとの連携の可能性について議論が行われました。また、深見上席研究員は、水文チームにおける研究活動、特に、流量観測技術、洪水予測技術に関する研究成果について報告を行うとともに、地球気候変化の水文・水資源への影響分野も含めて議論に参加し、USGS側と情報交換を行いました。また、2月2日には、カリフォルニア州立サクラメント大学にあるUSGS事務所を訪問し、カリフォルニア州における水資源・水環境管理に関する情報交換と議論を行いました。



ワークショップの様子
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8. 「第3回流域及び河川水系のマネージメントに関する日米ワークショップ」への参加

 2007年1月31日、米国コロラド州デンバーにおいて、米国内務省開拓局(USBR)と土木研究所の共催で第3回流域と水系管理に関する日米ワークショップが開催されました。土木研究所は2002年6月25日にUSBRと「流域及び河川水系のマネージメントに関する共同研究」の協定を結んでいます。土木研究所の栗城特別調整監とICHARMの深見上席研究員は、協定で規定された流域管理計画分野に関する研究活動について、USBR側と成果を持ち寄り、情報交換・議論を行いました。またWater2025と呼ばれる米国の水資源管理イニシアチブや、水文統計・河川情報データベース等に関する情報交換を強化することで合意しました。本ワークショップ終了後の2月1日に、サンフランシスコ近郊にて水文・水資源関連施設等の現地調査が行われました。



ワークショップの様子
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9. マレーシアにおけるマングローブ調査

 2007年2月3日、マレーシア西海岸のCarey島(クアラルンプールから車で約1時間)において京都大学の小林閨潔司教授他とICHARMの田中上席研究員が合同でマングローブ林の調査を行いました。この調査は、ICHARMで開始した海岸植生による持続可能な津波対策の研究の一環であり、研究の一部でマングローブ等の海岸植生を活用した海岸保全の方策を検討しています。マングローブ林の実態は途上国においてもあまり詳細には把握されていないようですが、一部の途上国においては津波対策を考える上で非常に重要な位置を占めると考えられます。マレーシアではスマトラ沖地震によるインド洋大津波の直後、首相が沿岸のプロジェクトはマングローブを傷つけないように計画するとともにインド洋大津波で倒れたマングローブ林に植林するよう政府機関に命じています。
 昨年11月に京都で小林教授が中心となってマングローブの管理に関する国際会議が開催され、生態、環境、防災、観光、管理等マングローブに関するいろいろな情報が交換されました。なお、現地調査の案内はInternational Islamic University MalaysiaのMaisarah Ali副学部長にお世話になりました。


写真1:樹木の内部に取り込まれた塩分を葉から出すマングローブ。なめてみると確かに塩分が確認できました。
写真2:マングローブ林に生息するカニの巣孔。カニがかき出したシルトが30cmほど盛り上がっています。


写真1 塩分を葉から出すマングローブの一種

写真2 マングローブ林に生息するカニの巣孔の入り口

 

写真3:木炭用に伐採されたマングローブ。直径10cmほどの比較的細い樹木が伐られ、すぐ横には植林用のマングローブの苗も用意されていました。
写真4:地上に刺さるように落ちたマングローブの種子。本年9月初旬に第2回目のマングローブの管理に関するシンポジウムを開催することになっています。


写真3 伐採されたマングローブ

写真4 地上に刺さるように落ちているマングローブの種子
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10. マレーシア南部ジョホール州の洪水被害調査

 2007年2月5日、6日の2日間にわたって、ICHARMの田中上席研究員、オスティ研究員、時岡研究員、その他数名のサポートスタッフ(現地ガイドを含む)により、マレーシア南部ジョホール州において洪水被害調査を行いました。これは、2006年12月、2007年1月の2度にわたってマレーシアで発生した100年規模の洪水災害を受けて実施されたものです。この洪水では少なくとも17名の死者が出ており、一時10万人以上が避難しました。
 調査1日目には、ケラング(Keluang)市にあるSemberong川とその支流のMengkibal川流域で調査を行いました。ここでは、堤防の決壊により、30戸の家屋が被害を受けました。これらの家は洪水に備えて50cm以上の基礎の上に建てられていましたが、今回の洪水では浸水深が最大4mの高さまで上昇したため、まったく役に立ちませんでした。また、国道沿いにかかる橋の橋脚も洪水により一部破損していました。この地域では、約300人の住民が1週間の間避難所での生活を余儀なくされた他、死者も1名出ています。また、同日にバトゥパハット(Batu Pahat)地区でも調査を行いました。ここにある2つの洪水調節ダムは1回目の洪水時(2006年12月)にすでに満杯となり、2回目の洪水時(2007年1月)には洪水調節ダムとしての役割を果たすことができませんでした。この地区では、約1万人の住民が3週間以上の間避難所に指定されている学校や公共施設での生活を余儀なくされました。
 調査2日目には、ジョホール州において最も大きな被害を受けた地域の一つである、コタティンギ(Kota Tinggi)市で調査を行いました。2006年12月19日と2007年1月12日にJohor川の水位がそれぞれ堤防より2.3m、2.75m高くなり、3日間にわたって同市が水に浸かりました。公共施設、学校、工場は全て閉鎖され、電気、水道、ガス、電話などのライフラインも完全に寸断されました。多くの洪水防御施設は50年規模の洪水を防げるように設計されていたため、例えば、排水機場は完全に水に浸かってしまい使用不能となるなど、今回の洪水ではほとんど機能しませんでした。また、氾濫流速や浸水深も非常に大きく避難は困難を極めました。今回のコタティンギ市における洪水痕跡は1948年に起こった既往最大の洪水時のものより30cm高い場所を示していました。また、今回の洪水で同市における死者は3名でした。
 コタティンギ市において何名かの住民にインタビューした結果、ほとんどの住民が今回の洪水を人生の中で最も恐ろしい体験だったと言っていました。また、彼らの多くは家財道具や商売道具を今回の洪水で失っており、政府に救済措置を期待していました。同市が普通の生活を取り戻すにはまだ時間がかかりそうです。


2007年1月、コタティンギで起きた洪水の様子
(マレーシア感慨排水局撮影)



過去に起きた洪水の水位

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11. 国連ESCAP/WMO台風委員会水文部会「洪水予測システムの評価・改善に関する技術交換ワークショップ」への参加

 2007年2月5日~7日、韓国ソウル市において、国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)及びWMO(世界気象機関)の共管になる台風委員会水文部会の活動の一環として、韓国建設交通省が主催する「洪水予測システムの評価・改善に関する技術交換ワークショップ」が開催されました。ICHARMの深見上席研究員が、当該分野における専門家の1人としてこのワークショップに参加し、日本における洪水予測システム技術の現状について報告しました。一方、韓国が力を入れているMOFFSと呼ばれる洪水予測システム性能評価・管理システムの改良の方針について議論が行われました。

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12. 「東・東南アジア地域別洪水ハザードマップセミナー」 開催

 2007年2月7日~2月9日の間、マレーシアのクアラルンプールにおいて「東・東南アジア地域別洪水ハザードマップセミナー」を国際協力機構(JICA)、マレーシア灌漑排水局(DID)との共催で開催しました。事務局として、ICHARMから寺川水災害研究グループ長、田中上席研究員、オスティ研究員、時岡研究員が参加しました。このセミナーは、国際協力機構(JICA)の委託を受けてICHARMが実施している地域別「洪水ハザードマップ作成」研修のフォローアップの一環です。これまで3回実施している同研修の研修員を各国から招待し、研修終了後の洪水ハザードマップ作成・普及に関する活動報告と、各研修員が業務を実施していく中での成功事例や直面している問題点等について知識・経験の共有と問題解決のためのディスカッションを行うことを目的としています。また、上記研修に対する意見や要望も取り集め、次回からの研修をより効果的なものに改善することも併せて目的としています。

過去の研修生による発表

セミナーの様子


 セミナーへの参加者は事務局と共に、研修参加国である中国、ベトナム、カンボジア、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ラオス、タイから計17名の研修生の他、共催機関であるDIDからも10数名の技術者が参加しました。さらに、Asian Institute of Technology(AIT)からManzul Hazalika氏、International Centre for Integrated Mountain Development(ICIMOD)からArun B. Shrestha氏を講師として招き、ご講演を戴きました。
 各研修生からの活動報告によると、中国、タイ、マレーシアではすでに洪水ハザードマップの試験地区が選定され、実際にシミュレーションによる浸水想定区域図および洪水ハザードマップが作成されていました。また、フィリピンでは災害危険区域に住む住人へのインタビューや会合を通して、地域住民と共に住民のニーズにあったコミュニティーベースの洪水ハザードマップ作りが試みられていました。また、同様の試みはマレーシアにおいても実施されていました。一方、氾濫計算を行うための地形データが未だ整備されていない地域や、住民の災害に対する意識が低い地域も多く、洪水ハザードマップ作成に当たって依然多くの課題が残っていることが明らかとなりました。また、洪水ハザードマップが作成されている地域においても、住民や地主の反対、法の不整備により普及はおろか公表することすら難しい場合があり、フィリピンやマレーシアで行われているような、地域住民と共に適切な洪水ハザードマップを作成していく方法も有効な手法の1つであると考えられます。また、マレーシアにおいては、住民へのアンケートにより52%の人々が洪水時に最優先で守るべきものとして人命ではなく自家用車を挙げるなど、日本との考え方の違いも浮き彫りとなりました。
 なお、 セミナープログラム及び発表資料はこちらで見ることができます。
 


各地の洪水ハザードマップ

 

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13. フィリピン公共事業道路省 カブラル計画局長ほかICHARMを訪問

 「フィリピン国全国洪水リスク評価及び特定地域洪水被害軽減計画調査(2006.9~2008.3)」に付随した国際協力機構(JICA)カウンターパート研修として、マリア カタリーナ カブラル(Maria Catalina E. Cabral, Ph.D)フィリピン共和国 公共事業道路省 計画局長(OIC-Director, Planning Service, Department of Public Works and Highways)、フィリップ メニエス(Philip F. Me?ez)フィリピン共和国 公共事業道路省 大河川事業局長(Project Director, Project Management Office of Major Flood Control and Drainage Projects-Cluster II, Department of Public Works and Highways)、フレディー コンバリサー(Freddie M. Combalicer)フィリピン共和国 公共事業道路省 4-A地方局 ケソン第一地域技術事務所技官(Engineer, Quezon 1st District Engineering Office, Region IV-A, Department of Public Works and Highways)の3名が、2007年2月8日にICHARMを訪問しました。
 同調査は、フィリピンにおける全国421中小河川流域(18大河川流域を含む)を対象に、自然条件や社会的条件、あるいは過去の災害実績等のデータを収集・整理し、各地の洪水リスクについて評価した上で、優先度の高い流域に対し、ハード・ソフトを織り交ぜた実効性のある治水対策を提言する調査です。
 過去30年間、日本はフィリピンの18大河川における大規模治水事業に集中的に支援を行ってきましたが、中小規模の河川であっても背後地に国策上重要な都市を有するケースも増えており、かつ財政的な逼迫も相まって、今後は中小河川にも目を向けた、低コストかつ効果的な治水対策が強く求められています。特に昨今、フィリピンでは統合水資源管理及び河川流域管理の強力な推進が図られつつあり、日本における河川整備計画の策定手順など、関係者の調整システムについて理解を深めることが今回の調査団の目的でした。
 加えて、無堤河川が多数存在しているフィリピンは、日本における近代治水が始まる以前の状況に似ているため、ICHARMから古くから培われてきた治水の計画・技術(水防工法各種、遊水池の活用、水制・霞堤など)の情報を提供しました。

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14. 「アジア太平洋水フォーラム執行審議会議」への参加

 2007年2月21-22日、シンガポールにて「アジア太平洋水フォーラム執行審議会議」がTommy Koh無任所大使議長のもと開催されました。会合では、今年12月に日本の大分県別府市で開催される「アジア・太平洋水サミット」の優先課題を、(1)水インフラ拡充と人材育成、(2)水関連災害管理、(3)発展と生態系のための水活用、の3つとし、水関連災害管理のリード組織はICHRAMが勤めることが承認されました。ICHARMは12月のサミット開催までに、アジア太平洋水フォーラムのwater weblogでの議論を通して、水関連災害管理に向けた政治アピールとその論証を主題報告書(thematic report)にまとめる予定です。Water weblogの管理はICHARMのTarek Merabtene博士が行っています。興味のある方はどなたでもweblogでの議論に参加してください。

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15. 「社会へ貢献する地球システム科学としての水文学シンポジウム」への参加

 2007年2月28日から3月2日の3日間にわたって、つくば国際会議場において「社会へ貢献する地球システム科学としての水文学シンポジウム」が開催されました。本シンポジウムは、最新のモデリング技術、今後のモデリング技術の発展の方向性および社会のモデリング技術への期待と実際のモデリング技術との間のギャップに関する議論を目的として、科学技術振興調整費「我が国の国際的リーダーシップの確保 世界の水問題解決に資する水循環科学の先導(プロジェクトリーダー:東京大学生産技術研究所 沖大幹教授)」の支援の基に開催されました。ICHARMも当プロジェクトに参画しており、竹内ICHARMセンター長、寺川水災害研究グループ長およびメラブテン主任研究員が口頭発表を行い、ハプアラッチ研究員、オスティ研究員および猪股研究員がポスター発表を行いました。


国際会議場での集合写真

 


会議の冒頭のセッションでプレゼンテーションするセンター長

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編集・発行:独立行政法人土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)

〒305-8516 茨城県つくば市南原1-6  Tel : 029-879-6809 Fax : 029-879-6709
Eメール: icharm@pwri.go.jp ホームページ: http://www.icharm.pwri.go.jp/


 
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