論文賞 受賞

緊急対応の降雨流出氾濫予測

水災害・リスクマネジメント国際センター所属の佐山主任研究員らによる論文が、下記のとおり平成25年度土木学会賞(論文賞)を受賞しました。

論文名:2011年タイ洪水を対象にした緊急対応の降雨流出氾濫予測
(土木学会論文集B1(水工学),Vol.69,No.1,pp.14-29,(2013))
筆者:佐山敬洋(1)、建部祐哉(2)、藤岡奨(2)、牛山朋來(3)、萬矢敦啓(4)、田中茂信(5)
(1)水災害・リスクマネジメント国際センター 主任研究員/
(2)水災害・リスクマネジメント国際センター 前交流研究員/
(3)水災害・リスクマネジメント国際センター 専門研究員/
(4)水災害・リスクマネジメント国際センター 研究員/
(5)水災害・リスクマネジメント国際センター 前グループ長/
受賞理由:
 2011年タイ洪水のような大規模水災害に際しては、限られた情報をもとに被害の全容を把握し、的確な対応行動が求められる。本研究は、全球任意の地域を対象に水文モデルを迅速に展開し、河川流量から洪水氾濫まで流域一体で予測する降雨流出氾濫(RRI)モデルをタイ洪水に応用したものである。著者らが開発を進める同モデルは、側方・鉛直浸透流など複雑な水文過程と、堤防やダムなど人工構造物の影響を簡潔にモデル化し、効率的なアルゴリズムで数値計算を実行できる。この簡便さと、衛星降雨や全球地形情報を応用するツール群を活かし、大規模水災害が拡大する中で、初めて広域の降雨流出氾濫予測に成功している。
 本研究は、この予測に関する学術的意義・方法・予測結果を記すとともに、筆者らが実施した浸水位の調査結果等と比較しながら、予測精度の検証を示している。また洪水収束後の再現解析に基づき、氾濫実態を分析するとともに、緊急対応のシミュレーションにおいて優先的に入手・反映すべき現地情報について項目ごとに比較検討している。本成果は、マスコミでも取り上げられ、実務でも採用されるなど社会的にも評価が高い。
 本研究は降雨流出氾濫という新たな解析手法の提案、緊急対応シミュレーションの実施と災害軽減に向けた情報提供、予測システム・リスク評価への実務応用の観点から、学術・技術の進歩と発展に高く貢献したものと認められ、土木学会論文賞に相応しいと認められた。