若手研究発表賞 受賞


  下水処理水中に含まれる化学物質の環境リスク初期評価
水環境研究グループ水質チーム所属の真野浩行研究員の論文が、6月25日に砂防会館で開催された日本下水道協会第3回定時総会において、下記のとおり若手研究発表賞を受賞しました。



受賞名:平成26年度 若手研究発表賞(下水道協会誌に論文および報告を掲載した35歳以下
      の若手研究者から候補者を公募し、研究やハード およびシステム技術開発・実務における
      革新的な成果に対して授与される賞)

論文名:「PRTR情報等を活用した下水処理水中に含まれる化学物質の環境
     リスク初期評価」
(下水道協会誌Vol.50,No.612,pp.85-93,2013.10)

著者:○真野浩行(1)・村山康樹(2)・鈴木穣(3)・中田典秀(4)・南山瑞彦(5)

     (1)水環境研究グループ水質チーム 研究員/
     (2)前・水環境研究グループ水質チーム 研究員/
     (3)材料資源研究グループ グループ長/
     (4)京都大学工学研究科附属流域圏総合環境質研究センター 助教/
     (5)前・水環境研究グループ水質チーム 上席研究員/

 

概要(図1〜図3も参照):

 下水道は、都市活動から排出される化学物質を含む下水を処理した後、公共用水域に放流しているが、下水処理水には一定の化学物質が残存することから、これらによるヒトの健康や水生生物への影響も考慮する必要がある。わが国で流通している化学物質の数は数万種といわれており、下水処理水中の化学物質の影響を検討する際に、膨大な種類の化学物質のすべてを対象に、モニタリングや詳細な環境リスク評価を行うことはコスト・時間の面から不可能であり、モニタリングや詳細なリスク評価を行うべき化学物質を簡易な手法で抽出・選定することが実務上、極めて重要となる。

 本研究では、モニタリングや詳細なリスク評価を行うべき下水処理水中の化学物質の抽出を目的とし、化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)における第一種指定化学物質と医薬品類を対象に、公表されているPRTR情報等を活用した処理水中の推定濃度によるばく露評価と、既報のリスク情報による有害性評価による簡易な「環境リスク初期評価」を実施した(図1)。この結果、評価したPRTR第一種指定化学物質122物質のうち、今後、ヒト健康への詳細なリスク評価を行う必要があるとされたものは2物質(ヒドラジン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール)、水生生物への詳細なリスク評価を行う必要があるとされたものは9物質であった(図2)。また、評価した医薬品類58物質のうち水生生物への詳細なリスク評価を行う必要があるとされたものは9物質であった(図3)。本研究による手法では、公表PRTRデータ等に基づく簡易な化学物質のスクリーニングが可能であり、実施設への適用が期待される。

 

(クリックで拡大)


(クリックで拡大)


(クリックで拡大)