第16回国土技術開発賞入賞

「ADCPを用いた河川の流量・土砂同時観測手法」

水災害研究グループの開発した技術「ADCPを用いた河川の流量・土砂同時観測手法」が、「第16回国土技術開発賞」に入賞いたしました。 同賞の表彰式が平成26年7月30日に東京国際フォーラムで行われ、本技術が表彰されました。
「国土技術開発賞」は、建設産業におけるハードな技術のみならず、ソフトな技術も含めた広範な新技術を対象として表彰するものであり、技術開発者に対する研究開発意欲の高揚並びに建設技術水準の向上を図ることを目的として行われております。

応募技術名称:ADCPを用いた河川の流量・土砂同時観測手法
技術開発者:萬矢敦啓(1)、本永良樹(2)、橘田隆史(3)
     (1)水災害研究グループ 研究員/
      (2)水災害研究グループ 専門研究員/
      (3)(株)ハイドロシステム開発

1.技術の内容
 洪水時など流れの速い河川の流量と流砂量を同時に高精度で把握できる技術です。
 ADCP (acoustic Doppler current profiler:超音波多層型計測技術)は、河川水の鉛直方向の流速分布や川底の高さ、川底を流れる土砂の移動速度が計測できるものですが、流速が速く、振動の激しい急流河川でも計測が可能となるシステムを開発するとともに、この計測データを用いて流砂量を算出するプログラムを開発しました。また同時に、非接触型流速計で計測した表面流速等のデータとADCPの計測データを組み合わせて、高精度で流量を算出するプログラムを開発しました。

①急流河川でのADCPによる計測を可能とするシステム
 ADCPはボートにデータ通信装置等の機器を搭載したものですが、洪水時など流速が速い場合には、ボートが跳ねたり、揺れたり、流木が引っかかったりして計測することが困難でした。そのため、このような影響を受けないボートを、橋梁上から操作できる橋上操作艇(図1)として新たに開発しました。これにより、計測できる河川の流速を3m/secから5m/secまで上げることができるようになりました。さらに、橋上操作艇と周辺の機器をパッケージ化してコンパクトにまとめ、各機器の計測データを統合できるシステム(図2) として開発しました。

②河川の流量と連型量を同時に高精度で算出できるプログラム
 河川の流量や流砂量を算出する場合には、川底の砂を動かす力(摩擦速度)を設定する必要がありますが、これまでは水深全体の鉛直方向の流速分布を用いてこれを行ってきました。しかし、洪水時など川底の流れや地形の変化が大きくなる場合には、設定した値が実際の物理現象と矛盾する結果をもたらすため、川底近傍の流速を用いて設定する新たな手法を開発しました。さらに、河川の流量を高い精度で得るため、非懐触型流速計で計測した表面流速の連続的なデータに対して、時間的に最も近いADCPの計測データを反映させて流量を算出する手法を開発しました。

2.技術の効果等
 本技術により、圏内の多くの河川において、河川の流量や流砂量の時間的および空間的な分布や川底の変化の状況など河川管理に必要な情報を把握できるようになりました。これまでの観測結果から、圏内有数の急流河川である長野県の姫川では、流速が7m/secの場合でもADCPを用いて計測をすることができました。また、洪水時など川底の流れや地形の変化が大きく変化する場合においても、本技術の手法により河川の流量を誤差10%以内で把握できるようになりました。

図1 橋上操作艇

図2 パッケージ化した観測システム