「第49回地盤工学研究発表会」 優秀論文発表者賞

外力が作用する山岳トンネルにおける
 覆工背面空洞裏込め注入材の剛性の影響に関する一考察

2014年7月15日〜17日に開催された「第49回地盤工学研究発表会」において、道路技術研究グループトンネルチームの日下敦主任研究員が優秀論文発表者賞を受賞しました

題目名:外力が作用する山岳トンネルにおける覆工背面空洞裏込め注入材の剛性の影響に
    関する一考察
執筆者:日下 敦(1)、砂金 伸治(2)、真下 英人(3)
     (1)道路技術研究グループ トンネルチーム 主任研究員/
      (2) 同チーム 上席研究員/
      (3) 同グループ グループ長(現国土交通省国土技術政策総合研究所)

概要:
 山岳トンネルにおける覆工背面空洞は,地山条件等によっては構造上の弱点となる場合があり,その対策として裏込め注入を行うことがある。裏込め注入の目的は,主として,(a)トンネルに外力が作用する場合に地山からの均等な反力を確保してトンネルの耐荷力の向上を図る,(b)空洞上方における地山の亀裂による岩塊崩落や地山の緩み拡大等を防ぐ,といったことが挙げられる。前者においては,適切な反力が得られるよう,裏込め注入材としてある程度の剛性を有するものが選定されるべきであると考えられている。しかしながら,トンネルの耐荷力に直結すると考えられる覆工の応力状態と,裏込め注入材の剛性の関係について議論された事例は少ないのが現状である。本検討では,上述(a)を対象とし,トンネル覆工に外力が作用する場合において,天端部の背面空洞に充填する裏込め注入材の弾性係数が,覆工の応力値に及ぼす影響について数値解析により検討した。
 解析は線形弾性材料を用いた二次元有限要素法によるものとした。覆工はSL幅D = 11.2 mの馬蹄形で,天端部60°の背面に空洞が存在し,この背面空洞に裏込め注入材を充填するものとした(図-1)。荷重条件としては水平方向の荷重が卓越する場合を想定し,土被り1D分に相当する250 kPaの水平荷重を地山の周辺に作用させた。
 本研究の結果、軟質な地山において外力が作用する場合は,裏込め注入工により,覆工に発生する応力が低減できる(図-2)が,その効果を得るためには十分な剛性を有する裏込め注入材を用いる必要があるとともに,極端に剛性の大きな注入材を用いても大幅な応力低減を見込めない可能性があると考えられる(図-3)。また,地山が硬質な場合は,地山よりも大幅に剛性の小さい裏込め注入材を用いても,覆工における引張縁応力の発生を解消できる場合がある(図-4)が,背面空洞が存在したとしても覆工に発生する応力は比較的小さく,地山に存在する亀裂による岩塊の崩落等を防止することを目的とした裏込め注入材を選定することが必要となる場合が多いと考えられる。
図-1 覆工形状と背面空洞の範囲
図-2 覆工縁応力における裏込め注入の有無の影響(軟質地山)
図-3 覆工天端の縁応力に及ぼす裏込め注入材のヤング係数の影響(軟質地山)
図-4 覆工縁応力における裏込め注入の有無の影響(硬質地山)