研究成果・技術情報

テストハンマーによる強度推定調査 FAQ集

質問2 「コンクリート強度推定のための非破壊試験方法マニュアル」(日本建築学会)などを参考に,自分でテストハンマーの整備を行ってもいいでしょうか?

回答:

 簡単な清掃以外は,絶対に行わないでください。

 土木研究所と日本構造物診断技術協会が共同で,実際に使用されているテストハンマーの整備状態について調査を行った結果,一般的なテストアンビルを用いた点検(反発度80程度)で整備状態が適切であると判定されるテストハンマーを用いても,モルタル(反発度30程度)を打撃して反発度を測定した結果が,大きく異なっている場合があることがわかりました。この理由としては,テストハンマーの所有者らが内部の調整ねじ等の状態を変更するなどし,重錘の移動距離や内部の摩擦,バネのバネ定数等が購入当初の状態から大きく変化したまま,使用されていることが考えられます。一般的なコンクリートを打撃した場合に測定される反発度は20〜50程度であるので,上述のようなテストハンマーを調査に用いると,点検では適切に整備されていると判定されるものの,測定結果として本来得られるべき値と大きく異なる値が得られるということが考えられます。

 一方,テストハンマーの製造者等は30〜50程度の反発度が得られるテストアンビルを開発・所有しており,出荷や整備の際に,複数の反発度領域における性能検査などを行っています。このような理由から,テストハンマーの整備は,必ず信頼できる整備者に依頼するようにしてください。

参考資料:

図−2 国内で保有・使用されているテストハンマーの整備状態の比較

図−2 国内で保有・使用されているテストハンマーの整備状態の比較

 

約40機のテストハンマーについて,テストアンビル(反発度80)を打撃した際に測定された反発度と,モルタル製品(反発度30程度)を打撃した際に測定された反発度の関係を整理したものである。赤色の点は,測定の直前に(財)日本品質保証機構により,その整備状態が適切であることが確認された装置の測定結果である。
橙色のエリアに含まれるテストハンマーは,テストアンビルを打撃した際に得られた反発度が78〜82の範囲に入っていないことから,整備状態が適切でないことを点検によって明らかにできる。
ピンク色のエリアに含まれるテストハンマーは,テストアンビルを打撃した際には適切に整備された装置とほぼ同様の反発度が得られるが,反発度30程度のコンクリートを調査するために使用すると,整備状態が適切なハンマーとは大きく異なる測定結果が得られる可能性のある装置である。これらのハンマーは,内部の調整状態が製造時とは大きく異なっている可能性がある。このような状態になったテストハンマーを通常の点検で抽出することはできないため,装置の製造者以外のものが内部の調整状態を変更してはならない。

参考文献:

1.
古賀裕久・河野広隆・福田暁・石井和夫:テストハンマーの個体差および較正法に関する調査,コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.1,pp.1617-1622,2002

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