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テストハンマーによる強度推定調査 FAQ集

質問5 「6つのポイント」のポイント4では,1) 原則としてコンクリートの材齢28日から材齢91日の測定すること,2) 材齢28日から材齢91日の間に測定した場合には材齢に応じた補正を行わないこと,などとされていますが,テストハンマーのマニュアルなどを見ると,試験 時の材齢に応じた補正係数(材齢係数)が掲載されています。「6つのポイント」で,この材齢係数を用いない理由を教えてください。

回答:

 大気中にあるコンクリートは,表面から徐々に乾燥し,その影響からごく表面の部分のみが非常に硬くなる場合があります。このため,反発度を測定するコンクリートの材齢が大きいほど,圧縮強度に比して高めの反発度が測定されると考えられています(注1)。テストハンマーのマニュアル等では,上記のような影響を避けるため,測定時のコンクリートの材齢に応じた補正係数(材齢係数)を用いる方法が紹介されている場合があります。

 しかし,材齢係数には,

 

1)
数値そのものが他の試験方法から引用されたものであり,テストハンマーを用いた実験等を行って定められたものではないこと(注2
2)
測定面の乾燥状態は,材齢の他にも,周辺環境や測定面の向き,コンクリートの配合など様々な影響を受けることが容易に推測され,材齢のみで一律に評価することは難しいと考えられること

などの問題点があり,実際に,長期材齢のコンクリートを試験した実験結果では,補正値が妥当でないと考えられる場合も少なくありません(→質問8)。したがって,材齢係数を用いたからと行って,推定結果の精度が向上するとは限りません。

 一方,新設構造物の構造体コンクリートの品質を確認することを目的とすると,測定時のコンクリートの材齢をある程度限定でき,材齢による影響を少なくできるものと考えられます。そこで,「6つのポイント」では,現場での調査のしやすさ等を考慮し,コンクリートの材齢が28日〜91日の間に調査を行い,その間に得られた反発度に対する材齢による補正は行わないことにしました。

注:

1)
他に,表面付近のコンクリートの中性化(炭酸化)も反発度と強度との関係に影響すると考えられています
2)
ここでいう材齢係数とは,材料学会の「シュミットハンマーによる実施コンクリートの圧縮強度試験判定方法指針(案)」の解説中で説明されたものを指します。いくつかの研究論文や海外のテストハンマー製造者のマニュアル中(英文)などでは,異なる材齢係数(補正値)や補正方法が提案されている場合もありますが,国内の構造物調査に適用されている実績は少なく,その妥当性については十分な検証がなされていないのが現状です。

参考資料:

図−3 新設土木構造物における強度推定結果(1)図−3 新設土木構造物における強度推定結果(2)

図−3 新設土木構造物における強度推定結果(3)図−3 新設土木構造物における強度推定結果(4)

図−3 新設土木構造物における強度推定結果

 

新設土木構造物においてテストハンマーによる強度推定調査を行った結果(テストハンマー強度)と,打設時に採取され標準養生されたコンクリートの圧縮強度(材齢28日)を比較した結果である。
材齢28日〜91日の試験結果は,約60件の土木構造物中の約260箇所で測定を行った結果である。材齢92日〜200日の試験結果は,約60件の土木構造物中の約200箇所で測定を行った結果である。
新設構造物でテストハンマーによる強度推定を行った結果に対して材齢係数を用いた補正を適用すると,強度の推定結果が標準養生供試体の圧縮強度よりも低くなった。

参考文献:

1.
野田一弘・河野広隆・古賀裕久:反発度法による新設コンクリート構造物の強度推定結果,第24回日本道路会議一般論文集,A,pp.344〜345,2001

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