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知的財産ポリシー

 

国立研究開発法人土木研究所知的財産ポリシーpdf形式(276KB)

 

制定 平成21年4月1日

改正 平成27年4月1日

 

 本ポリシーは、国立研究開発法人土木研究所(以下、「研究所」という。)が知的財産を重視して業務を進めていくという姿勢を明確にするとともに、研究所の業務において「創造」・「保護」・「活用」の知的創造サイクルを実現していくため、知的財産の取り扱いについて基本的な考え方を定めるものである。

1.基本的な考え方

 研究所は、土木技術に関する研究開発、技術指導、成果の普及等を行うことにより、土木技術の向上を図り、良質な社会資本の効率的な整備及び北海道の開発の推進に資することを目的としている。

 研究所の研究開発成果は、論文や技術基準、新技術等の形で知的財産となるものであるが、技術基準に反映された知見が新技術の開発や技術指導に活かされたり、開発した新技術が技術基準に反映されたり技術指導で使われたりする等のように、それぞれがさらに価値の高い知的財産を生み出す可能性を持っている。したがって、研究所はそれらの知的財産を適切にマネジメントし、総体として社会に最大限の価値をもたらすことができるよう、戦略的かつ積極的に対応していくことが必要である。

 また、研究所の業務の主な対象となるのは土木の公共事業であることから、そこで求められる技術の特性や利用者、事業の公共性等を十分に踏まえて、適切に知的財産を取り扱って行かなければならない。すなわち、公共事業等における研究開発へのニーズを的確に捉え、活用を見通して戦略的に知的財産を「創造」するとともに、利用価値の高い知的財産を適切に「保護」し、技術の普及等に資するような方法で積極的に「活用」を図っていく必要がある。

 このような考え方に基づいて、研究所の職員は研究開発や技術指導、成果の普及等を進めるとともに、研究所は職員の知的財産に対する取り組みを適切に評価し、知的創造サイクルを実現していくためのインセンティブを与えていくものとする。

2.定義

(1)知的財産

 知的財産とは、人間の知恵と工夫、そして努力の結果生み出された創作物のうち、財産としての価値を持つものをいう。それは、発明等に該当するような個別の開発技術等のみならず、各種研究論文、報告書や技術基準類、プログラム、データベース等の著作物、マーク、デザイン、ノウハウ等も含む幅広いものである。

 

(2)知的財産権

 知的財産権とは、知的財産の所有や使用等に関する権利であり、法律に基づく特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、回路配置利用権、育成者権等をいう。

3.知的財産の創造

 研究開発等による知的財産の創造にあたっては、その技術分野における既存の知的財産情報を適切に調査することにより、重複研究や重複投資を防止して効率的に実施し、戦略的に優れた成果の創出を目指すものとする。また、知的財産権の取得を目指す研究開発等においては、必要な権利を適切に保護するとともに、他者の知的財産権を尊重して良好な研究協力関係を築くため、研究開発等の当初から終了までのすべての段階において、知的財産権を明確に意識して進めることが重要である。

 特に、市場競争の中で普及を図っていくこととなる新たな個別技術等の研究開発においては、特許等の権利を取得することが極めて重要であることから、テーマ検討段階から先行技術調査を行うなど知的財産情報を活用するとともに、研究の評価においても知的財産権の観点を考慮するものとする。

 また、より多く活用される知的財産権を創造するためには、具体的な適用場面での他の技術(知的財産権)に対する優位性という観点から、技術の作り込みを行うことが重要である。

4.知的財産の保護

 研究所の業務を通じて創造された知的財産については、研究所として必要な権利を研究所に帰属させ、適切な方法で確実に保護するものとする。

 その意義は、第三者による模倣や侵害等に対抗することはもちろん、積極的にその権利を活用することにより、技術の普及や向上が図られ社会資本整備の促進や土木技術の向上に寄与するとともに、自己収入の増加や研究意欲の向上、社会からの研究所に対する評価の向上にもつながるものである。

 

(1)権利の取得

 特許権等の法律に基づく権利を取得すべき知的財産は、原則として、その権利を積極的に保護及び活用することにより技術の普及やさらなる向上が見込めるものであり、具体的には、権利の取得及び維持に必要な経費に対してそれ以上の活用による収入が見込めるもの、あるいは、その権利を基本としてさらなる研究開発を行い新たに有用な知的財産の創出が見込めるもの、あるいは、第三者が先に権利を取得してしまうことにより技術の普及が妨げられることが懸念されるもの、その他、知的財産委員会において必要と認められたものとする。

 また、ノウハウとして秘匿することにより権利を保護すべき知的財産は、特許権等では必要な権利が保護できないものであり、かつ、秘匿が可能な特性や態様を有する等の要件に該当するものとする。

 なお、技術基準等として広く一般的に活用される等のように他の方法で普及が図られるものについては、原則として権利を取得しないものとするが、それらについても上記の要件に該当する場合には、積極的に権利の取得を目指すことが重要である。

 

(2)権利の内容

 取得しようとする権利の内容を設定する(例えば、特許法でいう「特許請求の範囲」を画定する)にあたっては、その技術の特性等に応じて、最大限広い範囲の権利が確保できるようにするとともに、侵害行為等を発見し認定する際に客観的に判断しやすいものとなるようにする必要がある。

 

(3)維持管理

 研究所が保有する知的財産権については、研究所の重要な財産として適切に管理していくものとする。特に、登録から一定期間経過した特許権、実用新案権、意匠権、商標権等については、相応の維持費用が必要となってくることから、適切な時点で、今後の実施の見通しや権利を維持する必要性を整理し、権利放棄等を含めて適切に管理していく必要がある。

 また、保有する知的財産権に対して侵害と思われる行為等を発見した場合は、速やかに事実関係を正確に把握するとともに、必要に応じて外部の専門家の助言等を受け、侵害行為であると認められるものについては、関係法令等に基づいて当該行為者に対し適切な対応を求めていく必要がある。

5.知的財産の活用

 研究所が保有する知的財産については、社会の中で広く、数多く活用されるよう、積極的に普及活動等を行うものとする。特に、活用を目的として取得した特許権等については、活用状況を常に把握し、技術の特性等を踏まえて効果的な活用促進の方策を積極的に実施していくことが重要である。

 

(1)実施許諾

 研究所の知的財産は社会全体の共有財産であることから、そこで設定された権利は公共の利益が損なわれない限り誰でも自由に使用できるものでなければならず、使用のため実施を希望する者が一定の技術力等を有していれば許諾するものとする。ただし、共同研究により創出された知的財産権については、共有権利者が優先的な実施を希望する場合はこの限りではない。

 

(2)実施料等

 研究所が保有する知的財産権の使用については、研究所の活動の維持・活性化や研究者の意欲の向上等を図るとともに、自己収入の増大という社会的要請等に応える必要があることから、実施料等は原則として有償とするものとする。ただし、個別の案件において公共の利益の観点から強い社会的要請等がある場合には、無償とすることができる。

 実施料等の具体的な額等については、その技術の特性等に応じて、実施することにより得られる価値に相応しいものとするとともに、技術の普及や社会資本整備の促進等の妨げにならないよう適切に設定する。

 なお、研究所は保有する知的財産権を自ら実施して収入を得ることはないため、共有権利者が実施する場合でも原則として実施料を徴収して権利行使の均衡を図るとともに、研究所の業務を通じてその利益を社会に還元するものとする。

6.知的創造サイクルのための基盤整備

(1)人材・教育

 知的財産を戦略的に扱っていくためには、それを担う人材を育成し確保することが極めて重要であり、研究開発部門や管理部門、知的財産部門等がそれぞれの役割に応じた知識・能力を高めることが必要である。

 その中で、知的財産を尊重する精神を涵養し知的財産に対する意識を高めるための教育は、全職員に必要な最も基本的なものとして、内容や方法を充実させ継続して実施していく。また、研究開発部門においては、戦略的に研究開発を実施しその成果を権利化するための知識や能力が必要であり、知的財産部門においては、知的財産の権利化や運用を含めて戦略的にマネジメントしていく知識や能力が必要となることから、それらを効果的に習得できるような教育を体系的に行っていくものとする。

 

(2)組織体制

 職務発明の認定をはじめ知的財産に係る重要事項の審議は、知的財産委員会(委員長:理事長)において行うものとする。

 また、知的創造サイクルを実現していくためには、知的財産部門の組織体制を強化し戦略的に知的財産を扱っていく必要があることから、研究所の経営戦略や研究開発戦略に合わせて適切な組織体制を構築していくものとする。特に、知的財産の取り扱いについては研究開発部門と知的財産部門が密接に連携していくことが重要であることから、それが可能な組織体制としていく必要がある。さらに、知的財産に関して専門的な知識等を要する業務については、必要に応じて外部の専門家等を有効に活用していく。

 

(3)知的財産収入の活用

 研究所が保有する知的財産権の実施料等の収入については、知的創造サイクルを活発に循環させていくための財源として有効に活用していくものとする。具体的には、職務発明の認定を受けた発明者への補償に充てるとともに、知的財産権の取得及び維持管理、普及活動、技術の改良等に活用していく。

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