研究成果・技術情報

「第51回下水道研究発表会」口頭発表セッション最優秀賞

下水再生水利用時におけるノロウイルスを対象とした定量的微生物リスク評価

2014年7月22日~24日に開催された「第51回下水道研究発表会」口頭セッションの表彰式が2014年10月31日に公益社団法人日本下水道協会で行われ、材料資源研究グループリサイクルチームの安井宣仁研究員が最優秀賞を受賞しました


題目名:下水再生水利用時におけるノロウイルスを対象とした定量的微生物リスク評価
執筆者:安井宣仁(1)、諏訪守(2)、桜井健介(1)、津森ジュン(3)、鈴木穣(4)
     (1)材料資源研究グループリサイクルチーム 研究員/
      (2) 同チーム 主任研究員/
      (3) 同チーム 上席研究員/
      (4) 同グループ グループ長

概要:
 世界的な水問題解決に向け、今後、下水再生水の利用促進が望まれる中、再生水を様々な用途に利用する際の病原微生物の感染リスク管理が重要であり、下水、下水処理水中から通年を通して検出されるノロウイルス(NoV)をリスク評価対象の病原微生物とし、調査・研究を行った。
 本発表のポイントは、下水再生水を利用している実施設(A下水処理場)での再生処理プロセス(図-1)の各工程でのNoV濃度の冬季(流行期)実態調査を行い、得られたデータを用い定量的微生物リスク評価の1手法である障害調整生存年数(1人1年当たりの疫病負荷)を指標とし、水洗トイレ用水利用時(経口暴露1回0.02ml、年間3回)における健康リスク評価を行うとともにリスク削減に重要な処理プロセスを明らかにした。主な研究結果は以下の通りである。
  1. 生物膜ろ過のみではNoVの除去は不十分(図-2のCase4)。
  2. 生物模ろ過の後段に、オゾン処理及び塩素消毒を順に用いた場合、WHO提唱値(10-6DALY)を達成した。(図-2の正常運転時)
  3. 消毒プロセスの機能が不十分な場合(図-2のCase2~4)では、「正常運転時」に比べ約1,100~1,500倍ほどリスクが上昇すると試算され、消毒プロセスが重要管理点であることが明らかとなった。
  4. 従って、水洗トイレ利用時における衛生学的安全性を担保する上で、塩素注入率や残留塩素および接触時間等の消毒効果に影響を及ぼす因子のモニタリングが重要であると考えられた。

図-2 各Caseにおける1人1年あたりの疫病負荷 
			Case1: 生物膜ろ過処理のみが不十分な場合;生物膜ろ過による処理が不適切で、原水がそのままオゾン処理、塩素処理されると想定。Case2: オゾン処理のみが不十分な場合;生物膜ろ過処理水がそのまま塩素処理されることを想定。塩素処理による除去(不活化)率は、実測デ-タに基づき除去率分布を考慮した。
			Case3: 塩素処理のみが不十分な場合;生物膜処理を経たオゾン処理水がそのまま再生水として利用されることを想定。オゾン処理による除去(不活化)率は、実測デ-タに基づき除去率分布を考慮した。Case4: オゾン、塩素処理の双方が不十分な場合;生物膜処理水が直接、再生水として利用さることを想定。