研究成果・技術情報

平成26 年度 ダム工学会論文賞

受賞名:平成26 年度 ダム工学会論文賞(主催:一般社団法人ダム工学会)
受賞論文名と受賞者(著者)
①地震動が重力式コンクリートダム横継目の止水機能に及ぼす影響
   金銅将史(水工構造物T 総括主研)/
   加嶋武志(前水工構造物T 交流研)/
   小堀俊秀(水工構造物T 研究員)/
   山口嘉一(前ダム技術センター、現地質研究監)
②岩手・宮城内陸地震における胆沢ダムの沈下量の再現解析
   佐藤弘行(前水工構造物T 主研)/
   下山顕治(前水工構造物T 交流研)/
   吉田諭司(前水工構造物T 交流研)/
   山口嘉一(前ダム技術センター、現地質研究監)

 

受賞論文の概要:

 

堤体横断目部からの漏水増加例

①地震動が重力式コンクリートダム横継目の止水機能に及ぼす影響(金銅・加嶋・小堀・山口)

 ・東日本大震災以降、複数の重力式コンクリートダムで堤体横継目からの漏水が増加する事象が発生。

 ・上記事象の原因解明を目的に、地震動が堤体横継目部に及ぼす影響を以下の手法により分析。

  1) 過去の地震での類似事象例の収集

  2) 数値解析による地震時挙動(特に横継目部の相対変位、堤体各部(ブロック)の周波数応答特性の関係)の推定

  3) 実ダムでの常時微動計測による継目部挙動の検証

・分析結果を総合し、ダムサイト地形(堤体縦断形状)により地震時に隣接ブロック間相対変位が大きくなり易い横継目部が存在し、当該箇所への負荷集中が漏水発生の一因となる可能性を示した。

・さらに、上記を踏まえ、ダム管理実務における対応の1つとして、止水板の材質によっては経年劣化の可能性、継続時間の長い地震動が作用した場合の影響なども想定し、相対的に負荷集中が生じ易い箇所を地震後の安全点検での重点確認箇所に加えることも提言。

地震時における堤体各部(ブロック境界となる横継目部)の挙動推定例(上下流方向相対変位)

②岩手・宮城内陸地震における胆沢ダムの沈下量の再現解析(佐藤・下山・吉田・山口)

 ・近年の大規模地震において、複数のフィルダムで、数十cm程度のすべりを伴わない沈下(揺すり込み沈下)が発生。

 ・2008年の岩手・宮城内陸地震においては、建設中の胆沢ダムで最大約60cmの揺すり込み沈下が発生。

 ・当時、水工構造物T では胆沢ダム工事事務所からの受託業務で、胆沢ダム堤体のL2 照査を実施しており、以下の手法により、岩手・宮城内陸地震における胆沢ダムの沈下量の再現解析を実施。

  1) 胆沢ダム築堤材料の各種室内試験(静的、動的試験)の実施

  2) 地震時の主応力の回転を考慮する等の新たな手法を提案した累積損傷解析手法の提案

  3) 2008年の岩手・宮城内陸地震による胆沢ダムの揺すり込み沈下の再現解析の実施

・提案した手法による再現解析結果と、2008年岩手・宮城内陸地震における建設中の胆沢ダムの実測沈下量が良好に一致することを確認。また、実際の地震時挙動と同様に、Newmark 法では地震時のすべり発生しないことも解析的に確認。

・提案した手法は、民間企業の動的解析ソフトウェアに組み込まれ市販されており、他のフィルダムの揺すり込み沈下量の評価に使用することが可能。

築堤材料を用いた室内動的強度試験

地震時の主応力の回転を考慮した手法の提案 実測沈下量と再現解析の比較

ダム工学会通常総会での表彰式(5/14 於 東京都内)