研究成果・技術情報

「平成27年度地盤工学会論文賞(英文部門)」受賞

受賞名:「平成27年度地盤工学会論文賞(英文部門)」受賞
論文題目:SEVERAL FACTORS AFFECTING SEISMIC BEHAVIOUR OF EMBANKMENTS IN
     DYNAMIC CENTRIFUGE MODEL TESTS (Soils and Foundations, 55(4), 813-828)
受賞者(著者):榎本 忠夫(国土技術政策総合研究所 道路構造物研究部 道路基盤研究室 研究官)
             (元 土木研究所 材料地盤研究グループ 土質・振動チーム 研究員)
        佐々木 哲也(地質・地盤研究グループ 土質・振動チーム 上席研究員)
賞状
賞の概要:

 平成28年6月8日に(公社)地盤工学会より平成27年度地盤工学会論文賞(英文部門)が授与されました。同賞は、地盤工学に関する学術および技術の進展に顕著な貢献をしたと認められる業績で、 平成25年10月1日から平成27年9月30日までの2年間以内に(公社)地盤工学会の機関誌類に英語にて発表されたものが対象とされます。

 

受賞論文の概要:

-研究内容-
 地震による被災が顕在化している山岳部の谷埋め道路盛土をはじめとし、盛土の減災を目的とした遠心模型実験が多くの研究者により行われてきたが、試験装置の制約により、 それらの盛土模型はいずれも実物換算で高さ10m以下で、最大加振加速度は500gal程度にとどまっていた。また、盛土の耐震性に影響を及ぼす要因を系統的に明らかにした研究はほとんどない。 本論文では、振動台と土槽の大型化を図り、1995年の兵庫県南部地震級(900gal程度)の加振を可能にした遠心力載荷装置を用いて、実物換算高さ15~30mの盛土を対象に以下の実験を実施した。

 

-実験概要-
 図1のように、土槽内に砂質土あるいはシルト質土にて盛土模型を作製し遠心力を付加した後、石膏で模擬した背面地山から流体を供給し所定の盛土内水位に達した時点で加振するという方法で、 盛土の耐震性に及ぼす水位、支持地盤の傾斜角度、締固め度、盛土材料の種類、盛土高さの影響、および基盤排水層の効果を検証した。

 

-得られた知見-
 (1)浸透水位が高いほど盛土の耐震性が低く特に法尻部の水位の影響が大きい。
 (2)支持地盤の傾斜角度が大きい方がより深刻な地震時被害をもたらす。
 (3)締固め度の上昇に伴い盛土材料の強度が上がるため耐震性が向上し、締固め度90%ではある程度の
  締固め効果が得られる(図2)。
 (4)細粒分が多い良配合シルト質土は締固め不足を招きやすいが、良く締め固めれば、貧配合で細粒分
  が少ない砂質土で構成された盛土よりも耐震性が高い。
 (5)基盤排水層を法尻に設置することで盛土内水位が下がるため、盛土高さに関係なくその耐震性を向
  上させることができ、基盤排水層が長い方がより効果的である(図3)。

 

図1 実物換算した実験模型(遠心加速度50G、高さ15m相当の例)

図1 実物換算した実験模型(遠心加速度50G、高さ15m相当の例)


図2 締固め度と盛土天端の沈下量の関係

図3 基盤排水層の長さと盛土天端の沈下量の関係