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XII 新材料・未利用材料・リサイクル材を用いた社会資本整備に関する研究

→個別課題の結果要旨

研究期間:平成13年度~17年度
プロジェクトリーダー:材料地盤研究グループ長 萩原良二
研究担当グループ:技術推進本部(構造物マネジメント技術)、材料地盤研究グループ(新材料、リサイクル、土質)、基礎道路技術研究グループ(舗装)、構造物研究グループ(橋梁構造)

1. 研究の必要性
これからの社会資本整備においては、新材料、新工法による土木構造物の高性能化やコスト縮減、ならびに、従来は使われずに廃棄されていた、または利用率の低かった未利用材料や各種廃棄物のリサイクル材の有効利用による循環型社会形成への貢献がこれまで以上に強く求められるようになってきている。

2. 研究の範囲と達成目標
 新材料、未利用材料、リサイクル材の利用技術のうち、本重点プロジェクト研究では、高強度鉄筋、FRPなどの新材料の土木構造物への利用技術、規格外骨材などの未利用材料の有効利用技術、建設廃棄物のうち技術開発の余地が多く残されている再生骨材や有機質廃材のリサイクル技術、および公共事業においてユーザーが安心して使える指針の作成が強く求められている他産業廃棄物のリサイクル材の利用技術の開発を行うことを研究の範囲として、以下の達成目標を設定した。
   (1) 高強度鉄筋、FRPなどの土木構造物への利用技術の開発
   (2) 規格外骨材などの未利用材料、有機質廃棄物の利用技術の開発
   (3) 他産業廃棄物のリサイクル技術とリサイクル材利用技術の開発

3. 個別課題の構成
 本重点プロジェクト研究では、上記の目標を達成するため、以下に示す研究課題を設定した。
   (1) 高強度鉄筋の利用技術の開発に関する研究(平成13~16年度)
   (2) FRPの道路構造物への適用に関する調査(平成13~17年度)
   (3) 再生骨材・未利用骨材の有効利用技術の開発(平成13~17年度)
   (4) 下水汚泥を活用した有機質廃材の資源化・リサイクル技術に関する調査(平成14~17年度)
   (5) 他産業リサイクル材の利用技術に関する研究(平成11~17年度)
   (6) 他産業リサイクル材の舗装への利用に関する研究(平成14~16年度)
 このうち、平成14年度は(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の6課題を実施している。

4. 研究の成果

(1) 高強度鉄筋、FRPなどの土木構造物への利用技術の開発
 「高強度鉄筋の利用技術の開発に関する研究」では、兵庫県南部地震を契機とした耐震設計基準の見直しによって、主として柱部材を中心にコンクリート構造物の配筋が極めて過密となる場合が生じているため、安全性の確保と同時に施工の効率を向上させる一手法として、高強度鉄筋をせん断補強鉄筋としてRC部材に用いることを考え、そのせん断強度算定手法とそれを用いた設計手法を開発することを目標としている。平成14年度は、せん断強度が問題となるせん断スパン比の小さいRC部材について、高強度せん断補強鉄筋を使用したRC部材のせん断載荷試験を実施した。その結果、以下のことが明らかとなった。
(1) 高強度せん断補強鉄筋を使用することにより、従来の鉄筋を用いた場合より変形性能が向上する。
(2) 使用したせん断補強鉄筋は降伏点が1400MPaクラスの高強度のものであるが、せん断スパン比が小さい場合はこれが降伏点に達したが、せん断スパン比が大きい場合は降伏まで達することなくせん断破壊し、せん断スパン比により効果が異なる。
  今後は、高強度せん断補強鉄筋がどのような条件のとき降伏まで有効に働き、そうでないのはどのような場合かを明らかにし、せん断補強鉄筋の引張強度の設計用値について検討する予定である。
 「FRPの道路構造物への適用に関する調査(1)」では、沿岸地域などの厳しい腐食環境にある道路構造物は、防食対策に多大な費用を要しているため、高耐食性構造物の構築技術の一つとして、FRP(繊維強化プラスチック)材料の道路橋への適用方法を提案することを目標としている。FRPを構造部材として道路構造物へ適用するにあたっては、構造部材の製造方法や接合個所の力学特性がとくに重要である。そこで、平成14年度は、小断面FRP部材を接着接合して大断面の構造部材を製造することを前提として、GFRPおよびCF/GFRPを対象に接着接合に関する基本的な実験を行った。その結果、FRP表面の表面粗さを向上させることにより、せん断接着強度が増大すること、また、FRP表面をプラズマ処理することにより、せん断接着強度が増大すること等が確認された。
 今後は、接着剥離強度や樹脂クリープによるボルト軸力抜けの検討を継続するとともに、接着接合した大断面部材を構造部材として適用した場合の力学特性について検討を行う予定である。さらに、上記部材を用いたFRP材料の道路橋・歩道橋への適用方法について研究を実施する計画である。
 また、「FRPの道路構造物への適用に関する調査(2)」では、FRPの床版への適用方法を提案することを目標としており、平成14年度はFRP引抜成形材を適用した際の構造解析モデルを作成し、最適な床版構造の検討を行い、その上でFRPの適用に関する問題点を抽出した。その結果、上フランジの圧縮応力と版のたわみにより断面が決定されていること、輪荷重の低減を図ることが可能な合成床版の採用により、上フランジに作用する力の低減を図ることが応力の低減に有効であることがわかった。また、工費を算出した結果、FRP引抜成形材の材料および加工費が工費を割高にしていることから、上フランジの板厚を低減する合成構造の検討が必要であると考えられた。
 今後は、継手部分の詳細ソリッドモデルの構築と合成床版モデルおよび桁との接合部に関するモデルの構築ならびに解析を進めるとともに、床版および桁作用による耐荷力の確認ならびに輪荷重走行試験による疲労耐久性の確認を行う予定である。

(2) 規格外骨材などの未利用材料、有機質廃棄物の利用技術の開発
 「再生骨材・未利用骨材の有効利用技術の開発」では、建設廃棄物のリサイクル利用や建設廃棄物の削減に資するため、コンクリート解体材および従来廃棄されていた規格外骨材をコンクリート用骨材として有効利用するための要素技術の開発と品質評価規準の提案を行うことを目標としている。平成14年度は前年度に引き続き、コンクリート解体材から生産される再生クラッシャーランを再生骨材としたコンクリートの凍結融解耐久性について検討するため、再生粗骨材中の空気量、および練混ぜ時の再生骨材の含水状態が再生骨材コンクリートの凍結融解耐久性に与える影響について実験的な検討を行った。その結果、再生粗骨材中の空気量は耐久性に影響を与えること、一方、含水状態は耐久性に影響を与えないことがわかった。
 今後は、空気量測定に用いられる骨材修正係数等の新たな指標を用いた再生骨材の品質評価法について検討を行う予定である。
 「下水汚泥を活用した有機質廃材の資源化・リサイクル技術に関する調査」では、有機質廃材を資源として有効利用することを促進するため、草木等の有機質廃材と下水汚泥との混合発酵により資源化を図る方法、有機質廃材を改質・加工して下水処理に活用する方法などを開発することを目標としている。平成14年度は、草木に蒸気加圧による爆砕を施したものと下水汚泥との混合メタン発酵方法について検討を行った。その結果、現状の下水汚泥メタン発酵方法に爆砕物を付加するだけで、旺盛なメタンガスの発生と、下水汚泥から発酵液中に遊離するアンモニア性窒素の利用・固定化が進行した。また、発酵液の脱水性を、鉄塩と高分子凝集剤を助剤として調べた結果、清澄な濾液と下水汚泥のみの場合よりも含水率の低い脱水汚泥が得られた。これにより、下水処理場において草木系バイオマスからのメタンガス生産利用が容易に可能となることが示され、本技術は国土交通省の新施策として実施されることとなった。
 今後は、草木系バイオマスを原料とした他の発酵技術についても研究開発を進めるとともに、自治体や地域地域におけるバイオマス資源化・リサイクルシステムの提案と実用化を行っていく予定である。

(3) 他産業廃棄物のリサイクル技術とリサイクル材利用技術の開発
 「他産業リサイクル材の利用技術に関する研究」では、建設部門以外の他産業からの廃棄物の多くは産業内でのリサイクルに限界を抱えており、建設資材としての利用に大きな期待が寄せられ、また建設分野においても、資源循環型社会の形成に積極的に貢献しようとしており、利用者が安心して利用できるリサイクル材の利用技術マニュアルの作成が求められているため、他産業リサイクル材の種別ごとに適用用途に応じた工学的性能や環境安全性等の評価を行い、適正な利用を促進するための利用技術についてマニュアル化を図ることを目標としている。平成14年度は、国、公団、都道府県等へのアンケート調査を実施し、他産業リサイクル材の利用実績をとりまとめた。また、リサイクル材料・用途についての研究開発状況、利用状況、マニュアル化、JIS化等に関する最新の情報も収集し、建設資材としての適用性を評価して以下の3つに分類した。
(1) 実施工に利用できるもの
(2) 試験施工に利用できるもの
(3) 調査段階のもの(現状では建設資材としての利用が困難、必要性が低い等)
 また、過年度までの検討結果とあわせてマニュアル原案を作成した。
 今後は、このマニュアル原案を叩き台とし、有識者らによる検討委員会を設けて各方面からの意見を取り入れていくとともに、マニュアル策定に向けて必要な補足データの収集を行う予定である。
 「他産業リサイクル材の舗装への利用に関する研究」では、他産業から製造されるリサイクル材の中でも廃ガラスに注目し、舗装への利用方法を開発することを目標としている。平成14年度は、廃ガラスのアスファルト舗装およびブロック舗装への適用性や付加的機能を明らかにするため、舗装としての基本性状の把握や付加的機能の評価に関する実験を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。
(1) アスファルト混合物に利用する場合、5mmまたは2.5mm以下の細骨材としての利用が適当であり、添加量が全体の15%程度であれば、性能の低下が少なかった。付加的機能として、輝度や照度から路面の視認性について検討したが、添加量が15%程度では通常の混合物との明確な差が見られなかった。
(2) インターロッキングブロックとしての利用については、多くの市販品があり、通常のブロックと同規格となっているため、基本性状については問題はなかった。付加的機能として、輝度や照度から路面の視認性について検討したが、ガラス混入率を高くすることができるため(表面だけなら最大ガラス100%も可能)、アスファルト混合物と比較して視認性が顕著に高いことがわかった。
 今後は、舗装としての耐久性についてさらに検討を加え、試験舗装などによる調査を行っていく予定である。


個別課題の成果

12.1 高強度鉄筋の利用技術の開発に関する研究

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平13~平16
    担当チーム:技術推進本部(構造物マネジメント技術)
    研究担当者:河野 広隆、渡辺 博志、森濱 和正
【要旨】
 平成14年度は、せん断耐力が問題となるせん断スパン比の小さいRC部材について、高強度せん断補強鉄筋を使用したRC部材のせん断載荷試験を実施し、高強度鉄筋によるせん断補強効果についての検討を行なった。
 その結果、高強度せん断補強鉄筋を用いることにより、普通強度の鉄筋を用いたRC部材より変形性能は向上することがわかった。ただし、普通強度のせん断補強鉄筋は降伏まで達していたが、高強度せん断補強鉄筋は、せん断スパン比が小さい場合は降伏まで達したのに対し、大きい場合は降伏までは達しなかった。今後、高強度せん断補強鉄筋が有効に働く条件とその限界を明らかにし、せん断耐力の算定に反映させる必要がある。
キーワード:鉄筋コンクリート、せん断、高強度鉄筋、じん性、終局強度


12.2 FRPの道路構造物への適用に関する調査(1)

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平13~平17
    担当チーム:材料地盤研究グループ(新材料)
    研究担当者:明嵐政司、木嶋 健、西崎 到
【要旨】
 沿岸地域の道路構造物は海塩の影響による厳しい腐食環境におかれており、防食対策にかかる費用は膨大なものとなっている。このため、高耐食性構造物の構築技術の一つとして、耐塩害性能に優れた新しい構造材料の開発・導入が求められている。本研究では、耐塩害性能に優れた構造材料としてFRP(繊維強化プラスチック)を取り上げ、床版および橋梁等の道路構造物へ構造部材として適用することを検討している。FRPを構造部材として道路構造物へ適用する場合には、構造部材の製造方法が非常に重要となる。本稿では、小断面部材を接着接合して大断面部材を製造することを念頭において、FRPの表面処理が接着接合強度に及ぼす影響についての基本的な実験結果を報告する。
キーワード:FRP、接着接合、引張せん断試験


12.3 FRPの道路構造物への適用に関する調査(2)

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平13~平17
    担当チーム:構造物研究グループ(橋梁構造)
    研究担当者:村越潤、新井恵一、大石哲也
【要旨】
 沿岸地域や積雪寒冷地における道路構造物は、海塩や路面へ散布される凍結防止剤により厳しい腐食環境におかれており、耐腐食性に優れた新しい構造材料の開発・導入が求められている。本研究は、軽量であり、耐腐食性に優れた材料であるFRP(繊維強化プラスチック)を取り上げ、橋梁床版部へ適用するに必要な性能を明らかにするものである。平成14年度は、FRP引抜成形材を床版に適用した場合の構造解析モデルを作成し、最適断面を求めるとともに、FRP床版を用いた道路橋の試設計を行い、技術的課題の抽出を行った。
キーワード:FRP、引抜成形材、床版構造、合成床版


12.4 再生骨材・未利用骨材の有効利用技術の開発

    研究予算:運営費交付金(一般勘定)
    研究期間:平13~平17
    担当チーム:技術推進本部(構造物マネジメント技術)
    研究担当者:河野広隆、片平博
【要旨】
 本研究は、コンクリート解体材および従来廃棄されていた規格外骨材をコンクリート用骨材として有効利用するための要素技術の開発と品質評価基準の提案を目指すものでる。一般的に生産される再生クラッシャーラン程度の品質の再生骨材をコンクリートに使用すると再生骨材コンクリートの凍結融解耐久性は低下する。平成14年度は再生粗骨材中の空気量、および練混ぜ時の再生骨材の含水状態が再生骨材コンクリートの凍結融解耐久性に与える影響について実験的な検討を行った。この結果、空気量は耐久性に影響を与えること、含水状態は耐久性に影響を与えないことが分かった。
キーワード:再生骨材、凍結融解耐久性、粗骨材含水率、空気量


12.5 下水汚泥を活用した有機質廃材の資源化・リサイクル技術に関する調査

    研究予算:受託業務費
    研究期間:平14~平17
    研究担当グループ:材料地盤研究グループ(リサイクル)
    研究担当者:鈴木穣、落修一
【要旨】
 本調査は、草木系のバイオマスと排水処理系からのバイオマスの1つである下水汚泥の利活用の推進に寄与するために、双方のバイオマスの特性を生かしたより効果的な利活用技術を開発、提供することにある。平成14年度は、草木に蒸気加圧による爆砕を施したものと下水汚泥との混合メタン発酵方法について調べた。その結果、現状の下水汚泥メタン発酵方法に爆砕物を付加するだけで、下水汚泥と同等のメタンガスの発生と、下水汚泥から発酵液中に遊離するアンモニア性窒素の利用・固定化が進行した。また、発酵液の脱水性を、鉄塩と高分子凝集剤を助剤として調べた結果、清澄な濾液と下水汚泥のみの場合よりも含水率の低い脱水汚泥が得られた。
キーワード:バイオマス、バイオガス、草木、下水汚泥、メタン発酵、リサイクル


12.6 他産業リサイクル材の利用技術に関する研究

    研究予算:運営費交付金(一般勘定)
    研究期間:平11~平17
    研究担当グループ:材料地盤研究グループ(新材料、リサイクル、土質)
    研究担当者:明嵐政司(上席)、中村俊彦、鈴木 穣(上席)、南山瑞彦、恒岡伸幸(上席)、森 啓年
【要旨】
 本研究では、他産業廃棄物を利用したリサイクル材を土木分野の事業で建設資材として活用するために、その工学的性能や環境安全性等の評価手法を提案する。さらにこの評価手法に基づいて、個々のリサイクル材に対する評価も実施している。平成14年度は、国、公団、都道府県へのアンケート調査を実施し、他産業リサイクル材の利用実績について取りまとめた。また、リサイクル材料・用途についての研究開発状況、利用状況、マニュアル化、JIS化等に関する最新の情報を収集し、建設資材としての適用性を検討した。
キーワード:他産業リサイクル材、適用性、評価、環境安全性


12.7 他産業リサイクル材の舗装への利用に関する研究

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平14~平16
    研究担当グループ:基礎道路技術研究グループ(舗装)
    研究担当者:吉田 武 、新田弘之
【要旨】
 資源の枯渇や環境保全を背景として、各種産業界でのリサイクルが求められている。このため、本研究は建設部門以外の他産業から製造されるリサイクル材料の中でも廃ガラスに注目し、舗装への利用方法を開発することを目標として実施した。平成14年度は、廃ガラスのアスファルト舗装およびブロック舗装への適用性や付加的機能を明らかにするため、舗装としての基本性状の把握や付加的機能の評価に関する実験を行った。その結果、アスファルト舗装へ利用する場合、添加量15%程度であれば性能の低下が少なかったが、路面の視認性向上としては十分な量ではなかった。また、インターロッキングブロックとしての利用する場合、性状について問題はなかった。路面の視認性については、ガラス混入率が非常に高くすることができるため、アスファルト混合物に混ぜた場合と比較して遙かに視認性が高いことがわかった。
キーワード:他産業リサイクル材、廃ガラス、舗装、ブロック舗装、輝度