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4.豪雨・地震による土砂災害に対する危険度予測と被害軽減技術の開発

研究期間:平成18年度〜平成22年度(一部の研究については平成17年度より着手)
プロジェクトリーダー:土砂管理研究グループ長 寺田秀樹
研究担当グループ:土砂管理研究グループ(火山・土石流、地すべり、雪崩・地すべり)、材料地盤研究グループ(土質、地質)

1.研究の必要性

 豪雨や地震により多くの土砂災害が発生し、甚大な被害が生じている。また、平成16年の中越地震では、地すべり、斜面崩壊等の多発、大量の不安定土砂の堆積、大規模河道閉塞の発生など、新たな災害形態が生じ、社会的な注目を集めるとともに、緊急対策の実施が迫られた。さらに、今後も集中豪雨の頻発化や発生が懸念されている大規模地震等により、土砂災害による被害の頻発化、甚大化が懸念されている。
 一方、膨大な土砂災害の危険箇所に対して、ハード対策の整備水準は2割程度という状況にあるが、財政上の制約もあり、急激な整備水準の向上は困難な状況にある。このため、重点的・効率的な土砂災害対策の実施と発災後の被害拡大の防止軽減に向けた技術開発が求められている。

2.研究の範囲と達成目標

 豪雨による土砂災害の発生場所や時期を絞り込むための災害危険度の予測手法の高度化・実用化、中越地震による地すべりの発生機構の解明とそれに基づく危険度評価手法の開発と大規模地震後の流域からの生産・流出土砂量の変化予測手法の開発、さらに発災後の被害拡大防止のための地すべり等に対する実用的な監視手法・応急対策手法の開発を研究範囲とし、以下の達成目標を設定した。
   (1) 豪雨に対する土砂災害危険度の予測手法の開発
   (2) 地震に対する土砂災害危険度の予測手法の開発
   (3) 土砂災害時の被害軽減技術の開発

3.個別課題の構成

 本重点プロジェクト研究では、上記の目標を達成するため、以下に示す研究課題を設定した。
   (1) 高精度空間情報を用いた崩壊・土石流発生危険度評価手法に関する研究(平成17〜19年度)
   (2) 道路斜面災害等による通行止め時間の縮減手法に関する調査(平成18〜20年度)
   (3) 地震に伴う地すべり土塊の強度変化特性に関する研究(平成17〜19年度)
   (4) 地震に伴う地すべり危険箇所予測手法に関する研究(平成20〜22年度)
   (5) 地震動による山地流域の安全度評価手法に関する研究(平成18〜21年度)
   (6) 地すべり災害箇所の応急緊急対策支援技術の開発(平成17〜20年度)
 このうち、平成18年度は(1)、(2)、(3)、(5)、(6)の5課題を実施している。

4.研究の成果

 本重点プロジェクト研究の個別課題の成果は、以下の個別論文に示すとおりである。なお、「2.研究の範囲と達成目標」に示した達成目標に関して、平成18年度に実施してきた研究と今後の課題について要約すると以下のとおりである。

 

(1)豪雨に対する土砂災害危険度の予測手法の開発

 土砂災害の場所の予測手法については、表層崩壊に起因した土石流の発生危険度評価に基づいた危険渓流の危険度予測手法と105m3を超えるような大規模な崩壊土砂量となる深層崩壊発生危険箇所の抽出手法開発のための検討を行っている。
 前者は、土石流の主要な発生形態である表層崩壊に起因した土石流に着目し、多数の土石流危険渓流の発生危険度を評価、予測する手法を開発することで、より重点的、効率的な事業実施に資するものである。
 表層崩壊に起因する土石流を対象として,斜面安定解析により危険度評価を行う手法を検討した。C,φに対してモンテカルロシミュレーションを用いた乱数により、互いに独立な正規分布で発生させ,得られる安全率の分布でメッシュ毎の危険度を評価した。その上で、流域間の危険度評価を行うために,流域毎に安全率1.0を下回る確率に着目して危険度の順位を求めた。その際,実際の崩壊面積率と比較し検証を行った。さらに,1mメッシュの標高データから作成した地形図により,斜面勾配40°以上の凹地状地形で崩壊が多発している傾向が見られたことから,この地形が占める面積率を計算し,それぞれの危険度順位を比較した。この結果,個々の流域毎の順位は必ずしも一致しないが,それぞれ上位10番以内の渓流は,7渓流が共通しており,実際に土石流が発生した渓流の危険度を概ね高く評価する結果を得た。
 また、2005年の宮崎市別府田野川の事例(崩壊土砂量60万m3)のように、深層崩壊は、発生頻度は低いが崩壊土砂量が105m3以上に及ぶため、大規模な土石流の発生や崩壊に伴う河道閉塞等が生じ被害が甚大になる場合が多い。このため、危険箇所の抽出手法が求められている。
 そこで、過去に検討した「深層崩壊のおそれのある渓流の抽出手法素案」(以下、「抽出素案」)を基に、明治期以降の深層崩壊の発生事例を整理し、抽出指標の見直しを行った上で、客観性を確保するための定量的な指標について検討した。
 その結果、「明瞭なリニアメント」や「活断層」および「山頂緩斜面」は深層崩壊の発生に関して必要条件であることが認められた。また、「深層崩壊跡地」の有無とその多寡はその地域での崩壊発生頻度として読み取ることができると考えられた。さらに、新たに、「岩盤クリープ斜面」,「線状凹地」,「二重山稜」が抽出された。また、客観性を確保するための指標について、S=1/2.5万の数値地図(50mメッシュ)を用いて、深層崩壊箇所に関わる地形解析要素の特性値を検討した。別府田野川周辺について、写真判読による山頂緩斜面の抽出と数値地形解析からの抽出を行った結果、両者の抽出範囲は概ね一致することがわかった。さらに、数値地形解析の結果に文献調査と空中写真判読によって抽出した指標を加えて、別府田野川周辺に適用した結果、深層崩壊のおそれのある渓流として20渓流を抽出できた。数値地形解析による抽出条件を以下に示す。

     危険区域の候補(鰐塚山地の場合)=起伏量>150mかつ高度分散量>50mかつ湿潤度(TWI)<6

  今後、表層崩壊に起因した土石流発生危険度評価手法、深層崩壊の発生危険区域抽出のための定量的評価について、他の流域において適用可能性を有するか否かを検証し、より汎用性のある崩壊・土石流発生危険度評価手法として行きたい。

 土砂災害の時期の予測手法については、道路の通行止め時間を縮減する手法を開発するという観点から研究を行っている。道路斜面災害による「通行止め」の時間を短縮するためには過去の災害を分析し実態を踏まえた上で、今後発生しうる災害現象を科学的に予測し、ハザードマップ等の形式で明示した上で戦略的に対応する必要がある。そのために、過去の道路斜面災害履歴を基に見逃し災害危険箇所の面的な把握と被害想定手法並びに通行止め時間の算定手法の検討を行った。
 平成18年度は、過去の直轄国道の災害の実態について収集したデータの分析を行った。その結果、1)国道斜面災害は九州や北海道で特に多い。また災害種別は表層崩壊が突出して多く、次いで落石や土石流が多い。2)道路への崩土到達量は四国で多い。3)通行規制区間内と区間外では区間外の方が多く、地域による偏りもある。4)災害の約3割は連続雨量25mm以下で発生する。5)災害が発生しやすい地質は九州地方の第四紀火山岩類など地域ごとに特徴があるものの、全国的には第三紀堆積岩や中新世海底火山岩類で発生しやすく、西日本では中古生代の堆積岩も多いことがわかった。
 今後、個々の災害状況に関する詳細なデータを蓄積・分析することにより、防災上の着目点を明らかにしていく必要があるととも、被害想定を行う手法を開発していく必要がある。
 また、道路斜面災害のリスク分析においては、道路ネットワークの直接損失である通行止め時間の算定方法が明確ではなく、通行止め時間を簡易に算出することが課題となっていた。そこで、「通行止め時間」を指標とした評価手法に関する研究を実施することとし、平成18年度は、災害潜在性のある道路斜面について災害により発生すると想定した推定崩壊土量から通行止め時間(潜在通行止め時間と呼ぶ)を求め、対策により路線内に存在する潜在通行止め時間が減少することを対策効果として評価する手法の確立を目的として、実災害における崩壊土量と復旧時間の関係から「通行止め時間」を算出するための検討を行った。災害記録における復旧時間の修正を行い、崩壊土量と復旧時間の関係を分析した結果、崩壊土量と復旧時間に相関性を確認するとともに、さらに防災点検ランクに応じて復旧時間に差があることが確認された。
 今後は、これまでの研究成果である防災点検のカテゴリーごとに得られる災害潜在原単位との組み合わせにより、簡易かつ面的な防災対策の効果の評価手法の確立を目指すとともに、事前通行規制基準の評価手法の確立に向けて、降雨による通行止め時間と災害の捕捉の観点を考慮した検討を進める予定である。

(2)地震に対する土砂災害危険度の予測手法の開発

 中越地震による地すべりの発生機構については、地すべり地形内で再滑動した代表事例について調査し、空中写真判読から地震による地すべりの特徴について芋川流域の地すべりを対象にとりまとめるとともに、地すべり地から採取した試料により、動的リングせん断試験を実施した。
 地震で発生した地すべりを、空中写真から、1)大規模、2)明瞭な滑落崖と移動域を有し移動量が大きい、3)地すべり発生域と移動体が重複し、完全に分離していないこと、4)移動体にある程度の厚さがあることを抽出条件として抽出し、地震による地すべりの特徴を整理した。
 地すべりの発生件数は52件であるが、再滑動型が多く(65%)、初生地すべりは少ない(35%)。地震前の斜面勾配は再滑動型では15°以上、初生型では25°以上で発生しているが、頻度は25〜30°が多い。地すべり地形内での発生位置は地震前の地すべり地を上部、側部、下部、全体で分けると全体と下部がそれぞれ4割を占める。地すべり発生と地質及び基岩との関係については、再滑動型、初生地すべりとも明瞭な傾向は認められなかった。移動方向については、再滑動型地すべりは流れ盤方向の影響を受けるが地質構造に無関係な方向である場合も多く、初生地すべりは地質構造に無関係な方向である。
 また、動的リングせん断試験では、砂分の多い土では間隙水圧が発生しやすいことがわかったが、試験には乱した試料を用いていることから、地すべり発生時の状態は、より固結度が高いことが考えられるので、こうしたことを考慮した検討を加える必要がある。
 今後は、地すべりの発生要因とその影響度合いについて検討し、地震による地すべり発生の危険度評価手法を検討していく。
 大規模地震後の流域からの生産・流出土砂量の変化予測手法の開発については、以下のとおりである。地震後の砂防計画策定のためにも,土砂移動実態の把握が重要となるが,地震発生後の流域において土砂生産量の推移を定量的に検討した事例は少ない。そこで,芋川流域を対象として,航空レーザ計測(以下,LP計測とする)や空中写真判読を行い,中越地震後の芋川流域における土砂生産量の推移の実態把握を目的とした。
 芋川流域における地震発生後から平成18年5月までのDEMデータの差分により求めた崩壊による生産土砂量の推移を見ると、地震直後から平成17年5月までの崩壊土砂量は約50万m3(地震時の崩壊土砂量の約10%)であり,崩壊の誘因は融雪である。一方,平成17年5月から平成18年5月の期間における崩壊土砂量は約80万m3(地震時の崩壊土砂量の約17%)であった。これは約3,000mmの降雨と融雪を誘因としたものである。単位期間あたりの崩壊土砂量で比較すると,地震直後〜平成17年5月は約2,600m3/day,平成17年5月〜平成18年5月は約2,200m3/dayとなり,芋川流域では崩壊による土砂生産が未だ継続している。
 今後は、地震後の山地流域からの土砂生産・流出量のモニタリングを継続するとともに、その予測手法の検討を進める。

(3)土砂災害時の被害軽減技術の開発

 地すべり災害の状況によっては、地すべりの移動状況が把握出来なかったり、対策工の計画にはすべり面などの詳細な調査の必要があるといったことから応急対策を直ちに実施できない場合がある。そこで、応急対策の効果的実施方法の検討、並びに不安定斜面の遠隔監視システムの開発を目的とした研究を行っている。
 平成18年度は、応急対策の効果的実施方法の検討として既往の地すべり災害の事例調査をおこない、地形地質分類から地すべり形態を分類し応急緊急対策工と効果の関係を整理し、また地すべりの進展に応じた必要な調査・対策を整理した。これにより地すべり類型別および地すべりの進展に応じて必要な調査・対策が整理され、効果的な緊急調査手法と対策工の提案が可能となった。
 不安定斜面の遠隔監視システムの開発として、従来のノンプリズム型トータルステーションを用いた手法を基に、遠隔から標的を設置する方法を開発することで、精度の高い観測方法を考案した。標的にはプリズムの代替として再帰性反射塗料を用い、目印としての役割と反射剤としての役割を果たしている。この塗料はガラスカプセルに封入されており、クロスボーの矢先に取付けて飛ばすことで斜面上に標的を形成することができる。このようにして形成された標的をノンプリズム型トータルステーションで計測することにより、これまでよりも小さい視準誤差で観測を行うことができる。
 また、地すべり災害発生前後の航空写真から地中のすべり面形状を推定し、現地調査並に推定精度を向上させることができれば、速やかな応緊急対策の実施にあたって有用である。そこで、地すべり災害発生前後の航空写真から地中のすべり面形状を推定するために、複合多項式法によるすべり面の推定方法を検討を行った。この複合多項式法は、倚子型や船底型地すべりなど単一の二次多項式では解析が困難なすべり面推定が可能な手法である。
 さらに、河道閉塞の監視手法について検討した。河道閉塞が形成された場合に取り扱う対象を大きく「崩壊部」「閉塞部」「湛水部」に分け,それぞれについて主に監視・観測すべき現象を整理した。その結果、監視・観測すべき事項のうち,特に重要な項目は1)概況調査,2)湛水位,3)湛水部への流入量,4)閉塞部の侵食状況であることがわかった。これらについて、要検討項目を整理した。

個別課題の成果

4.1 高精度空間情報を用いた崩壊・土石流発生危険度評価手法に関する研究

研究予算:運営費交付金(治水勘定)
研究期間:平17〜平19
担当チーム:土砂管理研究グループ(火山・土石流)
研究担当者:栗原淳一,桜井亘,酒井直樹

【要旨】
 平成18年度は、表層崩壊による土石流を対象として、浸透流解析と斜面安定解析による土石流危険渓流間の相対的な危険度評価手法を検討した。この手法を平成16年に表層崩壊と土石流が多発した愛媛県新居浜市へ適用したところ、実際に崩壊が発生した渓流と危険度の高い渓流は概ね同じ渓流が抽出された。また、地質・地形に着目した深層崩壊危険箇所の抽出手法の検討を行った。地形・地質の定性的な評価手法に加えて、数値地図を使用した斜面の曲率や、起伏量等の定量的な地形の評価手法を加えることにより、抽出手法の精度を向上させた。

キーワード:高精度空間情報、表層崩壊、深層崩壊、土石流、危険度評価


4.2 道路斜面災害等による通行止め時間の縮減手法に関する調査(1)

研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
研究期間:平18〜平20
担当チーム:材料地盤研究グループ(地質)
研究担当者:佐々木靖人、浅井健一、倉橋稔幸、矢島良紀

【要旨】
 過去の直轄国道の災害実態に関して収集したデータの分析を行った結果、以下のことが明らかとなった。1)国道斜面災害は九州や北海道で特に多い。また災害種別は表層崩壊が突出して多く、次いで落石や土石流が多い。2)道路への崩土到達量は四国で多い。3)通行規制区間内と区間外では区間外の方が多く、地域による偏りもある。4)災害の約3割は連続雨量25mm以下で発生している。5)災害が発生しやすい地質は九州地方の第四紀火山岩類など地域ごとに特徴があるものの、全国的には第三紀堆積岩や中新世海底火山岩類で発生しやすく、西日本では中古生代の堆積岩も多い。

キーワード:道路、斜面、災害、通行規制、降雨


4.3 道路斜面災害等による通行止め時間の縮減手法に関する調査(2)

研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
研究期間:平18〜平20
担当チーム:材料地盤研究グループ(土質)
研究担当者:小橋秀俊、加藤俊二、吉田直人

【要旨】
 本研究は、道路ネットワークの信頼性を向上させるために必須条件である「通行止め時間」の縮減を達成目標とした目標達成型の防災事業を進めるために、防災管理に必要な対応の検討とともに、事業効果を評価する技術を開発することを目的として、地質チームと合同で実施している。この中で、土質チームは、防災事業の効果を判断するための指標として「通行止め時間」を用いた評価手法の検討を行っている。平成18年度は、指標となる通行止め時間の設定に関する検討を行った。

キーワード:道路斜面災害、防災事業、評価指標、通行止め時間


4.4 地震に伴う地すべり土塊の強度変化特性に関する研究

研究予算:運営費交付金(治水勘定)
研究期間:平17〜平19
担当チーム:雪崩・地すべり研究センター
研究担当者:花岡正明、丸山清輝、鈴木滋、村中亮太、ハスバートル

【要旨】
 激甚な揺れを観測した中越地震では、地震に伴って急激に再滑動する地すべりはないと言う定説に反して、大規模な地すべり土塊の急激な滑動により集落が直撃もしくはアクセス道路及びライフラインの寸断や河道閉塞が多発し、長期にわたり集落を孤立化させるなど中山間地に深刻な影響をもたらした。当センターにおいてはH17年度より中越地震を事例として、詳細な調査・分析により地形・地質、地震時の地すべり土塊せん断強度特性などをもとに既存の地すべりが地震により滑動した機構を明らかにするとともに、代表的な地すべりについて地震による地すべり危険度評価方法を検討している。
 平成18年度から重点プロジェクト研究となり、本報告では平成17から実施した研究成果を示す。平成17年度は、地すべり地形内で再滑動した代表的な事例を抽出し、塩谷神沢川、田麦山小高、尼谷地の対策工事のための調査ボーリングによる内部地質構造及びすべり面の把握をはじめ詳細な現地調査結果をもとに地すべり発生要因をとりまとめた。平成18年度は、地震前後の地形をDEMを用いて解析し、芋川流域における地震による地すべりの特徴についてとりまとめた。この他、地すべり地から試料を採取し、動的リングせん断試験を実施した。

キーワード:地震、地すべり、発生要因、動的リングせん断試験


4.5 地震動による山地流域の安全度評価手法に関する研究

研究予算:運営費交付金(治水勘定)
研究期間:平18〜平21
担当チーム:土砂管理研究グループ(火山・土石流)
研究担当者:栗原淳一、桜井亘、山越隆雄

【要旨】
 平成18年度は、新潟県中越地震で斜面崩壊が多発した芋川流域において、地震後の土砂生産量の実態を把握するとともに、河道閉塞が発生した際の調査・監視手法を整理した。その結果、1)河道閉塞調査・監視手法を整理し、要検討課題を明らかにした、2)河道閉塞侵食状況の把握に関して、各種計測機器の適用可能性が明らかになった、3)地震の影響を受けた流域の土砂流出の経年変化過程が明らかになった。

キーワード:土砂生産、土砂流出、河道閉塞、地震動、芋川


4.6 地すべり災害箇所の応急緊急対策支援技術の開発

研究予算:運営費交付金(治水勘定)
研究期間:平17〜平20
担当チーム:土砂管理研究グループ(地すべり)
研究担当者:藤澤和範、藤平 大

【要旨】
 地すべり発生直後には災害の拡大を防止するため、迅速な対応をとる必要があり、そのためには、地すべりの移動状況の把握と応急対策工の実施が必要である。従前は、詳細な調査を実施した上で対策工を計画する必要があるため応急対策を直ちに実施できない、地すべりの移動状況の把握ができないなどの理由から迅速な対応が困難であった。そこで本研究では、応急対策の効果的な実施方法の検討ならびに不安定斜面の遠隔監視システムの開発をおこなっている。
 平成18年度は、応急対策の効果的な実施方法を検討するため、既往の地すべり災害の事例調査をおこない、地形地質別に地すべり形態を分類して応急対策工と効果の関係を整理し、また地すべりの進展に応じた必要な調査・対策を整理した。これにより地すべり類型別および地すべりの進展に応じて必要な調査・対策が整理され、効果的な緊急調査手法と対策工の提案が可能となった。
 また不安定斜面の遠隔監視システムの開発として遠隔監視手法を開発(特許出願中)したほか、地すべり災害発生前後の航空写真から地中のすべり面形状を推定する手法を開発した。

キーワード:地すべり、応急対策、遠隔監視システム、すべり面推定、航空写真