研究成果・技術情報


知的財産権: 特許 第3849986号pdfファイル 特許 第4378337号pdfファイル 特許 第4518235号pdfファイル
                      WO2005-075365pdfファイル

技術の概要
 ダム貯水池等の閉鎖性水域で、溶存酸素濃度を向上させて水質を改善するため、水中で吸入した水に酸素を溶かし込んで高濃度酸素水を生成し、酸素を供給したい水深に直接吐出することができる装置です。装置を水中に設置させることから、水圧を活用して効率的に酸素を水に溶解させることができます。また、装置内は水圧と等しいことから吐出時の減圧発泡がなく、濃度勾配で自然に吐出することができるため、任意の水深の貧酸素水層で、水平方向に水温躍層等を破壊せずに高濃度酸素水を供給することができます。さらに、底層での酸素濃度を高めることにより、富栄養化を引き起こす要因ともなる底泥からの栄養塩類 (N,P) や金属類の溶出を抑制することができます。
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< 気液溶解装置 >
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適用の効果
1) 環境改善
  • 従来の深層曝気方式に比べ、DO濃度が吐出部で3倍の30mg/l、水平方向600m地点で2.5倍の5mg/l以上と高く、早期水質改善が図れます。垂直方向は、従来は装置を水中に固定するため10m程度の範囲しか改善できませんでしたが、本装置は水深を自由に調整可能で目標水深すべてにわたり改善することができます。
  • 従来の曝気方式のように気泡を発生させないことから、底泥の巻き上げや攪拌、水温躍層等の破壊が起こらず、上層部の水質を悪化させずに下層部の水質を改善できます。さらに底層のDO濃度を高めることにより、底泥に含まれる金属類等の有害物質が溶出するのを抑制し、水質の悪化を防止できます。

  • 2) コスト縮減
  • 従来の深層曝気方式に比べて、同規模の水域を改善する場合、イニシャルコストで約30%、30年間のランニングコストで約30%以上の縮減が可能です。
  •   装置名 吐出量 大きさ 酸素供給量 DO濃度 酸素溶解効率
    従来技術 水没式エアリフト 空気96m3/h 高さ:13m~14m 220Kg/日 吐出部:10mg/l
    水平600m:2mg/l
    51%
    本技術 気液溶解装置 酸素水80m3/h 径 : 1.2m
    高さ : 3.5m
    175Kg/日 吐出部:30mg/l
    水平600m:5mg/l
    89%
    酸素水120m3/h 径 : 1.2m
    高さ : 4m
    263Kg/日 吐出部:30mg/l
    水平600m:5mg/l
    89%
         < 従来技術との性能等比較表 >

    ※適用による環境改善やコスト縮減効果は、現場の条件により大きく異なる場合があります。                  


    適用条件
  • 一次側電源(三相200V)が供給できること
  • 適用水深(10~55m)、浅瀬は低床式(1~10m)使用


  • 適用上の留意点
  • 水中ポンプと酸素発生装置は年1度のメンテナンスが必要
  • 高濃度酸素水を広範囲に水平拡散するためには密度躍層(水温躍層、塩分躍層)の調査が必要


  • 共同開発者
  • 松江土建株式会社


  • 適用実績
       
    年度 導入現場
    平成21年度 中国地方整備局 島地川ダム (山口県)
    関東地方整備局空港港湾部 千葉港 (千葉県)
    鳥根県 布部ダム (島根県)
    平成22年度 中国地方整備局 灰塚ダム (広島県)
    平成23年度 東京都港湾局 お台場海浜公園 (東京都)
    平成25年度 フィリップ社購入 龍珠ダム (中国江蘇省)
    四国地方整備局 鹿野川ダム (愛媛県)
    平成27年度 中国電力(株) 来島ダム (島根県)
    平成28年度 中国電力(株) 樽床ダム (広島県)
    平成29年度 島根県 三瓶ダム (島根県)
    網走湖 (国研)土木研究所 寒地土木研究所(北海道)
    等、合計 11件(H30.11現在)


    問合せ先
      国立研究開発法人 土木研究所 水環境研究グループ 水質チーム :TEL 029-879-6777
      松江土建株式会社 環境部 :TEL 0852-24-5478