物理探査・土木技術に関する情報を提供します.

研究概要

物理探査担当の研究課題

 物理探査担当は,地質・地盤研究グループに附置された特別の研究組織で,現場計測技術の一つである物理探査技術に関する研究を主に,社会資本の効率的な整備や維持管理を効率良く行なうための調査研究,技術開発に携わっています.

研究開発プログラム課題と主要研究および実施研究課題名

1. (2):国内外で頻発、激甚化する水災害に対するリスクマネジメント支援技術の開発
 浸透に対する河川堤防の点検・評価・対策手法に関する研究

研究課題:空間的不均質性を考慮した堤防の浸透特性調査技術の構築

<研究の概要>
河川堤防は長い年月をかけて築堤・改築を繰り返してきた歴史的・人工的土構造物であり,内部物性構造は本来的に不均質になっています.さらに使用する土質材料自体も不均質です.従来は一定区間内では堤防内部・基礎地盤の物性構造は均質であると仮定して堤防の安全性を推定してきましたが,最近の堤防被災箇所における原因調査や,横断構造物の撤去・改築に伴う開削部調査等によって,堤防が局所的に不均質であること,その空間的不均質構造が堤防の浸透安全性に対して大きく影響していることが明らかになってきました.さらに浸透破壊過程も非可逆な過程であり,時間的にも不均質・非線形な現象として捉える必要があることが理解されてきました.本研究では河川堤防の不均質性の実態を,空間情報を効果的に取得することが可能な浅層物理探査技術を用いて明らかにするとともに,そのような空間的・時間的不均質構造が堤防の浸透特性にどのように影響するかを把握・推定することが可能となるよう,非可逆過程のモニタリング技術の開発と堤防構成材料の工学的特性を明らかにすることを目的としています.

<トピックス>
河川堤防下の地盤内の高透水層を浸透する地下水の流動をリアルタイムでモニタリングする技術開発を進めています.その一環として土研構内に設置してある模擬堤防の一部を開削して底部に川砂を敷設し,埋め戻して2次元的な人工地盤・堤体を構築しました.この模擬堤防上に測線を設定し,30分間隔で比抵抗分布を測定しています(約2ヶ月間連続測定).その結果降雨形態によって堤体・基礎地盤内への浸透形態が異なることを捉えることに成功しました.下図(a)は,前1週間の累積雨量9mm,前48時間累積雨量59mmの時の比抵抗の変化率を図化したものです.一方下図(b)は前1週間の累積雨量91mm,前24時間累積雨量112mmの時の比抵抗変化率分布です.堤体表層から降雨がまず直下に浸透し,継続すると堤体部が飽和して流動 の主部が基礎地盤部に移行することが示されています.

模擬堤防の降雨強度・土壌雨量指数による堤体内降雨浸透の違い 模擬堤防の降雨強度・土壌雨量指数による堤体内降雨浸透の違い - 土壌雨量指数が小さい時期の中規模降雨の応答
土壌雨量指数が小さい時期の中規模降雨の応答 模擬堤防の降雨強度・土壌雨量指数による堤体内降雨浸透の違い - 土壌雨量指数が大きく堤体上部が飽和しているときの堤体内降雨浸透
土壌雨量指数が大きく堤体上部が飽和しているときの堤体内降雨浸透

1. (4) インフラ施設の地震レジリエンス強化のための耐震技術の開発  高盛土・谷状地形盛土のり面・特殊土地盤の詳細点検・耐震性診断・対策手法に関する研究

研究課題:特殊土地盤を含む盛土の耐震性評価手法の高精度化及び耐震補強法の合理化手法

<研究の概要>
社会インフラ施設の地震レジリエンス強化を図るには,特殊土地盤を含む盛土の耐震性に,どのような構造や材料物性が影響しているかを把握評価する必要があります.物理探査は盛土および基礎地盤の内部の物性構造を連続断面情報として提供することが可能な現場計測解析技術の一つです.この物理探査技術を複数組み合わせて測定する統合物理探査を,実際に地震で被災した盛土区間で適用すれば,被災に影響した盛土内部の不均質構造や残存する被災の痕跡を検出することができ,被災過程とその原因を解明することが可能になる期待されます.
本研究では,被災現場でも短期間で災害復旧作業の支障とならずに稠密な地下空間情報を取得することが可能な現場計測技術を開発し,適用性を検証することを目的の一つとしています.加えて計測物性値と地盤強度とを結びつける室内実験を行ない,地震被災の好発区間の予測,すなわち地震リスクの空間的分布を効率的・経済的な抽出への活用を目標としています.

<トピックス>
熊本地震で強震動を受けて変状し,その後の豪雨によって一部が崩落した道路高盛土の区間において,盛土崩落体および前縁の原地盤の変形構造,崩落の影響範囲を推定することを目的として,現地で稠密な統合物理探査を実施しました(上図).
その結果,盛土崩落体は補強土壁や抑止杭等の効果によって大規模な滑りを免れたものの,すべりは深部に達して地盤改良体を傾動させるとともに,前縁の軟弱地盤にも圧縮変形を与えていることを明らかにすることができました(下図下).また残存した盛土内部にも,特にボックスカルバート近傍で緩みが発生していること(下図上)を捉えることができました.

道路盛土崩落部での稠密物理探査結果 道路盛土崩落部での稠密物理探査結果 - UAV撮影画像から作成した被災個所のDSMと測線配置
UAV撮影画像から作成した被災個所のDSMと測線配置 道路盛土崩落部での稠密物理探査結果 - 崩落残存盛土内部のS波速度構造とすべり前縁部のS波速度構造比較
崩落残存盛土内部のS波速度構造とすべり前縁部のS波速度構造比較

2. (6) メンテナンスサイクルの効率化・信頼性向上に関する研究  舗装マネジメントの効率化に関する研究

研究課題:機器活用による調査・監視の効率化・信頼性向上技術の開発・評価
     措置が必要な部位・箇所の優先度決定手法の構築

<研究の概要>
既設舗装道路の長寿命化を図るには,的確かつ効率的な維持管理を進めることが不可欠です.現行の目視点検による舗装の健全性診断では,路面の補修にかかる情報は得られるものの,路盤層以下の舗装構造とその健全性評価を行なうための物性情報を得ることは困難でした.本研究では,従来路面下空洞探査に利用されてきた多チャンネル地中―レーダを用いた舗装構造の空間分布を高速で取得することを可能とする計測技術・ツールの開発を行なうとともに,舗装を伝播する高周波表面波振動を非接触センサアレイで捉えて舗装物性構造を推定し,修繕措置の要否とその工法選択に必要な情報を提供する現場計測手法の開発を進めています.

<トピックス>
熊本地震で強震動を受けて変状し,その後の豪雨によって一部が崩落した道路高盛土の天端舗装面で,高周波表面波探査および地中レーダ探査を実施しました.路面上には盛土崩壊に付随したクラックが残存していました(図中の赤矢印).高周波表面波探査では,路面上には変状が認められなかった左側車線の路床部においてS波速度が相対的に低くなっていることがわかりました.中央分離帯下でもクラックに挟まれた区間ではS波速度が小さく,変状の影響によるものと考えられます.地中レーダ断面ではこの部分に縦ずれを伴うクラックが下方に進展している構造を捉えることができました.地中レーダ断面では,左端側帯部でアスコン層の厚さが薄くなっていること,右端付近で上部路盤層が消失していること,路床層内の低S波速度部では信号が乱れ,周波数も低くなっていることが示されています.

舗装路面変状発生部での稠密物理探査結果 舗装路面変状発生部での稠密物理探査結果 - 高周波表面波探査結果断面、舗装面DSMレリーフ画像、地中レーダ探査断面
高周波表面波探査結果断面(上)
舗装面DSMレリーフ画像(中)
地中レーダ探査断面(下)
*縦横比の違いに注意(上:V/H=1;下:V/H=2)