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物理探査技術紹介 非接触舗装物性構造計測装置・計測技術

概要

舗装表面を打撃したときに発生する高周波の表面波を非接触で測定し,その表面波の周波数-位相速度分散特性から舗装の構造と物性を推定する画期的な装置および計測手法です.
これまで舗装の健全度評価手法として用いられてきたFWD (Falling Weight Deflectometer) とは異なり,非接触で舗装伝播振動を測定するため移動しながらの計測が可能となる,舗装構成各部層の層厚と物性(S波速度)を求めることができる,連続測定することで2次元の断面構造が得られる,という特長があります.


図-1 非接触舗装物性構造計測手法の概念図

非接触舗装物性構造計測手法の原理


写真-1 加速度センサアレイによる高周波表面波計測

舗装表面をハンマーなどで打撃すると,舗装中を弾性波が伝播します.そのうち最もエネルギーが強いのは表面波と呼ばれる波動です.この表面波は周波数によって伝播速度が異なるという特性があります.その周波数-位相速度分散特性は,舗装の構造と物性に規制されています.したがって,表面波の伝播特性を計測すれば舗装の構造(各部層の層厚)と物性を求めることができるのです.

この高周波表面波を計測するためには,FWDに搭載されているような動コイル型低周波地震計ではなく,高周波数帯域の振動を捉えることが可能な加速度センサを使用し,それを舗装面に貼り付けてアレイを形成する必要がありました(写真-1).しかしこのような計測方法は,車両通行の障害となり,また計測作業自体の安全性確保にも問題がありました.
そこで,移動体に空気結合型のアレイセンサを搭載し,非接触状態で路面を伝播する装置を開発しました(図-1).
前述のように,舗装表面をハンマーなどで打撃すると舗装表面を集中的に伝播する表面波が発生します.この表面波によって路面がわずかに振動し,直上の空気層を振るわせます.空気中に漏洩する微弱な変換波(漏洩表面波と呼びます)を音圧を感知するセンサアレイで捉えようとするのが,この非接触舗装物性構造計測装置です(図-2).


図-2 非接触舗装物性計測装置の構造図(上)と開発したプロトタイプの外観(下)

図-3は,同一地点において,加速度センサアレイを用いた計測結果と非接触舗装物性計測装置を用いて計測した結果とを比較したものです.後者の観測波形には,直接伝播してきた打撃音が雑音として捉えられていますが,周波数-位相速度分散曲線については加速度センサアレイのそれとほぼ同じ結果が得られました.それから舗装構造を推定したところ,アスコン層が8cm,上下層路盤層が48cm,路床が124cmとしてそれぞれのS波速度を図中に示した値にした場合の理論的な分散曲線と合致することがわかりました.推定した構造は同一地点でのさく孔調査結果で得られた各部層の層厚と極めて調和的でした.
このことは,非接触舗装物性構造探査装置および探査法が,舗装物性構造の推定に有用であることを実証するものです.今後検証実験を重ね,社会実装を目指して実機開発を進める予定です.


図-3 加速度センサアレイ(左)と非接触舗装物性計測装置(右)の計測波形(上)および周波数-位相速度分散特性(下)の比較.推定した舗装構造はさく孔調査結果(右端)と調和的であった.

知財登録
特開2017-009457

共同出願者:
今村杉夫 (有)地圏探査技術研究所
林 宏一 Geometrics, Inc.

関連成果発表:
稲崎ほか (2015):非接触舗装路物性計測システムの開発(その1):開発の背景とシステムの試作, 物理探査学会第132回学術講演会講演論文集, 87-90.
今村ほか(2015):非接触舗装路物性計測システムの開発(その2):試作機の機械的特徴, 物理探査学会第132回学術講演会講演論文集, 91-92.
Inazaki, T., et al., (2014): High-frequency surface wave measurement for the pavement structural analysis, Proceedings of the 27h Annual Symposium on the Application of Geophysics to Engineering and Environmental Problems (SAGEEP2014), USB, 7p.
DOI: 10.4133/SAGEEP.27-100