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熊本地震被災地益城町での詳細物理探査

2016年熊本地震で甚大な被害を被った熊本県益城町において,道路・堤防上に測線を設定して詳細物理探査を実施しました.河川堤防や道路盛土などが地震によってどのような被害・変状を受けているか,それらを把握する現場調査技術としてどのような手法が有効であるかを評価することを目的としたものです.適用した手法はハイブリッド表面波探査,オームマッパー電気探査および地中レーダ探査です.益城町では,布田川断層から分岐した地表地震断層が出現したことが特徴的でした.この地表地震断層は西南西方向に進展し,益城町市街地直下まで続いているという見解も出されていました.そこでこの断層およびその延長部と交差するように5本の短い測線を設定し,浅部物理探査を実施しました.図-1に探査測線位置図を,また写真-1〜写真-3に各々の探査手法の探査実施状況を示します.


図-1 熊本県益城町で実施し詳細物理探査の測線位置図(稲崎ほか(2017) Fig.1. なお,背景地図として国土地理院の地理院タイル「標準地図」および「色別標高図」を使用)


写真-1 地表地震断層出現部での地中レーダ探査風景


写真-2 国道443号線沿いで実施した表面波探査風景


写真-3 安永地区に設定した測線でのオームマッパー電気探査風景

探査解析結果の一例を図-2に示します.同図は農道242号線に設定した,約300mの測線の探査断面を並べたものです.地中レーダ(GPR)探査断面(最上段)には,能動表層から約3mの深さまでの最表層の構造が捉えられています.埋積している礫からの反射信号が多くの地点で確認されました.加えてほぼフラットな境界面(縦横比を10倍に拡大していることに注意)が数箇所で右(東南東)上がりの変形を受けていることがわかりました.境界面がずれていた位置は,地表地震断層を挟んで幅約100mの範囲に及んでいました(測線が斜交しているため実質幅は50m以下).同図上から2段目は,オームマッパー電気探査により得られた表層約15mの比抵抗断面です(縦横比2倍).地表地震断層出現部で,比抵抗構造が折れ曲がり,東南東側が数m程度上がっているようにみえます.なお同断面上にひかれている線は,GPR探査断面で認められたずれ線を投影したものです.


図-2 農道242号線測線の統合物理探査断面解釈図

同図上から3段目は,ハイブリッド表面波探査により求められたS波速度構造断面です(縦横比等倍).同図では最表層に道路盛土に相当する薄い低速度層があること,その直下には高速度層にサンドイッチ状に相対的低速度層が挟まれた構造が認められました.この低速度挟み層は測線右側では薄層化するとともに,地表地震断層出現部で折れ曲がり,右側が数m上がるという,比抵抗断面と調和的な変形構造が認められました.

同図上から4断面は,ハイブリッド表面波探査データに対し,P波反射法処理を施して作成したマイグレーション後P波深度断面です(縦横比0.5倍).同図では,深さ300m程度までの浅部構造をイメージングすることができました.特に標高-50m付近に,右下がりの明瞭な反射面が認められました.この反射面,および表層(標高20m附近)の反射面は,地表地震断層出現部周辺で右上がりの変形を受けていることが示されています.

このように表層部から深さ300m程度までの物理探査各種断面を並べて総合的に対比することにより,熊本地震で地表に出現した分岐断層は断層変形帯の一部であること,過去の地震を含めて,変形は幅約50m(地表部で,深い部分では拡大?)のゾーンに及んでいること,などがわかりました.