物理探査・土木技術に関する情報を提供します.

GPRによる河川コンクリート構造物背面の空洞分布の把握

樋管周辺などの川表側堤防法面を侵食から保護することを目的として設置されているコンクリート護岸は,その背面が空洞化すると不安定化し,護岸としての機能を維持できなくなることが懸念されます. 背面空洞は,高水時の水みちとなって,堤体内部の侵食を進行させる危険性があるため,モルタルなどを充填して閉塞する必要があります. そこで,実際の堤防護岸構造物を対象に,GPRを用いて空洞を検出できるかについて調査実験を実施しました.


図1 コンクリート護岸(張りブロック)の調査範囲

調査実験対象とした樋門部張りブロック護岸の外観を図1に示します. 目視では,樋管横断部直上で護岸がやや膨らんでいる変状を認めることができました. ところで張ブロックの表面には凹凸があるためGPRを走査すると,図2に示すようにブロック表面までの距離が変化するのに対応して観測波形の走時や周波数特性が変化します. 図3には,張りブロック背面からの反射波が明瞭な場合と不明瞭な場合のGPR断面の例を比較したものです. 背面から反射波の波形が直接波のそれと同位相であることがわかりますが,これはコンクリート背面で比誘電率が小さくなること,すなわち背面に空気が存在することを示すもので,同位相の反射波の連続出現部を空洞と判断しました.


図2 張りブロックの測定位置の違いによるGPR波形の特徴

図3 張りブロック背面からの反射波の特徴

図4 信号伝播モデル法による空洞厚の推定

空洞の分布を把握するためには,対応する空洞反射波のみを抽出することが求められます. それには背景除去処理という波形処理技術を適用します. さらに空洞の厚さを評価することも必要となります. 空洞厚の推定にあたっては,モデル実験の結果を参考にしました. 図4に示すように,GPRの送信波形の形状がわかっていれば,観測波形は空洞上面,空洞下面,空洞内での多重1回目の反射波が重畳したものとして説明することができます. そこで観測波形をこれらの成分に分解し,最適化解析によって空洞厚を推定します(図4).


図5 張りブロック背面の空洞厚分布

その結果,図5に示すように張りブロック背面の空洞厚分布を推定することができました. GPRによる空洞厚分布が実際にどの程度の信頼度があるか,を検証する必要があります. 今後は現地での削孔調査等によって,実際の空洞の分布と厚さ,背面の侵食の有無等確認を実施する予定です.