物理探査・土木技術に関する情報を提供します.

実堤防での浸透過程モニタリング

木曽川左岸部において,横断樋管の断面拡張のため実堤防の一部を開削し既設樋管を撤去する工事が行なわれました.この開削に先立ち,閉鎖された堤防区間において天端から堤体内に水を注入し,浸透する過程を高速電気探査装置を用いてモニタリングする基礎実験を実施しました(稲崎ほか,2015).


写真-1 実堤防での浸透モニタリングのレイアウト

写真-1に示すように堤防天端のり肩(歩道区間)に長さ6m,幅60cm,深さ30cmの溝を掘削し,水タンクから水を注水して堤体内に浸透させました.その浸透の様子を,図-1に示すように堤防天端から法尻にかけて50cm間隔で11.5m×3.5mの領域に合計192本の電極を打ち込んで3次元比抵抗トモグラフィー探査によってモニタリングしました.図-2は注入溝内の水位と浸透量(注水量から溝内残留水量を引いたもの:蒸発散を無視)と,モニタリングした経過時間との関係を示したものです.モニタリング実験は2日間をかけましたが,当時は手動で機械を操作しなければならなかったため,夜間は欠測になっています.


図-1 3次元比抵抗トモグラフィー探査電極配置


図-2 注入水の浸透量(W. V.)曲線,溝内水位(W. L.)およびモニタリングステージ

注入開始から26時間後までの間に,合計44回の繰り返し測定を実施しました.一回の測定に要した時間は約5分,この間に合計6912点の応答電位を測定しています.図-3は,注水前の初期状態(a)と,計測終了時(b)の比抵抗分布を3次元的に表示したものです.注入溝の近傍で,比抵抗が低下(青色領域が拡大)していることがわかります.ただしこのような3次元表示では内奥部の変動を表現することができません.そこで,差分トモグラフィー解析を実施し,初期状態からの変化率を4枚の入れ子の面(-6,-12,-18,-24%)として表示してみました.1日目(図-4(a)),2日目(図-4(b))とも,初期に大きく低下した後,浸透域が緩やかに拡大することが捉えられています.一方2日目では後半に浸透域の拡大速度が大きくなっていることが示されています.このステージでは,浸透率(浸透量曲線の傾き)が急に増大しています(図-2).不飽和帯中への浸透が非線形的に変化することが推定されます.今後同様の実験を繰り返すとともに室内実験等によって不飽和帯の浸透特性の理解を深化させていく予定です.


図-3 3次元比抵抗とモグラフィー解析断面比較.(a):初期状態, (b):計測終了時


図-4 比抵抗変化率の3次元経時変化. 左:1日目; 右:2日目