物理探査・土木技術に関する情報を提供します.

豪雨によって盛土崩壊が発生した道路高盛土箇所で詳細物理探査を実施

供用直後の自動車専用道路の高盛土区間が,2016年熊本地震によって強震動を受け,さらに累積雨量240mmに達する集中豪雨によって一部が崩壊するという災害が発生しました.その被災箇所において,盛土崩壊の実態とメカニズムの究明を目的として,詳細な浅部物理探査を実施しました.

適用した浅部物理探査は,ハイブリッド表面波探査,高周波表面波探査,S波トモグラフィ探査,SV波反射法探査,P波反射法探査,高速電気探査,小間隔比抵抗計測,土壌水分測定,S波VSP探査の9種類に及び,加えて高所撮影画像解析により被災盛土のオルソ化写真・DSM(ディジタル地表モデル)を作成しました.また担当事務所よりドローン撮像データを提供いただき,それらに対しても同様の解析を施してオルソ化写真とDSMを作成しています.


写真1 天端道路上での探査風景


写真2 高所撮影カメラ装置による被災箇所の撮影風景

現地計測作業からデータ解析,作図,総合評価に至る過程を基本的に直営で実施(研究者自らが実施する)しています.

ドローン撮影データから作成した被災地の3D立体地表モデルを図-3に示します.盛土の部分崩壊によって前縁の田圃面にヒービング(盤ぶくれ)が発生している様子,補強土壁と抑止工の効果によって,大規模な盛土崩壊をまぬかれたことがわかります.高所撮影データから作成したレリーフ図(図-4)には,盛土崩壊に伴い天端路面に発生した後背亀裂が明瞭に捉えられています.また比高数cmのモールトラックやバルジ状の高まりも識別することができ,それらから残存盛土部の相対的な変位を推定することも可能です.


図-3 盛土崩壊部の3D立体地形(3Dモデルを見る


図-4 天端路面部のレリーフ図

盛土崩壊中央部に設定した測線での比抵抗トモグラフィ探査断面を図-5に示します.同断面には盛土部が高比抵抗体として,また海成の有明粘土層が低比抵抗層,地表耕作土および淡水成の蓮池層上部層が相対的高比抵抗層として捉えられています.この比抵抗構造と,地表部等の変位ベクトル(被災前後の水平・垂直方向変位)データからすべり線を推定しました.軟弱な有明粘土層の内部,深さ10m程度までの表層が盛土すべりに伴って変位していると解釈することができます.


図-5 比抵抗トモグラフィ探査結果および変位ベクトルデータから推定したすべり線位置