物理探査・土木技術に関する情報を提供します.

堤防の「健康診断」としての統合物理探査

日本はアジアモンスーン地帯に属し,また活動的プレート境界に位置するという地理的・地質学的特徴から,世界的にみても自然災害が発生しやすい地域にあたります.防災白書などの国の統計では,この自然災害を地震津波,火山噴火,台風,豪雨,豪雪に大別しています.直観的には,地震災害による被害が最も大きいと思い込みがちですが,実は右図に示すように,犠牲者数でも公共施設の被害額でも,水害(豪雨による洪水・土砂災害.台風災害は含まれていません)が最も深刻な災害の一つとなっているのです.

河川堤防は洪水を防ぐ最も重要な構造物の一つで,整備が進められてきました.また既設の堤防が大きな洪水に持ちこたえることができるか,という堤防の安全性評価も実施されてきています.この堤防の安全性評価は,私たちの定期健康診断に例えることができます.身長体重などの身体測定や既往歴・自覚症状の有無などを調べる問診にあたるのが,「概略点検」です.さらに堤防に孔をあけ(ボーリング調査),構成材料やその浸透特性を調べる「詳細点検」は,血液検査や尿検査に対比できます.

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ところで健康診断には心電図検査や胸部X線検査など装置を用いた診断がありますが,従来の堤防の安全点検にはこれに対応する項目がありませんでした.土木研究所で開発を進めている「統合物理探査」は,この装置診断に該当する調査計測技術で,堤防の安全点検をより確実なものにするためその普及が期待されています.