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氾濫原環境の簡易評価手法の開発

 効率的かつ効果的に氾濫原環境を再生するためには、第一に、現状の氾濫原環境を適切に評価することが必要です。


 木曽川を事例として、既存のデータセットを活用し、イシガイ類生息環境の観点から簡易に氾濫原環境を評価し、保全や再生の適性地を抽出する手法を開発しました。イシガイ類は淡水性の二枚貝です。この生物に着目するのは、氾濫原環境の指標生物として有効性が指摘されているからです。


 以下に図示した評価プロトコルに則って総合評価マップを作成し、保全すべきエリアや、河道掘削(※1)による氾濫原環境創出効果が高いと見込まれるエリアを抽出します。例えば、評価Aは、現状で水域があり、モデルから導かれるイシガイ類の生息可能性も高い場所であることから、保全の候補地となります。評価Bは、モデルの評価値がやや低い、つまりここでは冠水頻度がやや低いということを意味するので、河道掘削を行なって地盤面を少し下げることにより、改善が期待されます。評価A’は水域を造成することで、イシガイ類の好適な生息場を新たに創出できる可能性が高い場所です。

本研究の詳細は、以下の論文を参照してください。



永山滋也・原田守啓・萱場祐一 (2014) イシガイ類を指標生物としたセグメント2における氾濫原環境の評価手法の開発:木曽川を例として.応用生態工学17(1): 29-40.

※1 河道掘削(高水敷掘削、低水路拡幅)は、全国の主要河川において、河積を増大させる治水目的で頻繁に実施されている。掘削によって形成される低い地盤面は、増水した河川水が冠水し易い場となる。そのため、河道掘削は氾濫原的な環境の創出・再生と親和的な側面を持っている。


永山 滋也

(国研)土木研究所 自然共生研究センター

氾濫原環境評価のプロトコルと
保全・再生適正地の抽出への活用
木曽川における総合評価マップの例: