実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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北上川水系砂鉄川(岩手県南部)における多自然型川づくり事業

 砂鉄川におけるショートカット区間の出現と修復工法の導入

北上川水系左支川である砂鉄川は流域面積375.1 km2を有し、流路延長46 kmの1級河川です。北上川合流部に近い門崎地区では、平成14年7月に台風6号による甚大な洪水被害が発生したため(写真-1参照)、砂鉄川緊急治水対策事業がすすみ、平成17年8月に概成しています。この事業により、蛇行区間1km(河床勾配1/885)は直線化され、写真-1右に示す600 mの新たなショートカット区間(河床勾配1/500)が出現しました。このショートカットによるインパクトが及ぼす影響を把握するために魚類調査と物理環境調査が行われ、ショートカット区間では自然状態の保持された区間(対照区)に比べ魚類の種数、生息密度ともに少ないこと、水際部の生息密度が流芯部に比べ顕著に大きいことが分かりました(東北地方整備局,2005;萱場ら,2005)。こうした結果を踏まえ、砂鉄川ショートカット区間では水際の流速を低下させる工法を導入し、自然環境の修復を取り組みました。
■ 写真-1 ,右:平成16年3月の事業進捗状況)
(国土交通省東北地方整備局岩手河川国道事務所,2005)

 修復工法の概要

 自然共生研究センターでは、実験河川施設を用いることにより水際植物が果たす流速低減や遮蔽といった機能が魚類生息場所として果たす役割について研究してきました(河口,2003;独立行政法人土木研究所自然共生研究センター,2005)。木杭群の設置によっても水際植物のある程度の代替機能があることが確認されています(独立行政法人土木研究所自然共生研究センター,2005)。

 これらを踏まえ、東北地方整備局岩手河川国道事務所と相談の結果、砂鉄川ショートカット区間のうち約300mの区間(写真-2参照)においては、水際部への木杭群の設置と水際植物の導入による修復を試みることになりました。当センターでは、水際の流速が魚類の生息に適切になるよう施工上必要な木杭群の密度および範囲についても、水理シミュレーション(図-1参照)による検討を重ねることにより、科学的予測に基づいた効果的な事業の実施を提案しました。

 さらに、このような事例が今後の川づくりに活かされていくためには、科学的なアプローチによる事後評価も欠かせません。当センターでは実験河川において、木杭群の科学的データの取得に必要な実験区と、比較対照区(比較の基準となる何も実施しない区間)を設置し、事業を行う岩手河川国道事務所と連携しながら実際の川づくりをすすめています。今後は現地河川の継続的なモニタリングを実施しながら、実験河川で取得した科学的データーを解析し、多自然型川づくりの効果を実証していきます。

■ 写真-2 砂鉄川多自然型川づくり事業実施区間の様子
(左:下流部瀞区間,右:上流部瀬区間)
■ 図-1 水理シュミレーションにより得られた砂鉄川ショートカット区間における流速分布
(上:木杭群および植物導入後,下:木杭群および植物導入前)
参考文献:
国土交通省東北地方整備局岩手河川国道事務所:IWATE2004‐平成16年度国土交通省東北地方整備局岩手河川国道事務所事業概要‐,38p.,2005.
萱場祐一・吉田桂治・田村秀夫・剣持浩高・高木茂知・林尚:水際における生息場所タイプと魚類の生息分布‐砂鉄川における現地調査結果から‐,河川技術論文集,第11巻,pp.31-34,2005.
河口洋一:水辺の植物が河川性魚類の生態に及ぼす影響,海洋と生物,Vol.25,No.6,pp.452-459,2003.
独立行政法人土木研究所自然共生研究センター:自然共生研究センター活動レポート‐平成15年度の成果から‐,17p.,2005.
東北地方整備局:砂鉄川におけるショートカットによるインパクト・レスポンスに関する検討,9p.,2005.


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