実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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特集 実験池
水草の機能を活かす
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水草、なかでも沈水植物は水をきれいにし、生き物の住みかとして機能します。これらの機能を活用して、湖沼や池の水環境を改善する取り組みが始まっています。、河岸、水際域を保全・修復する際の留意点を提示し、護岸工法さらには修復工法の開発に必要な知見を確立しています。水草の自然再生も国内外で進められています。


≪水草は、池の水を浄化し、小さな魚の隠れ家として機能します≫
報告:担当研究員 中村圭吾
(独)土木研究所 水環境研究グループ河川生態チーム 主任研究員
(水草の水質浄化機能を調べる)
■方法 
写真1 実験池            写真2 クロモ

写真3 水草の有無による透明度の違い
自然共生研究センター内の実験池4つを用いて、沈水植物の有無による水質や生物の違いを観測しました(写真1)。実験池は、長径が50m、短径が30mのだ円形で、水深は1mあります。この池は、自然状態で沈水植物のクロモが優占して生える特徴があります(写真2)。そこで、池底が土の池4つを使用して、2つはクロモを生やしたまま、もう2つはクロモを刈り取るという作業を行いました。実験は2002年9月10日に開始して、3週間継続しました。この3週間の間、水質や動物プランクトン・植物プランクトンを調査しました(写真3)。3週間後に、池の底に住む底生生物とクロモの量を測定しました。クロモの量は池全体に対するクロモが占める容積の百分率(PVIと言います)として求めました。

■結果
水草が、池の30%程度占めると水が透明になる

図1 水草の容積割合と水質
クロモを生やしたままの池のクロモの割合は、84%と38%でした。一方、クロモを刈り取った池のクロモの割合も刈り取ってから再び生長したため、10%と3%となっていました。クロモの割合といくつかの水質指標の平均値を図1 に示します。この図から分かることは、クロモの割合が3%よりも10%、と増えるにしたがって水質(chl.a、濁度、COD)が改善していることです。しかし、10%と38%の差は大きいものの、38%と84%の差はそれほどでもないことが分かります。つまり、水草の割合が30%程度となると十分水質が改善され、それ以上は増えてもあまり変わらないということが分かります。
応用
池、調整池、ワンドを作るときに30%程度は水草が生えるようにする
この実験の結果から、ある程度水草が生長できる場所を確保してあげると比較的水質の良い状態が維持できることが分かります。例えば池や調整池を造成する場合に、水質にもよりますが、例えば水草が生えやすい30cm〜100cm程度の水深の場所を3割程度確保してあげることにします。そうすることによって水草が3割程度の面積を占め、水質が保たれる可能性があります。

(小さな魚類の隠れ家としての水草)
■方法1 
写真4 人工水草            写真5 隔離水界実験

図2 水草の有無による遊泳魚の生存個体数
水草は、水質浄化だけでなく、さまざまな生物の隠れ家となると言われていますが、その機能についてはよく知られていません。そこで、実験池と水槽を使用して、隠れ家としての機能を検証しました。実験池では、食う側(ナマズ)と食われる側(キンギョ)の関係に水草がどのような影響を与えるか写真4のような隔離水界を使用して実験しました。実験は、2006年10月12日に開始し、データは1 1月16日(35日後)に取得しました。使用した隔離水界は2m×2m×0.5m(水深)で、水草の有無とナマズの有無によって4つの組み合わせとしました。生物の実験では偶然による結果の差も考えられるので、結果の確からしさを高めるために、この4つの組み合わせを5つセットし、計20ケの隔離水界を使用しました。キンギョはすべてに15個体入っています(平均標準体長44mm)。水草は人工水草を利用し、面積被度は50%、ナマズを入れる場合は隔離水界当たり1個体(平均標準体長291mm)としました。
■結果1
水草の隠れ家としての機能が示唆されました
実験開始35日後にナマズ有りかつ水草無しの隔離水界におけるキンギョは15から7.5個体と最も減少していました(図2: ただし、ナマズの死亡などにより反復n=2となり、統計的には不十分)。一方、ナマズ有りかつ水草有りの隔離水界のキンギョは15から10.6個体(n=5)となりました(図2)。したがって、水草はナマズのキンギョに対する捕食圧を下げる機能、つまり水草の隠れ家(避難場)としての機能を示唆した結果となりました。

■方法2
写真6 水槽実験


図3 水草の有無による生存個体数の差
つぎに、水草の隠れ家としての機能が、フナなどの遊泳魚と底部に生息するヨシノボリなどの底生魚によって異なるのか簡単な水槽実験により調べてみました。実験に使用した水槽は大きさ120cm幅×50cm奥行×60cm高で、水槽の中央部には仕切り板を作成し、左側を人工水草なし、右側を人工水草ありの空間に区切ってあります(写真6)。この水槽の左右に、それぞれ捕食者であるナマズ1個体、餌魚となるキンギョ5個体およびヨシノボリ5個体を投入し、残存数を2週間前後計測しました。この実験を5回繰り返し、水草の有無によるキンギョとヨシノボリの残存数を比較しました。
結果2
底生魚の方が食べられにくい?
左右どちらかのキンギョあるいはヨシノボリがいなくなった段階を終了(4回目のみナマズの死亡により17日目に終了)として、5回の実験結果を図3に示します。全体としては、ヨシノボリがキンギョよりも残っている、水草があるほうがキンギョ、ヨシノボリとも残っている個体が多い、と読めます。ただし、統計的には、水草無しではキンギョとヨシノボリの残存個体に有意差はなく、水草有りでは、有意差があるという結果となりました。この結果からだと、水草は底生魚にとってより避難場としての効果が高い、ということになりますが、簡単な実験結果なので、この解釈には注意が必要でしょう。

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