実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

English サイトマップ お問い合わせ
独立行政法人 土木研究所 自然共生研究センター サイト内検索


特集 中小河川の維持管理を巡って‐植物の繁茂の抑制と川の断面形状‐
川の横断面形状は、
維持管理に大きな影響を与えます。
ARRCNEWS13のPDFはコチラ

平成22年に改訂された「中小河川に関する河道計画の技術基準」(以下、技術基準)の中で、河積の確保には原則として川幅を広くすること(以下、拡幅)が明示されました。しかし、単純な拡幅は、河床が平坦化し流速や水深が一定となり、魚や昆虫など水生生物のすみ家に影響を与えるだけでなく、河床全体に植物が生え易くなることで維持管理の手間が増えてしまいます。
河川管理者にとって維持管理を軽減するためには、拡幅時にどのような工夫が求められるのでしょうか?


≪横断面形状を工夫することで、維持管理が軽減化される可能性が高まることが分かりました。 ≫
報告:担当研究員 大石哲也
(独)土木研究所 自然共生研究センター
(維持管理の現状を調べ、軽減化の方法を探る)
■方法 







川の横断面形状の違いと現状の河川維持管理の実態を調査し、拡幅後の維持管理の負担を軽減化する横断面形状について検討しました。まず、岐阜県の河川管理者に維持管理の実態についてアンケートを実施しました。河川ごとに、客観情報として@草本・木本をどの程度の頻度で刈り取っているか、A刈り取りの主体は誰か、B土砂除去をどの程度の頻度で行っているか、主観情報としてC人々の利用が多いか、D河川管理者として維持管理がうまくいっていると感じているかについて回答してもらいました。次に、アンケートで取りあげられた河川のうち、31河川(63箇所)で調査し(図1)、川の横断面形状から河道のタイプを分類し、河道タイプと維持管理の容易さとの関係について検討を行いました。河道タイプ(図2)は、景観特性別に巨礫が目立つ「巨礫残留型」、岩盤が露出した「平岩川型」、河床に砂州などが存在し護岸拘束のない川幅の広い「バー型」、対照的に護岸拘束された川幅の狭い「拘束バー型」、人工的に陸地部を設けた「テラス型」、水面幅と川幅がほぼ同じで河床が見え難い「平水型」としました。
■結果
河道タイプによって
維持管理のし易さが異なっていた
アンケート結果から(図3)、@については、バー型、テラス型の河川で年1回以上の草刈りが行なわれていました。Aについては、全ての河道タイプで約65%以上がボランティア(無償で実施)と自治会(行政からの助成がある)でした。とくに、テラス型はボランティアの割合が高くなっていました。Bについては、巨礫残留型、テラス型、平水型の70%以上が未実施であり、平岩川型、バー型、拘束バー型の60%以上が適宜土砂除去を行っていました。C、Dについては各河道タイプとも、利用の多い河川と維持管理のうまくいっている河川の割合が同程度となっており、この傾向はバー型、テラス型で顕著でした。

■考察
維持管理がうまくいっているとの回答は、バー型とテラス型で多く見られました。中小河川の川づくりでは、バー型のような比較的大きな河川よりもテラス型の方が参考になる点が多いと考えられます。以下では、テラス型の河川において、維持管理がうまくいっていると河川管理者が考えている理由について検討してみます。 テラス型は、拘束バー型、平岩川型、平水型に陸地部を設けた形をしています。この陸地部を設けたことで、住民が地域の共有スペースとして利用している可能性が高いことや、ボランティアによる草刈りやその頻度も高いことから、川へ対する住民の関与が強く考えられます。つまり、河川という空間が住民の利用し易いように整備されたことで、川に対する関心が高まり、維持管理への協力を得られたのではないかと考えられます。今回の結果から、拡幅後の維持管理の負担を軽減化するには、住民の利用を高めるように陸地部を設けるなどし、横断面形状を工夫することが重要と考えられます。

(横断面形状を工夫し維持管理の軽減化に活かす)
■方法 

横断面形状の違いや草刈りの有無が植生変化に与える影響を明らかにすることで、維持管理を軽減させるための適切な方法について検討しました。具体的には、2011年4月から11月にかけて、異なる横断面形状を造成し、みお筋部、陸地部の植生変化を観察しました(図4)。みお筋部では、断面積を一定にして水面幅と水深を、陸地部では水面との高さの差(比高)を変化させています。また、維持管理の実態に合わせ、出水期の夏前に1回の草刈りを実施しました(陸地部のみ)。

     



■結果1
水深が小さいとみお筋部にツルヨシが増加した

みお筋部の水面幅が広く水深が小さいと、ツルヨシの占める割合が高くなりました。経年変化をみても、1年目で20%、2年目になると40%以上となり、ツルヨシが拡大する傾向にありました(図5)。また、みお筋部へのツルヨシの侵入を観察すると、水際域から徐々にみお筋部中央へと拡大していました。



■結果2
陸地部では、草刈りの有無や比高の違いにより植物相が異なっていた

比高に係わらず、草刈りがある場合の方が1年生草本の占める割合が高い結果となりました。この傾向は1年目と2年目で違いはありませんでした。比高については、比高の中・大と比較し、比高の小では、1年生草本の占める割合が高い結果となりました。草刈りの有無と同様に、1年目と2年目で違いはありませんでした。また、比高が中・大では、凡例区分の各割合が同じような傾向を示していました。一方で、比高が小では、草刈り無しの場合で1年目にヤナギの侵入が確認され(写真1)、2年目にヤナギの面積が拡大していました。

考察
今回の実験から、断面形状と草刈りの有無は、植物相に影響を及ぼすことが分かりました。維持管理上好ましくない現象として、陸地部にヤナギが、みお筋部にツルヨシが生育することがあげられます。このような場所に植物が生育する理由は、植物の生活環や生理的特性から説明が可能ではないかと考えられます。ヤナギでは、種子の散布時期が3月から6月までなので、この時期に「湿って、明るい環境」が存在すると、ヤナギが定着する可能性が高くなります。 また、陸域に生育する植物は、根に供給される酸素が低下すると、生育が制限されることが知られています。水深が大きくなるほど、根の周りが低酸素状態となるため、水深の大きい横断面形状によりツルヨシの生育を抑制していた可能性が高いと考えられます。したがって、維持管理の軽減化をはかるためには、みお筋部の水深を小さくし過ぎず、陸地部を低くし過ぎない横断面形状とすることが大切です。

(今後の維持管理と横断面形状の設定へ向けて)
川の営力(土壌侵食、土砂運搬、土砂堆積などの物理的作用)を活かす際には、どの程度の営力がその川には存在するかを考えることが重要です。水と土砂によって川の形はつくられますから、これらの動態を理解することが川の営力を読むことに繋がります。川幅を拡げた際に、川の営力が弱いと、拡幅した箇所に土砂を留め易く、みお筋が不明瞭になります。その結果として、川の中に植物が旺盛に繁茂し易くなるわけです。このことは、洪水時に危険性が高まるだけでなく、維持管理費を増大させてしまいます。そのため、川の営力が弱いところで川幅を拡げる際には、川の形をある程度作り込んでおいて、改修後の初期の段階で好ましくない植物が繁茂することを避けることが良いでしょう。どのような植物がリスク要因となるかは、流域の条件によって異なりますが、今後の研究の中でリスクの少ない断面形状について1つずつ明らかにしていきたいと思います。

PAGETOP↑
国立研究開発法人 土木研究所
自然共生研究センター

〒501-6021 岐阜県各務原市川島笠田町官有地無番地
TEL : 0586-89-6036 FAX : 0586-89-6039
Copyright © PWRI, Japan. All Rights Reserved.