実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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氾濫原環境の劣化機構と修復に関する研究
危急生物イシガイ類の生息環境はどうして劣化するのか?
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■背景
一般的に、氾濫原とは河川が洪水時に氾濫(冠水)する領域のことを指します。陸域と水域の中間的な特徴を持つ氾濫原は、定期的に冠水する環境に適応した多様な生物相を育むという重要な機能(以下、氾濫原機能)を果たします。このため、最も生物多様性が高い景観要素の一つであり、生物多様性保全の観点から非常に重要です。現在、水生生物にとって氾濫原機能を果たしうる環境は、堤防内の河川近傍にわずかに残る半止水水域(ワンドなど)と、季節的に人為的な冠水域が形成される水田およびその影響を直接的に受ける農業用水路の2つにほぼ限られます。本研究では、これら2種類の氾濫原環境の水域を研究対象とし、その環境劣化機構と修復に関する様々な知見を蓄積しています。ここでは、氾濫原環境の指標種として、その多くが危急種(18種のうち13種が環境省のレッドリストに記載)である淡水二枚貝(イシガイ類)を用いています。

≪平野部のイシガイ類はワンドや排水路に生息しています≫


■研究1 水路では多様な流れや自然底質材料の維持が必要 
岐阜県関市の農業用排水路において、流水生イシガイの微生息環境を調査した結果、イシガイ類4種が同所に生息する自然度の高い水路では、4種それぞれが異なる生息環境を好んでいることが分かりました。特に、オバエボシガイとカタハガイは、それぞれ流心部と水際部に非常に多く見られました。このことは、横断方向の流れの多様性が、イシガイ類の種多様性の維持に重要であることを示しています。また、マツカサガイに注目した研究では、隣接した、底がコンクリートで覆われている水路(三面区)と底が砂や礫で構成される水路(二面区)を比較しています。ここでは、三面区では二面区に比べて、マツカサガイの生息密度が約4分の1と極端に小さいことが分かりました。三面区には二枚貝の生息に適した自然底質材料が少なく、また宿主となる魚(オイカワやメダカなど)の生息に適していないことがその理由として考えられます。したがって、流れの多様性を低下させ、砂や礫等の自然底質材料を減少させてしまう水路の整備はイシガイ類の生息環境を劣化させると考えられます。
■ 水路での微生息環境

■研究2 ワンドでは洪水による水や堆積物の入れ替えが必要
木曽川中流域に残存する計44箇所の孤立型ワンド(平水時に河川本流に接続しておらず、“たまり”とも呼称される)における調査の結果、イシガイ類(イシガイ、トンガリササノハガイ、ドブガイ属が含まれる)が確認されたのは、11箇所に限られ、その生息密度は極めて低いことが分かりました。生息水域では、非生息水域に比べて、周囲の樹木の高さが低く、泥の堆積が少なく、本流の水面との高低差が小さいことがわかりました。このような関係が見られる理由として、洪水の影響を受けにくい(高低差の大きい)水域では、堆積した泥が洗い流されることが少なく、また樹木が生長しやすい陸域に近い環境が維持されていることが考えられます。多変量解析という手法を用いて、水域が陸域化している程度を示す指標を計算すると、イシガイ類の生息密度と明瞭な負の関係を持つことが示されました。したがって、樹林化が促進されるような流況や河川地形の変化はイシガイ類の生息環境を劣化させると考えられます。
■ 木曽川の孤立型ワンド

■ ワンド単位での生息状況

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