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川と共に 水族館の展示を見て

 このごろ水族館へ行くと、いつも感心させられる。大きな水槽が横から、上から、下からとみることができたり、トンネルの側面から天井が水槽になっていたり、水槽が円筒形で全面から見ることができたりと見る者の好奇心をくすぐるような設計がなされている。また、水槽内にカメラを設置し、移動したり、ズームで拡大したりと楽しむことができる。さらには、浅い水槽に手を入れて生き物を直接触ることもできたり、パソコンによるクイズやビデオによる説明、顕微鏡でミクロな生き物を見たりなど、工夫がたくさんなされている。我々が子供の頃の水族館は、プールのような水槽と窓のような水槽が壁に並んでいた。説明もパネルによるシンプルなものが多かったように思う。その頃は、それで十分満足していたが、現在の展示技術と比較すると相当の違いがある。様々な分野の技術の進歩とその普及により我々の生活や社会も変わり、こうした水族館の展示も変わってきたのだ。

 また、水族館の展示の企画も変わってきたような気がする。昔は、珍しい種や様々な種を図鑑のように見ることが中心であったが、現在は、多分に生息環境や生物の相互関係を意識しているように思われる。少しでも自然の仕組みを表現し、環境を見せてくれているように思う。

 しかし、水族館の展示でいつも気になることがある。当然のことなのだが、見せることを優先するため、魚の密度を大きくしたり、無理な生息環境で飼育したりしている。凝縮した見せ方は、見る者にわかりやすいが、魚は相当のストレスを受けているのであろう。少しかわいそうな気がする。

 見せるということは、ありのままというより特徴を際立たせ、如何に見る者に意図をわかりやすく伝える、また見る者の気持ちを動かし、その気にさせるということが重要なことが多い。そのための工夫は、今後とも技術の進歩とともにどのように変化していくか楽しみである。様々な観点から、バランスのよい展示を期待する。


尾澤卓思

(独)土木研究所 水循環研究グループ 河川生態チーム

デンマークのシルケボーにある
水族館「アクア」の館内風景。