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川底は水生昆虫ハビタット

 水生昆虫といえば、多くの人が止水に生息するゲンゴロウやタガメ、そしてトンボの仲間を思い浮かべるでしょう。しかし河川の水生昆虫と限定すると、カゲロウにカワゲラ、トビゲラが代表的なものになります。河川の水生昆虫などの動物は、ほとんどが河床で生活しているため、総称して底生動物と呼ぶこともあります。

 底生動物にとっては、生息する河床が採餌、休息、移動など生活の場所であるとともに、流れや捕食者から身を守る場所でもあります。そこで河床の状態は底生動物にとって重要な環境要因になります。多くの底生動物は、生活史の発育段階に応じて、異なるミクロハビタットを利用しています。すべての種が特定の河床材料を選んで生息しているわけではありませんが、一方では生息場所が河床の状況と強く関係している生物群もあるのです。

 瀬や淵などの河川の形態は、流れの速さを変え、場所による河床材料の組成に変化をもたらすだけでなく、底生生物の餌となる藻類や植物体の生育や有機物の堆積にも影響を与えます。一つのビオトープに生息する底生動物は、時には千種類を越えることもあります。河川形態の不均質性は、河床に棲む小さな底生動物の多様性を保つ重要な一因でもあるのです。


清水高男

ユキシタカワゲラ属の1種。
渓流の礫につく珪藻類を主食とする。