実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q フィールドで観察しにくい川の現象を
わかりやすく伝えるには
どのような方法が考えられるでしょうか。
A 川を複数の視点で記録した映像を組み合わせ
出水の状況を展示空間に再現しました。


● はじめに

 河川生態系を理解するためには、現象を正しく認識することが重要です。しかし、出水のような現象を実際のフィールドで観察するには、大雨や台風の時期を待つ必要がある等、臨場のタイミングを合わせることが難しく、さらに、そのような状況下に身を置くには危険を伴うこと等から、実際の現場体験は非常に困難となります。本研究では映像を活用することによって河川の出水を展示空間に再現し、現象を効果的に伝達する方法について検討しました。
■ システム構成図
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● 映像の記録

 映像の記録は、自然共生研究センターの実験河川で行いました。撮影時には、出水実験を(平常流量0.1m3/s ⇔ ピーク流量1.5m3/s)実施し、クレーンを使った高所からの撮影、水際からの水面の撮影、そして、固定カメラによる水中の撮影を同時に行い、水辺から眺めているだけでは認識しにくい角度から出水を捉えました。そして、水が増えてピークになり、減少して元に戻るまでの出水の様子を記銀しました。例えば、水中の映像には、流される土砂の動き、出水が終わる頃に遡上し始める魚の姿、冠水した場所で草の上に避難する昆虫などが写っています。そのような映像を組み合わせ、出水の様子を再現する展示システムを構築しました。

● 展示システムの特徴

 出水レバーを引くことで、壁面の大きなスクリーンに写し出される出水ゲートの映像が変化して出水が始まります。床面のプラズマディスプレイ(PDP)には、「蛇行ゾーン」、「氾濫原ゾーン」、「ワンドゾーン」が写し出され、流量の変動(平常時→増水時→ピーク時→減少時)に対応した実際の映像が提供されます。それらに連動し、横に並べられたタッチパネル式の液晶ディスプレイ(LCD)には、水面、水中の変化、その辺りの生物の反応等を記録した映像が表示されます。また、簡易無線LANであるBluetoothを使用し、小型情報端末(PDA)では映像と対応した流速や水深のデータをリアルタイムで確認できるようになっています。これらのデータは全てコンピューターで管理され、映像はMPEG2で送出され各メディアに連動して表示されます。

● 児童の展示体験とその反応

 展示システムは、建設技術フェア2002lN中部(ナゴヤドーム)の学習エリアの「川の学習コーナー(約100m2)」で公開しました。期間中には名古屋市の小学校13校、4〜6年生の43クラス、約1400人の児童が展示スペースに訪れました。会場では、クラスの代表者が出水レバーを動かし出水ゲートが開くと同時に、児童は水が増え始める川の全体的な変化を眺めた後、それぞれ自分の見たい場所へと移動し、横のモニターで、その場所の水面のアップや水中の様子、流速や水深を確認していました。特に、水中のシーンを積極的に選択し、変化する川底や流れていく物をじっと観察する姿がよく見られました。発言に耳を傾けると、児童は観察を通して、流れに対する魚の反応、土砂の舞い上がり方、水の色の変化等など、多くのことを読みとっていることがわかりました。展示体験後のアンケート調査の結果では、今回の映像の展示の良い点をとして、「川の中が良くわかって面白い」、「いろんなところが見やすい」、「近づいて見ても危なくない」といったコメントが多くあげられました。

担当:吉冨 友恭


建設技術フェア「川の学習コーナー」での展示


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