実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 川の流量は底生藻の一次生産速度に
影響を与えますか?


A 流量だけでなく、
川の地形によっても変化する
可能性があります。


● 研究の背景と目的

  流量の増減は水深、流速等の物理量を変化させ、川底の底生藻の一次生産速度に影響を与えます。しかし、水が濁っている河川で流量が増加し、水深が大きくなると川底に到達する光量子量が減少します。また,底生藻が増加すると底生藻の層を太陽光が通過する間に光量子量が減少します。流量の増減に伴う一次生産速度に与える効果だけを抽出するには、これらの影響を補正した上で比較しなければなりません。本研究ではこの点を鑑み実験河川を用いて異なる流量下における一次生産速度を測定し、流量の大小と一次生産速度との関係を検討しました。

● 生産速度の推定方法と実験方法

  一次生産速度に示す実験河川Aの2地点間の溶存酸素濃度差から推定しました。実験は2005年8月13日〜9月1日(3週間)にかけて実施しました。流量は1週間毎に段階的に25L/s、150L/s、250L/sに増加させ、各1週間の最初の3日間を馴致期間、その後の3日間を実験期間として一次生産速度,光量子密度の測定、水中における光量子密度の減衰率の測定を行いました。また、実験開始前後で底生藻のChl-a量の測定を、実験終了時に流速・水深、流下時間の測定等必要な物理量の計測を行いました。なお、底生藻中の光量子密度の減衰については2004年に測定した結果を用いました。

● 結果と考察

  1日当たりの総生産量と呼吸量を見ると(単位はu、1日当たりで生産される酸素量を各流量3日間について示しています)、最も流量が大きい250L/sで生産速度が大きいように見えます(図1)。しかし、Chl-a量、光量子密度の時間変化、水深は各流量時で異なるため、一日当たり総生産量に基づく比較にはあまり意味がありません。そこで、各流量時のChl-aと底生藻を通過する間に減衰する光量子密度を考慮し、各流量時の光量子密度に対する一次総生産速度の関係を推定します(図2)。この結果、中間的な流量である150L/sで一次総生産速度が高く、より大きい流量・小さい流量では小さくなりました。流速の増減に伴う底生藻への栄養塩供給速度がこのような一次生産速度の変化と関連していると考えられます。
 ある幅を流れる流量の増減は、流量そのものの変化だけでなく、河床低下に伴う川幅の減少・瀬の消失等地形的変化によっても引き起こされます。本研究の結果は、瀬・淵等の川の地形的要素が流速や水深といった物理環境だけでなく、餌資源の供給を介して生物に影響を与える可能性を示しています。今後、流速と底生藻の生産速度との関連を詳細に調べ、得られた知見を流量管理・河道管理に活かしていくことが必要になります。


担当:萱場 祐一
各流量時の1日当たり総生産量・呼吸量
■各流量時の光量子密度と一次生産速度の関係


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