実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q アユの摂餌は、
河床付着膜にどのような役割を
果たしているのでしょうか?

A 餌資源としての質や光合成活性の向上、
景観の維持に寄与していると考えられます。


● 背景と目的

 河川流量が人為的に制御されている区間の河床では、しばしば、有機物やシルトの堆積や付着藻類の大量繁茂等が生じ、景観や生物の餌資源としての質の低下が指摘されています。その要因として、流量(流速)の減少や流況の平滑化があげられる他、生物生息場の変化に伴い生物相や生息密度が変化し、河床付着膜が生物に摂食されなくなったことがあげられます。自然共生研究センターでは、平成18年度より、生物の摂食によって河床の健全性が維持される機能に着目し、これを河川流量管理に反映するための研究を行っています。

● 方法

 代表的な藻類食者であるアユを対象に実験を行いました。実験河川にアユを放流した実験区とアユを放流しない対照区を設け、アユが選好する流速やそれより流速が小さい地点に、付着膜の状況が異なる3タイプの礫(A:藍藻優占、B:珪藻優占、C:糸状緑藻優占(Oedogonium sp. Spirogyra sp.等)、微細な土砂が付着)を設置し、アユの摂餌が河床付着膜に与える影響や摂餌行動に関する実験を行いました。

● 結果

 実験区では、設置したすべてのタイプの礫において摂餌が確認され、付着物が減少していました。特に礫Cにみられる糸状緑藻の繁茂や微細な土砂の付着は、アユの餌としてマイナス要因になると考えられていることから、摂餌によりこれらが除去されたことは、餌としての質の向上に寄与するものと考えられます(図1、写真1)。また、摂餌されることにより、老化した藻類や土粒子が除去され、薄くなった付着膜は、膜内部に栄養塩類や光が届きやすくなり、付着藻類の光合成活性が向上すると考えられます。これらについては、引き続き検証実験を行っています。
また、アユが選好し、定位する頻度が高い流速域では、各礫が摂餌されるまでの時間に差はみられませんでしたが、流速が遅い地点では、礫A及びBが、礫Cより先に摂餌されていました。このことから、アユの摂餌行動には、流速に対する選好性のみでなく、河床付着物の状態に対する選択性が関与している可能性が示唆されました。
 放流から数日後、実験区と対照区の河床全体は、視覚的にも異なっていました(写真2)。アユの摂餌は、景観の維持においても役割を果たしていることが確認されました。






担当:根岸 淳二郎
■図-1 アユの摂餌による礫C(糸状緑藻優占、微細な土砂が付着)の付着物量の変化
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■写真-1 アユによって摂餌された礫Cの状態(右側)
■写真-2 河床の視覚的な違い(上;アユ放流、下;放流なし)


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