実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q どのような“ワンド”や“たまり”が
希少性二枚貝の生息にとって適当なのでしょうか

A 樹木に覆われていない、
定期的に洪水で洗い流される環境が適しています。


● 背景

 “ワンド”や“たまり”とは、河川本流の近傍にみられる半止水環境を持つ水域のことを指します(写真-1)。このような半止水環境は、水生生物の生息環境として重要であると考えられています。しかしながら、どのようなワンドやたまりが、生物の生息にとって適当であるのかという定量的な評価はあまり行われていません。そこで、希少性二枚貝であるイシガイ目に属する仲間(イシガイ類)に注目して、その評価を行いました。イシガイ類は、稚貝の成長ステージで魚類に寄生することが不可欠であり、タナゴという魚は生きたイシガイ類を産卵に必要とします。さらに、少なくとも10年程度は生きるので、生息が確認された場においては、自然環境が長期間にわたり良好である可能性を示します。以前は、日本各地に普通に見られる生物でしたが、現在は国内種18種のうち13種が絶滅危慎種として指定されています。

● 成果

 ここで紹介する研究成果は、木曽川中流域に残存する計44箇所のたまり(平水時に河川本流に接続していない)における野外調査に基づいています。イシガイ類(イシガイ、トンガリササノハガイ、ドブガイの三種が含まれる)が確認されたのは、11箇所に限られ、その生息密度は極めて低いことが分かりました(図-1)。生息箇所では、非生息箇所に比べて、周囲の樹木の高さが低く、泥の堆積が少なく、本流の水面との高低差が小さいことがわかりました(図-2)。物理環境の間にこのような関係が見られる理由として、洪水の影響を受けにくい(高低差の大きい)箇所では、堆積した泥が洗い流されることが少なく、また樹木が成長しやすい陸域に近い環境が形成されていることが考えられます。多変量解析という手法を用いて、水域が陸域化している程度を示す指標を計算すると、イシガイ類の生息密度と明瞭な負の関係を持つことが示されました(図-3)。これらのことから、洪水で定期的に冠水するような環境の維持が、イシガイ類の生息にとって重要であることが示唆されました。


担当:根岸 淳二郎
                 
■写真-1 木曽川にみられるワンドやたまり
■図-1 生息箇所の割合と生息密度
■図-2 生息箇所と非生息箇所の環境の違い
■図-3 陸域化の程度と生息密度の関係


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