実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 土砂還元は河川の一次生産を
どのように変化させるのでしょうか?



A 一次生産速度が低下する傾向を
確認しました。

● 背景と目的

 ダム下流における環境改善を目的として、ダムに堆積した砂を下流に仮置きし、これを流下させて下流河川に還元する「土砂還元」が幾つかのダムで実施されています。土砂還元を実施した際の生物群集については底生動物を中心に研究が実施されつつありますが、アユの餌となる付着藻類の生産(一次生産)の変化については、研究報告がありませんでした。本研究では、実験河川に砂を供給して土砂還元を模した状態を再現し、一次生産速度を測定して、その実態を明らかにしました。

● 方法

 実験は平成21年8月〜9月に行いました。大礫を主たる河床の構成材料とする実験河川Bの上流区間(河床勾配1/200、川底幅2m、長さ100m)において流量200L/sを流下させ、付着藻類が十分繁茂した状態で一次生産速度を推定しました(砂投入前)。次に、同区間の上流に設置してある土砂供給区間に砂(<2mm)を敷設して流水により下流区間に砂を掃流状態で供給し(写真1)、実験区間における砂被度(コドラートに占める砂の面積割合)が20〜40%となった状態で再度一次生産速度を推定しました(砂投入後、左ページ写真)。なお、一次生産速度は実験区間の上流・下流区間における溶存酸素濃度の変化に基づき推定しています。

● 結果と考察

 砂投入前、砂投入後の日当たり一次生産量及び生態系の日当たり呼吸量を図に示しました(図1)。砂投入前の日当たり一次生産量はおよそ10(O2・g・m-2・day-1)、日当たり呼吸量は20〜30(O2・g・m-2・day-1)を示し、過去に実施した実験河川における測定値と同程度、もしくは、これを上回る結果となりました。一方、砂投入後は、日当たり一次生産量はおよそ4(O2・g・m-2・day-1)と40%程度まで減少し、日当たり呼吸量は1(O2・g・m-2・day-1)と3〜5%まで減少しました。このように、砂の投入は河床における有機物代謝を抑制し、餌資源の供給速度を減少させる傾向が確認できました。今後、掃流砂量と一次生産速度との関係を量的に評価し、土砂還元の効果を河川生態系といった観点から明確にしていく予定です。


担当:萱場 祐一
写真1 土砂投入状況(上)と実験区の状況(下)
図1 砂投入前後の一次生産速度(G.P.)と生態系呼吸速度(E.R.)
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