実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q タナゴ類が棲める水路は
どのような環境でしょうか?



A 二枚貝と植物を育むことのできる
水路環境が大切です。

● 背景と目的

 人間活動の中心である平野部のほとんどは、本来、川が増水すると水に浸かる氾濫原でした。そこには幾筋もの小川や池などがあり、流れの急な大きな川とは異なる生物相が形成されていたと考えられます。しかし、私達が家や道路を作ったり、それを守るために堤防を築いたりして川の水が溢れないようにしてきたため、氾濫原生物の棲み場所は縮小してきました。それでも、水田や農業用の水路が氾濫原生物の棲み場所として機能していましたが、それさえも現在では、水路のコンクリート化などにより機能を失いつつあります(写真1)。ここでは、氾濫原生物の代表としてタナゴ類に着目し、彼らの生息条件から望ましい水路環境について考察します。

● 方法

 岐阜県関市の4地域13水路を調査対象としました(写真1)。各水路に6〜16mの調査サイトを2つずつ設定し、魚類と二枚貝の採捕、物理環境(水深、流速、河床材料、河岸・水中植生の被覆率)の測定を行いました。タナゴ類は、二枚貝の中に卵を産み付けるため、二枚貝への依存度が強い魚類です。そこで、二枚貝の採捕も行い、検討材料としました。また一般に、魚類は季節的(特に冬)に生息場の好みを変えます。そのため、特定の季節だけを見ても、その魚類が生活し続けるために必要な環境を知るには不十分です。そこで、調査は秋(9月)と冬(2月)にわたって行いました。

● 結果とまとめ

 秋のタナゴ類の生息量は、どの物理環境よりも二枚貝の生息量と強い正の関係を持ち(図2)、それに加えて冬には、岸際や水中の植生による被覆率とより強い正の関係を持つことが分かりました(図3)。これらの結果は、タナゴ類の生息条件として、二枚貝が生息できる環境が重要であること、そして、特に冬においては、身を隠すための“カバー”となる水中や岸際の植物が重要であることを意味しています。私達の以前の研究からは、二枚貝の生息条件として、水路河床の土砂の重要性も示されています。以上のことから、タナゴ類が季節を通して生活していくためには、@水路河床をコンクリートで固めず土砂を維持し、二枚貝の生息条件を整えること、A特に岸際の植生が繁茂できるよう、水路側壁の構造または水路幅に格別の配慮を払うことが必要であると提言できます。また、本研究からは、タナゴ類が二枚貝に直接依存する産卵期(一般に春)以外の秋において、タナゴ類の生息量が二枚貝の生息量によって説明されたことから、ほぼ1年を通して、二枚貝がタナゴ類の生息を示す指標となることが分かりました。


担当:永山 滋也
写真1 調査地に含まれるタイプの異なる水路
図2 秋におけるタナゴ類と二枚貝の生息量の関係
※非かんがい期に入り、極端に水量が減少し、それに伴いタナゴ類も移出した水路
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図3 冬におけるタナゴ類の生息量と植生被覆率との関係
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