実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q シルトを多く含んだ藻類を
水生昆虫は食べるのでしょうか?


A シルトが堆積していても、平気で食べる種もいれば、
あまり食べない種もいるようです。


● 背景と目的

 河川では、土壌侵食や地滑り、河岸崩壊によって濁水が発生します。また、農業や林業、河川改修といった人間活動によっても生じます。このような濁水が河川を流れることで、川底の礫に付着している藻類(付着藻類)に、シルトなどの微細な無機物が堆積することがあります。河川に生息する魚や水生昆虫、巻貝などは、付着藻類を食べて成長しますが、シルトが堆積することで、餌として食べなくなる可能性があります。そこで本研究では、「濁水の影響を受けた付着藻類」と「影響を受けていない付着藻類」を2種類の水生昆虫に与えることで、「付着藻類と水生昆虫」の関係性に対する濁水の影響について検討を行いました。

● 方法

 水生昆虫に餌として与える2種類の付着藻類を用意するために、流水環境(流速0.5m/s)を再現可能な管路を用いました(図1)。管路内に、シルトを用いて浮遊土砂濃度を2段階に調整した河川水(清水:10mg/L、濁水:10,000mg/L)と、あらかじめ付着藻類を定着させたタイルを入れ、24時間にわたり水を循環させました。この2種類(清水曝露と濁水曝露)のタイルを水生昆虫との組み合わせ(水生昆虫なし、ヒラタカゲロウ、ヤマトビケラ)を変えて円形水槽に投入し、6種類の実験区を作りました(図1)。その後、円形水槽内の水を循環・回転させ、2週間後にタイルを回収し、付着藻類に含まれている無機物量(シルトの堆積量の指標)およびクロロフィルa量(付着藻類の現存量の指標)の測定を行いました。

● 結果と考察

 「清水に曝した藻類」と「濁水に曝した藻類」とで堆積していた無機物量は大きく変化していました(清水:3.6g/m²、濁水:12.8g/m²)。この2種類のタイルに対して、ヤマトビケラを水槽に入れた場合、何も入れない水槽よりも無機物量が減少し、クロロフィルa量も減少していました(図2)。この傾向は清水でも濁水でも同様でした(図2)。一方、ヒラタカゲロウを水槽に入れた場合、ヤマトビケラを入れた場合と同様に、清水に曝した付着藻類の無機物量とクロロフィルa量は減少していました。しかし、濁水に曝した付着藻類は、ヒラタカゲロウを入れた場合と何も入れなかった場合とで、無機物量とクロロフィルa量にあまり違いはありませんでした(図2)。以上の結果から、ヤマトビケラはシルトの堆積に関係なく、付着藻類を食べていたようですが、ヒラタカゲロウは、シルトが堆積していない付着藻類を食べる反面、シルトが多く堆積した付着藻類はあまり食べない可能性が示唆されました。

担当:森 照貴
写真1 本研究の実験手順と実験デザイン
図2 清水(SS濃度:10 mg/L)および濁水(10,000 mg/L)に曝した
     付着藻類(クロロフィルa量および無機物量)に対する
     水生昆虫の影響


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