実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 治水・環境・維持管理計画のサポートする
ための具体的な指標ツールはありますか?


A 川幅の設定や環境・維持管理の課題を
数量的に評価するツールなどがあります。


● 背景と目的

  治水・環境・維持管理に配慮した川づくりを行うためには、改修後に各々の項目でどのようなリスクが生じるかを事前に予測し管理計画を立案することが有益と考えられます。過去2カ年の活動レポートでは、川幅の設定が洪水時の河道の安定性や平常時の生物生息場に影響を与えていることや、河道計画時に生物生息場のポテンシャルを数量的に評価することの有用性について報告してきました。本年度は、過去の成果を組み合わせ、実際に川幅の異なる2つの河川を検討例に取り上げ、今後の川づくりにおける治水・環境・維持管理に配慮するための河道改修や管理計画の考え方について検討しました。

● 方法

  同一河川で川幅の異なるサイト1( 幅10m:左頁上)とサイト2(幅30 m:左頁下)の2 区間(1 区間200mで河床勾配1/100-1/200)の河道特性を把握するため、まず、改修計画時の川幅と対象サイト近傍の降雨量データからFr(フルード数)とBI0.2/Hを求め、図1にプロットし、河道景観のタイプを予測しました。次に、現地河道の地被状態、流れのタイプなどを調査し、各サイトの河道景観を把握しました。最後に、環境・維持管理の課題が2 つの河川でどのように異なるのかをシミュレーション解析(iRIC Nays2DH およびEvaTRiP)にて検討しました。なお、流量は約2カ年の実測データから洪水時35㎥/s、平常時0.5㎥/s を与えています。

● 結果と考察

  図1 から、サイト1 は平坦な河床か岩盤が生じ易い景観、サイト2 は砂州を有する景観の分布に位置していることが分かります。現地で確かめると、サイト1 は地形凹凸の変化の乏しい河床を有し、水域に平瀬が多く見られたため、平坦な河床の景観と考えられます( 図2 )。サイト2は、単列砂州の発達により陸域には裸地域や植生域が多く、水域に早瀬、平瀬、M 型の淵など多様な流れのタイプが見られ、砂州景観と考えられます。次に解析結果のうち洪水時における河床に働くせん断力の違いを図3 に示します。両サイトを比較するとサイト1では、120(N/㎡)前後の大きなせん断力が上流から下流にわたって分布しており、サイト2と比較すると河床低下が生じ易い河川と考えられます。図4 には、両サイトでの魚類生息ポテンシャルについて検討した例を示します。この例ではオイカワの成魚を対象に流速・水深・底質環境から推察される生息場ポテンシャルの適地が分かります。両サイトで水面幅に大きな違いはありませんが、サイト2 の方が洪水時に河床の凹凸が生じ、平常時に瀬・淵を伴う特性を有したため、最適値(1.0)付近の場所が多いと予測されました。このように、指標やツールを利用することは、治水・環境・維持管理で課題となりそうな項目や箇所の予測に繋がり、具体的な河道改修計画や管理計画を考える手助けになると考えられます。

担当:大石 哲也
       
図1 川幅から予想される河道景観
     (プロットは他河川で行ったデータを示す)
     (サイト1は平坦な河床か岩盤、サイト2 は砂州と予想)
図2 平常流量時における地被状態と流れのタイプの違い
図3 河床に働くせん断力の違い(Q=35㎥/s)
図4 魚類生息適地ポテンシャルの違い(オイカワ成魚、Q=0.5㎥/s)


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