ICHARMは、世界の水災害被害軽減に向けた基本的な活動方針として、「ICHARM使命」を制定しています。「ICHARM使命」においては、「革新的な研究」「効果的な能力育成」「効率的な情報ネットワーク」を活動の3本柱として規定しています。 この使命を果たすため、今後およそ10年先を見すえた活動計画である「ICHARM中長期プログラム」を制定し、さらに2年ごとに「ICHARM事業計画」を策定し、同じく2年ごとに開催する「ICHARM運営理事会」にて審査および採択を頂いています。なお、運営理事会では、過去2年間の活動報告である「Activity report」も報告しています
「ICHARM事業計画」に基づき、『革新的な研究』と『効果的な能力育成』を両輪としながら、世界中に『効率的な情報ネットワーク』を構築し、『現場での実践活動』を推進しています。 『革新的な研究』では、下記5項目の研究の柱を設定し、土木研究所予算だけでなく、ユネスコやアジア開発銀行(ADB)などの国際機関の資金により、「IFAS(統合洪水解析システム)」や「降雨流出氾濫モデル(RRIモデル)」などの洪水解析システムを用いた氾濫解析やそれを活用したリスク評価、およびリスクマネジメントに関する研究を実施しています。
『効果的な能力育成』では、主に途上国の実務者を対象とし、科学的・工学的知識に基づき課題を解決する能力、防災・減災施策を先導する指導者としての能力の育成を行っています。具体的には、独立行政法人国際協力機構(JICA)や政策研究大学院大学(GRIPS)等と連携した3年間の博士課程や1年間の修士課程、あるいは数週間の短期研修など多様な教育・研修プログラムを行っています。また研修後には、帰国研修生のためにセミナーなどを開催してフォローアップを行い、彼らが帰国後に抱えている課題を把握し、新たな研修コースを設立しています。これらの活動を通じて、個人の課題解決能力だけでなく、防災組織としての災害対応能力向上に貢献しています。
『効率的な情報ネットワーク』では、世界の研究者ネットワークを維持強化し、世界の大規模水災害に関する情報・経験の収集・解析・提供につなげると共に、ICHARMが事務局を務める国際洪水イニシアチブ(IFI)などの国際的ネットワークの構築、運営を通じて、各国での防災の主流化に取り組んでいます。IFIの活動においては、2016年に策定した「ジャカルタ宣言」に基づき、IFIパートナーと協働しながら、アジア各国において水災害リスクの軽減を目的とした「水と災害に関するプラットフォーム」構築のための活動に取り組むとともに、国連の特別セッションなどでその活動を紹介しています。
上記の『革新的な研究』で開発された技術、『効果的な能力育成』で行われた途上国政府職員などへの研修、および世界中に構築された『効率的な情報ネットワーク』を活用し、世界各地で『現場での実践活動』を行っています。
具体的には、アジア開発銀行(ADB)やユネスコと連携して、ICHARMで開発している各種水文モデル等の現地適応性を検証するために、様々な「現地実践プロジェクト」を行っています。例えば、ミャンマーにおいてはADBプロジェクト「都市管理に関する技術移転(TA-8456): パート II(洪水管理)」 を行い、パキスタンにおいてはユネスコプロジェクト「洪水予警報と管理能力の戦略的強化Strategic Strengthening of Flood」を実施し、いずれも現地の行政機関や研究機関と共同して様々な活動を行っています。