国連防災世界会議

会場となった神戸国際会議場とポートピアホテルは、
JR三ノ宮駅からポートライナーで約15分

セッションのオープニング挨拶で土研ユネスコセンターの
設立準備状況を説明する坂本理事長

約60名収容の会場は、2時間のセッションの
最後まで満席状態でした

1月18日 (火) から22日 (土) にかけて、神戸国際会議場及び隣接する神戸ポートピアホテルにおいて、国連防災世界会議が開催されました。ちょうど10年前の1月17日に発生した阪神淡路大震災の10周年を機に、その後の復興の足取りを振り返り、その教訓を今後に生かすというのが大きなテーマのひとつでした。おりしも昨年末に発生したスマトラ島沖地震とそれによるインド洋津波災害を受けて、早期警戒システムの構築をはじめとする津波災害防止に向けた国際連携や調整の仕組みづくりが緊急課題として浮上し、ご存知のとおり、マスコミでも連日のようにトップニュースで取り上げられるところとなりました。

ジュネーブに本部を置くISDR(International Strategy for Disaster Reduction:国際防災戦略)の事務局が主催したこの会議には、168カ国の政府機関、UNESCO (国連教育科学文化機関) やWMO (世界気象機関) はじめさまざまな国際機関及びNGO (非政府機関) 等から、計4000名を越える参加者が集まりました。会議は、会議成果案の採択に向けた協議を行う場である政府間会合、これを補足するための意見・情報交換の場であるテーマ別会合及び一般市民の参加も想定したパブリックフォーラムの3種類の会合が10以上の会場で同時並行的に進められました。

テーマ別会合のひとつとして土木研究所がUNESCO及びWMO他と共催したセッション「洪水と地すべりにかかる研究とリスク軽減のための新たな国際イニシアティブ」 (1月19日16:30〜18:30) では、国連大学ヒンケル学長の議事進行のもと、オープニングの挨拶でUNESCOの松浦事務局長、WMOのジェロー事務局長、京大防災研究所の井上所長とともに、坂本理事長が土研ユネスコセンターの設立に向けた準備状況等を紹介しました。またセッション前半の洪水に関するプレゼンテーションのひとつとして、寺川が「総合的な洪水リスク管理と土研ユネスコセンターの役割」と題して話題提供を行いました。

本セッションでは、各参加機関の支持を得て、洪水被害の防止・軽減のための国際機関横断的な取り組みである「国際洪水イニシアティブ (IFI:International Flood Initiative) 」の立ち上げが正式に宣言されました。ユネスコセンター設立推進本部の吉谷上席がプロジェクトの具体的な内容を議論するタスクフォースメンバーの一員として参画することとしており、今秋設立予定の土研ユネスコセンター (水災害・リスクマネジメント国際センター) は、研究活動の一環として本イニシアティブ推進の一翼を担う予定です。

また、同じくテーマ別会合として国土交通省河川局がWMO及びオーストラリア気象庁と共催したセッション「知識共有と教育研修を通じた総合的な洪水リスク管理」 (1月20日17:15〜19:15) では、オーストラリア気象庁スチュワート次長とともに寺川が共同議長を勤めました。7名のプレゼンテーションとディスカッションを踏まえ、セッションからの提言書の中に洪水災害軽減に向けた途上国への技術移転を図る上で、土研ユネスコセンターの研究・研修機能等を活用することが有効である旨盛り込まれました。

最終日の22日には、前日までの各会合での成果を受ける形で、会議の最終成果として「兵庫宣言」及び「兵庫行動枠組み」が取りまとめられ、各国が協調して災害防止・軽減に向けて戦略的に取り組んでいくべきであることが示されました。各国が「持続可能な開発と自国内の人々の生命と財産を守るための一義的な責任を有する」との認識のもとで、今後10年間で優先的に取り組むべき具体的な行動として以下の5項目が設定されています。

1) 防災を国、地方の優先課題に位置づけ、実行のための強力な制度基盤を確保する。
2)災害リスクを特定、評価、観測し、早期警報の仕組みを向上する。
3)すべてのレベルで防災文化を構築するため、知識、技術、教育を活用する。
4) 潜在的なリスク要因を軽減する。
5) 効果的な応急対応のための事前準備を強化する。

土研ユネスコセンターも、ここで挙げられている5項目のうち、特に第2、第3項の視点から、国際的な視野で「災害に強い国・コミュニティづくり」を進めるための具体的な貢献を目指します。


 
 


 
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