講演会概要
一般講演 第1部
10:05〜10:25
「2010年チリ地震による橋梁の被災調査と国際貢献」
構造物メンテナンス研究センター橋梁構造研究グループ 上席研究員 星隈 順一
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 2010年2月27日、チリ共和国のマウレ沖を震央とするマグニチュード8.8の巨大地震が発生し、南北約500kmに渡る非常に広い範囲で構造物の損壊や津波による被害が生じた。今回のチリ地震による大きな災害に対し、土木研究所は、(社)土木学会からの要請を受け、著者を(社)土木学会調査団の団員として現地に派遣した。現地では、地震による橋梁の被害調査とともに、被災した橋の特徴を踏まえ、日本ではどのような耐震対策がなされているかに関する様々な技術的な討議、情報交換をチリ公共事業省の関係者との間で実施した。本講演では、チリ地震による橋梁の被害の特徴について概説するとともに、2010年7月に改定されたチリの新しい道路橋の耐震設計基準の中に、日本のけたかかり長や落橋防止構造の規定が採り入れられたことについて報告する。

10:25〜10:45
「2010年7月16日の集中豪雨により広島県庄原市で発生した土砂災害(速報)」
つくば中央研究所土砂管理研究グループ火山・土石流チーム 主任研究員 山越 隆雄
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 2010年7月16日に広島県庄原市を襲った集中豪雨により、同時多発的に土砂災害が発生し、庄原市川北町を中心に全壊13戸、死者1名の被害が生じた(2010年8月3日広島県砂防課発表)。ここでは、土木研究所土砂管理研究グループ火山・土石流チームが、国土技術政策総合研究所危機管理技術研究センターとともにこれまでに実施してきた調査の結果について速報する。

10:45〜11:15
「パキスタン・インダス川の洪水」
水災害・リスクマネジメント国際センター水災害研究グループ 上席研究員 加本 実
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 7月下旬から8月、パキスタンは史上最悪のモンスーンに起因した洪水を経験した。被害の調査は現在も続いており、1千4百万人が被災し、1200人の死者、28万8千戸が全壊、半壊との報道がなされている。パキスタン気象庁の報告では、カイバル・パクトゥンクワ州で、7月最後の週、4日間雨が続き7月29日には、ペシャワールで24時間雨量274mmを記録した。カシミールのパキスタン領、ギルギット・バルティスタン州でも、異常な豪雨に見舞われ、広範な被害を受けた。その後、インダス川下流域に洪水が広がっている。国連などの国際機関、援助機関が緊急支援を開始し、日本の自衛隊も派遣された。発表者もUNESCO調査団に同行し、イスラマバードで、パキスタン政府と今後の協力について議論した。講演会ではパキスタン・インダス川洪水、現地の対応状況を紹介する。

11:15〜11:45
「期待が高まるUNESCO-ICHARMの国際貢献」
水災害・リスクマネジメント国際センター水災害研究グループ グループ長 田中 茂信
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 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は2006年3月に設立され5年目を迎えている。ICHARMは水災害を対象に据えたユネスコカテゴリー2の国際センターであり、近年の洪水災害の頻発にともない、国際社会からICHARMへの期待が高まってきている。この期待に応えるべく推進している,統合洪水解析システム(IFAS)、修士課程水災害リスクマネジメントコース、ADBと連携した地域技術支援プロジェクトなどの主な活動について紹介したい。

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一般講演 現場が求める技術基準類とその背景(防災分野)
13:00〜13:30
「多自然川づくりにおける河岸・水際部の計画と設計〜中小河川に関する河道計画の技術基準の考え方〜」
つくば中央研究所水環境研究グループ自然共生研究センター 上席研究員 萱場 祐一
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 平成20年3月「中小河川に関する河道計画の技術基準」が通知され、中小河川における河道計画の基本的な考え方が示された。また、平成22年8月には、本基準に河岸・水際部の計画・設計に関する考え方が追加され、多自然川づくりはより実践的な段階へと推移しつつある。本講演では、本基準の骨子を概説するとともに、特に、河岸・水際部の計画・設計について、その考え方や背景を土木研究所で実施した研究事例を踏まえ解説する。

13:30〜14:00
「ダムからの土砂供給に向けた技術開発」
つくば中央研究所水工研究グループ グループ長 安部 友則
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 近年、全国で海岸の侵食が進行し、ダム下流河川でのアーマー化、中流域での河床低下や局所洗掘、澪筋の固定化による植生帯の形成などの治水及び環境上の課題が生じている一方、ダムにおいては土砂の堆積が進行している。これらの課題を解決するには、水系全体での土砂移動の不均一性を是正していく必要がある。
 そこで、土木研究所では、ダムからの土砂供給に向けた多くの研究を進めている。ここでは、それらの研究成果等のうち、すぐに現場でも利用していただけそうな、土砂供給シミュレーション手法、河岸侵食等の河道状態診断手法、濁水対策用天然凝集材を紹介する。

14:00〜14:30
「河川ポンプ設備の信頼性と経済性を考慮したマネジメント手法」
つくば中央研究所技術推進本部先端技術チーム 主席研究員 藤野 健一
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 本研究は、河川ポンプ設備を対象として、LCCと信頼性評価に基づき、効率的な維持管理手法を提案するものである。これまでの機械設備の維持管理では、経年変化データを考慮した時間基準保全が主流であったが、長期的かつ適切な維持管理を行うために、さらにLCCや信頼性を考慮し、信頼性評価を加味した効率的な維持管理手法およびそれに必要なデータベースを提案した。併せて、傾向管理に基づく状態監視保全の導入検討を行った。

14:30〜14:50
「研究成果の普及と社会還元」
つくば中央研究所技術推進本部 本部長 中村 敏一
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  土木研究所は、成果普及等を通じて社会に貢献していく使命が課せられている。本講演では、土木研究所がこのような使命を果たしていくため、研究成果を知的財産としてどのように管理・活用しているかについて、昨年度当初に制定した知的財産ポリシーを中心とする知的創造サイクルの概要等を紹介するとともに、重点的に普及を進めている技術や普及活動の概要等を紹介し、その結果としてどの程度の経済効果等を社会に還元しているかについて述べる。

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特別公演
15:00〜16:00
「衛星開発と利用 〜宇宙から地球を見る〜」
独立行政法人宇宙航空研究開発機構 防災利用システム室 室長 滝口 太
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PROFILE  
略歴 1967年1月16日
大阪大学大学院基礎工学研究科 卒業
職歴 1992年 宇宙開発事業団(NASDA)入社 種子島宇宙センター勤務
1994年 通信放送衛星の開発に従事
1998年 地球観測衛星に開発に従事
2001年 内閣官房に出向
2004年 宇宙航空研究開発機構(JAXA)経営企画部勤務
2007年より現職
役職 防災利用システム室 室長
line  「はやぶさ」の帰還、日本人宇宙飛行士の活躍などにより、我が国の宇宙開発が脚光を浴びているが、インフラとしての宇宙利用に焦点を当て、安心・安全な社会に貢献していることを紹介する。
既に、気象衛星(ひまわり)、通信衛星(スカパー)、放送衛星(BS・WOWOW)、測位衛星(GPS)は、人工衛星の存在を感じさせないほど、生活に溶け込んで、社会の一部として機能し、国の事業ないしは民間事業として定着している。
 一方、JAXAは、新しい衛星利用を開拓するために、地球観測衛星の開発と運用を行うとともに、利用機関との連携を図っている。特に、国土管理分野における「だいち」の利用については、近年、国土地理院や農水省を始めとする多くの機関が利用を開始しており、国総研や土木研とも土砂災害における利用について研究を行っているところである。今後、国土の管理にとどまらず、気候変動などの地球規模課題の解決に対しても、衛星による地球観測が重要な役割を占めることとなる。
 今、システム輸出による新成長戦略が注目されているが、システムを支える基盤として、我が国の優れた国土管理技術や、国境を越えたアセスメント機能としての衛星観測技術がパッケージ化されて、我が国の総合技術力として、国の新政策に貢献できればと思う。
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一般講演 第3部
16:00〜16:30
「地盤の凍上被害とその対策 〜道路土工要鋼改訂のポイント〜」
寒地土木研究所寒地基礎技術研究グループ 上席研究員 西本 聡
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 寒冷地で冬期に発生する地盤の凍上現象は、道路路面やそれに付帯するのり面、ボックスカルバート、擁壁、排水構造物等のインフラに被害を及ぼすことが知られている。地盤の凍上現象は、技術者にとって扱いづらい分野の一つであり、調査・設計・施工・維持管理を通して、未対策あるいは対策不足が原因であると考えられる被害事例が数多く報告されている。本講演では、地盤の凍上被害とその対策の最新情報を紹介する。

16:30〜17:00
「道路盛土の耐震性向上の考え方」
つくば中央研究所材料地盤研究グループ土質・振動チーム 上席研究員 佐々木 哲也
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 2004年新潟県中越地震,2007年能登半島地震,2009年駿河湾を震源等する地震では,特に沢部を横断する山岳道路盛土で大規模な崩壊が生じ,長期間にわたり道路交通機能が失われた。本講演では、道路盛土の耐震性の向上のための土木研究所の取り組みと成果について紹介するとともに,今年度改訂された「道路土工−盛土工指針」における盛土の耐震性向上の考え方について紹介する。

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