土木研究所地質チームは、土木に関わる地質の調査、評価に関する研究を行っています。土木を学んだ人も地質を学んだ人も、なじみがない分野かと思います。ですが、100年前、内務省土木試験所(土木研究所の前身)の設立時から地質に関する部署が存在し、日本の土木構造物の建設、維持管理の基礎をずっと支え続けています。
地質チームは、道路、河川、ダムなど、様々な構造物を研究するチームと連携し、調査・研究や技術指導を行っています。また災害時にも現地調査を行い、研究に役立てています。
沖積地盤から固い岩盤まで、また地盤・岩盤の強度、透水性、斜面安定性、環境安全性、断層活動性、岩石材料としての適性など、多岐にわたる調査法・評価法の研究を実施しています。
道路のり面変状の技術指導
(2019年12月、岩手県久慈市)
活断層変位の現地調査
(2011年4月、福島県いわき市)
私は地学系の大学院修士課程を出て建設省土木研究所地質研究室(当時)に研究員として採用、7年目に九州に転勤し行政職として河川や道路事業を担当、11年目に地質チームに主任研究員として戻り、2年前に上席研究員になりました。
河川事業の現場では、もっと地質や地形の知識が堤防の安全性評価に役に立つのではないか、と感じていました。そんな疑問から研究所に戻ってから研究を提案し、取り組み始めました。洪水時に堤防近くの地盤で発生する漏水箇所の掘削調査では、行政職時代の知り合いなど多くの方々にお世話になりつつ研究を進め、新たな地盤調査機器も開発しました。現在その成果を「堤防周辺の透水性地盤の調査方法」としてまとめ、現場に恩返しをしようとしています。
またその頃、土壌汚染対策法が制定され、法適用外の岩石中に微量含まれている自然由来の重金属などが環境に影響があるのかどうか、多くの現場技術者が悩んでいました。適切な評価方法がないため、トンネル工事などで多額の対策費を投じざるを得ませんでした。研究所に戻ってこの問題に関する研究を先輩から引き継ぎ、大学、民間企業や研究所の方々と一緒に、調査・評価・対策法をマニュアルにまとめました。このマニュアルは現在全国の工事で参考にされているだけでなく、土壌汚染対策法の改正にも参考にされました。研究している時はそんな大きな仕事をしていると気づかず、ただ目の前にある現場の課題に向き合っていただけなのですが、今では自分の誇りです。
私には、“師匠”と勝手に呼ばせていただいている民間の技術者が何人かいらっしゃることも自慢の1つです。立場を超えておつきあいくださる方々との巡り会いに感謝しています。私も技術指導を通じて“師匠達”から学んだことを現場技術者や後輩に伝えていきつつ、日々勉強を続けています。
師匠から学んだはぎ取り標本作りを試す
出勤
メールなどの処理
1日100通近くメールが来ることがあり、打合せの日程がどんどん入ってきます。手帳にメモします。
手帳(5月は外部との打合せ20件、出張10日)
打合せ
発生土技術相談打合せ
発生土に含まれる自然由来の重金属についての相談。以前のアドバイスに基づいた試験の結果を評価します。
最近はWeb会議が多いです
昼食
打合せ
ダム技術相談打合せ
ダム建設に関する打合せ。ダムの構造設計、水理設計の専門家と一緒に話しを聞きます。
A3版で5cmもの厚さの資料が出てきます
資料作成等
原稿書きをしなくては・・・
なぜかいつも締め切りに追われています。研究員と雑談したりして、全然はかどりません・・・。もう帰ろう!
アイディアが出ることも
帰宅
宿泊先から現場へ
河川堤防基礎地盤の漏水調査
2泊3日で堤防基礎地盤の漏水調査です。バックホーで穴を掘ってもらい、掘削面を整形しながら観察し、どこから水が通ってきたか、土の移動があるかなど、詳しく観察・記録します。
河川堤防沿いで発生する地盤からの漏水現象については、意外にもこれまであまり調べられておらず、掘削調査では新発見がたくさんあります。
穴の底で語る私
昼食
現場撤収
飛行機
飛行機にたくさん乗ると、たまに珍しい光景に出会います。下の写真では飛行機の陰が雲に映っており、その周りに虹が見えます。
ブロッケン現象
帰宅