ダム貯水池・湖沼、河川、下水道等の性質の異なる水を幅広く扱う水質チームにおいて、私は主に、DNAに着目し、ミクロの視点から国土交通行政をサポートするような研究を行っています。
現在、分子生物学の急速な技術の発展により、ひと昔前までは不可能だったことが、実に手軽に行えるようになっています。DNAの塩基配列の解析は、一度の解析で、150億個分の塩基配列を解析することができ、
試料中に存在する細菌やプランクトン、ウイルス、環境中のDNAを網羅的に解析することが可能となりました。この技術を使って、ダム貯水池の効率的な水質の管理や水質改善、下水処理の高度化に関する研究を行っています。
ダム貯水池での採水
次世代シーケンサー
(大規模塩基配列解析装置)
この他にも、実験棟にはたくさんの分析機器があります。
私は、大学で博士課程まで進み、博士号を取得した後、国内の研究機関や大学でポスドクとして微生物を用いた水処理の研究経験を積みました。その後、土研での任期付研究員を経て、現在の採用に至りました。
土研と他の研究所・大学との大きな違いは、「研究の規模」と「行政との距離感」だと感じています。
研究者として、研究成果を論文にまとめること、そして、その論文が誰かに引用されることは、大きな喜びでもあり、社会貢献を実感できることだと思います。
それに加え、土研では、組織として大規模に研究をすることが多く、自分の研究成果が国の施策や基準に反映されることも多いです。自分一人の力ではできないことも、
多くの方々の力を借りて、大きな仕事として進めていくことができます。これも土研も魅力の一つだと思います。
フレックスタイム制を活用し、週に1度、大学で「微生物学」の講師をしています。何かを教えるためには、その何倍も勉強しなければならないので大変ですが、
普段あまり交流のない大学生と日常的に接する機会を得て、逆に刺激を受けることもあります。
また、外国人の研究者が多いのも、つくばの特徴です。いろいろな研究所の研究者達が集まって、国際交流も楽しめます。
起床
出勤
実験の進捗確認
実験室での打合せ。この日は、実験補助員さんにダム貯水池の水試料からDNAを抽出をしてもらっています。実験補助員さんの作業は、私よりも何倍も早くて正確です。
データ整理・資料、論文作成
執務室でのデスクワーク。論文執筆は、なるべく午前中の頭の冴えている時間帯を充てるようにしています。たった3行書くために、文献調査に半日費やすことも他の人には頼めない大事な仕事の一つです。
大体、いつも何かしらの締め切りに追われています。
昼食
昼休み、同僚と土研周辺のごみ拾いをすることも
研究打合せ
環境コンサルタント会社の方とダム貯水池の水質シミュレーションに関する業務の打合せ。 効率的に研究を進めるために、比較的大きな金額の発注をすることもあります。契約締結までのプロセスが長く、 なかなか大変ですが、他の研究所や大学ではあまり経験できないことだと思います。
行政対応
ダム貯水池の水質保全対策検討会に有識者として参加。ダム管理事務所が行った水質改善対策の評価、 今後の調査計画等をアドバイスして行政支援をしています。現場の生の声も聞けます。
帰宅