私は大学などに勤めた後、土研の専門研究員を経て職員となりました。私が所属する水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、 土研の水災害研究グループであると同時にユネスコ後援の国際センターでもあり、世界で頻発する洪水や土砂災害のリスクを軽減することを目標に研究・教育・国際ネットワーキング活動に取り組んでいます。 業務内容は、水災害の予測技術向上や被害軽減のための研究開発に加え、修士課程の研修生の研究指導、海外の政府関係者や国際機関との連携など多岐にわたります。 ICHARMには外国人研究者の同僚や留学生も在籍していますので、会議などもしばしば英語で行われオフィスの雰囲気も国際的です。
修士課程の研修生に対する授業風景
フィリピンで開催したワークショップの様子
ICHARMの業務の最も特徴的な点は、研究開発、評価・分析から社会実装まで、さらには人材育成も含めてすべて一貫して行っていることです。 例えばフィリピンなどの日本と同様に洪水が頻発している国において、自らが開発した洪水予測システムが現地で被害軽減のために役立てられることや自らが 分析した気候変動の影響が将来の現地適応策に繋がることなどは研究者としての大きなやりがいとなります。 さらに、ICHARMは現地政府機関との対話や国連などの国際機関との協働を通して持続可能な社会のためのガバナンス形成や現地実務者への能力開発にも取り組んでいるため、 自然災害や気候変動などの人類共通の課題にグローバルにチャレンジすることができると思います。
研究者として国際学会などで発表する機会はもちろんですが、その他にも国際会議に参加したり国際プロジェクトに携わったり海外で活躍する機会は多くあります。
私の場合は、世界気象機関(WMO)の専門家として登録されていることもあり、WMOやユネスコなどの国連機関の会合や連携プログラムに度々参加しています。
また国際協力機構(JICA)や世界銀行(WB)、アジア開発銀行(ADB)などの途上国に対する技術支援プロジェクトにも携わってきました。
ちなみに、新型コロナウィルスの感染拡大により海外出張の機会は無くなりましたが、それまでは海外出張が多かったため、休日はできるだけ家族との時間を優先させていました。
第16回地球観測に関する
政府間会合(GEO Week 2019)における
ショートレクチャー
出勤
水文モデルによる洪水氾濫解析
洪水氾濫の発生予測を目的とした水文解析モデルを作成しています。下図は台風等により洪水が度々発生しているフィリピンのカガヤン川流域の解析事例です。 開発した水文モデルは現地の政府関係者と十分に協議した上で洪水予測システムとして役立てられる予定です。
フィリピンのカガヤン川流域を
対象とした水文モデルの解析事例
昼食
修士課程研修生の研究指導
ICHARMでは、国際協力機構(JICA)および政策研究大学院大学(GRIPS)と連携して、主に途上国の実務者を対象とした修士課程と博士課程の指導を実施しており、 私は政策研究大学院大学の連携准教授として講義や研修生の研究指導を行っています。研修生は約1年での修士号の学位取得を目指し、自国の抱える水問題に関する研究テーマに取り組んでいます。 研修生を指導し、彼らが無事に学位を取得して帰国できたときは、大きなやりがいを感じられる瞬間の1つです。
修士課程研修生(ブラジル)の研究指導の様子
オンライン会議
最近はオンラインの打ち合わせやシンポジウムなどの機会が増えてきています。海外の実務者や研究者の方とのオンラインでの打ち合わせは相手国によっては時差の影響を受けますが、 以前より手軽に実施することができるようになりました。 写真はWMOのアジア地区水文アドバイザーや専門家による国際フォーラムの様子です。 フォーラムでは各国における水文業務の課題やニーズを共有し、国際的な枠組みによる改善策について議論しました。
WMOのオンラインフォーラムの様子
帰宅