土橋梁構造研究グループでは、橋の設計法や維持管理に関する研究を行っています。橋の老朽化が進む中、重大事故を未然に防ぐとともに、損傷が軽微な段階で計画的な補修等を実施して橋を長く安全に使っていくための技術開発に力を入れています。下の写真は、腐食損傷が著しく架け替えに至ったトラス橋から部分的に部材を切り出して、土木研究所が保有する試験機を用いて破壊実験を行った際の状況です。近年では、土木研究所のこれまでの研究成果や経験知などを実務での活用しやすいよう橋梁診断支援システムに集約するなど、DXに資する研究開発も行っています。
大型耐荷力試験機
実橋部材の破壊実験(写真上)
全国から収集した撤去橋梁部材(写真下)
橋梁診断支援AIシステム(タブレットに
システムを入れることで現場で使用可能)
土木研究所の魅力は、「研究がインフラの整備や管理の実務に直結している」という点ではないかと思います。実務における技術的な課題が解決されるよう、ニーズベースでの研究を行います。維持管理における不具合や災害による橋の被害が発生し管理者から要請があった場合には技術支援を行います。例えば、令和3年7月1日からの大雨で静岡県内の黄瀬川に架かる橋が洗掘により沈下しましたが、中部地方整備局、国土技術政策総合研究所とともに被災後すぐに現地入りし、被災状況調査と応急復旧に関する技術的助言を行いました。また、このような個別課題の対応の他に、国全体の観点から、橋の維持管理や更新等のあるべき姿を考え、国土交通本省等とも議論しながら必要な技術開発を行います。その他、技術基準類の作成の一部も担当しています。仕事は多岐にわたり大変な面はありますが、「仕事のやりがいの大きさ」も土木研究所の魅力と思います。
令和3年7月豪雨で橋脚が沈下した橋の復旧等に対する技術支援の実施
休日は、子供と公園で遊ぶことが多いです。 つくばは、比較的大きな公園が多いように思います。また、いろんな研究所があって、休日に一般公開しているところも多いので、近場でもいろいろ見に行くところがあります。
国土地理院の一般公開
出勤
研究課題(3次元FEM)の打合せ
土木研究所には、多数の大型の実験施設を所有しており、その一つに試験橋梁があります。過年度に試験橋梁を水平方向に載荷する実験を行いました。この実験は、地震等による水平力が橋に作用した際に、橋を構成する部材が受け持つ荷重分担や全体挙動を把握することを目的としたものです。ただし、載荷実験は橋が壊れるまで載荷できません。このため、再現解析を行い、おおよそ実験値と解析値が一致していることを確認した上で、解析により橋の壊れ方を含めた橋の全体挙動について打合せで確認しました。
土木研究所内の試験橋梁を用いた載荷試験による橋の挙動計測
解析結果を見ながら打合せ
昼食
共同研究(診断AI)の会議
土木研究所で実施する研究は、外部機関や有識者等との共同研究を行い進める場合があります。現在、CAESARで 力をいれている橋梁診断支援AIシステムの開発は、道路管理者、民間企業等との共同研究の体制の中で検討を進めています。診断は、なぜその診断結果に至ったのか理由が求められるため、橋梁診断支援AIシステムでは、エキスパートシステムを採用し、エキスパートシステムの条件分岐は、損傷の原因や進行順序を含むメカニズムを明確化した上で、共同研究者と合同で作成しています。
令和3年度末に橋梁診断支援AIシステムのver1.0が完成したため、共同研究の会議において、その内容や現場実証の結果、令和4年度以降の展望等を報告しました。
共同研究会議での説明の様子
橋梁診断支援AIシステムの損傷の進行程度の出力画面例
帰宅