実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 植物の種子は
水中でどのような
挙動を示すでしょうか?

A 外来種シナダレスズメガヤの種子は
砂と同様の速さで沈降します。


 植物には様々な種子散布の形式があります。例えばタンポポの種子には冠毛があり風によって散布されますが、その他にも水や動物、重力といった様々な方法で種子は移動し、分布の拡大を図ります。
 河川環境は出水の影響を受けやすいという特徴があるため、河川には水散布型の植物も多く存在します。実際、河辺の土壌の中には、多くの種子が蓄積されている事があります(土壌シードバンク)。しかし、種子が流水によってどのような挙動を示すかということは、これまであまり調べられた例はありませんでした。
 そこで、当センターでは流水中での種子の挙動の把握を試みました。そのために実験河川において現象の観察を行い、室内で種子の沈降速度の測定を行いました。対象種は、最近河道内での分布拡大が全国的な問題となっている外来種のシナダレスズメガヤ(イネ科)です。シナダレスズメガヤの種子は、浮いたり水をはじいたりといった特別な性質はありませんが、出水時の流水によって広範囲に散布されると考えられています。
 実験河川の氾濫源ゾーンにおいて一定量の種子(熱処理済み)を流した結果、流速の大きい(約70cm/s)地点ではそのまま流下し、流速の小さい(約15cm/s)地点ではほとんどの種子が沈降することが確認されました。そこで、種子100粒を用いて沈降速度を測定した結果、平均で約3.28cm/sであることが確認できました。この値を土砂の沈降速度と比較したのが図3です。ここでは、粒径0.25mm程度の砂とほぼ同様の値を示すことがわかりました。
 今回の結果から、出水時に種子が流出した場合、種子は細かい砂が沈降する様な流速が遅い箇所で沈降・定着する可能性が示唆されました。過去の研究によりシナダレスズメガヤは砂礫地の環境と結びつきが深いことが指摘されていますが、出水する種子散布もその一つの要因であると考えられます。
 今後も、種子散布をはじめ河川の植生に関する調査・分析を行い、河川の植生管理や自然再生に活かしていきたいと考えています。


担当 : 松間 充

■図-1 シナダレスズメガヤ
■図-2 シナダレスズメガヤの種子
■図-3 種子と土砂粒子の沈降速度の比較
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