実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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Q 流量の違いによって川の生産と
呼吸に変化は見られるでしょうか?
A 流量が小さくなると生産がより抑制されることが解ります。

● 研究の背景と目的

 近年、森から海に至る物質動態やエネルギーフローが話題になります。一般に集水域から流入した有機物や栄養塩類は河川内で捕食と分解そして再生産を繰り返して海に至ります。このプロセスは今後の集水域・氾濫原管理を考える上で極めて重要な課題と言えますが、その全貌を解き明かすことは容易ではありません。これは、物質の動態そのものを把握すること、そして、河川が流量の多少によって常に変動する系であること、に主たる原因があります。実験河川では、任意に流量を設定できるため異なる流量下における物質の動態やエネルギーフローの把握が比較的簡単に実施できます。平成16年度は、流量の大小によってエネルギーフローを支配する生産と呼吸がどの程度変化するかについて、実験河川で実測した結果について報告します。

● 生産速度の推定方法と実験方法

 生産速度は2地点間の溶存酸素濃度差から推定しました(方法の詳細は、「溶存酸素濃度の連続観測を用いた実験河川における再曝気係数、一次生産速度及び呼吸速度の推定、陸水学雑誌Vol.66 No.2、pp93-105、2005」をご覧下さい。また、ARRC NEWS Vol.7にも方法の概要が掲載されています)。実験は2004年7月26日〜28日にかけて実施しました。実験河川Bにおよそ50L/s、実験河川Cに200L/sの流量を与え、両実験河川の上流区間において溶存酸素の連続観測を行いました。また、実験終了後両実験河川の上流区間において10m間隔で水深の測定、代表断面で流速の測定を、行い溶存酸素濃度を測定した2地点間の流下時間を測定しました。

● 結果と考察

 実験河川BとCにおける生産速度と呼吸速度の時間変化を示します(図−1)。単位はm2、1時間当たりで生産される酸素量で示しています。両河川とも日中に生産速度が上昇、夜間にゼロ付近まで減少し、生産・呼吸速度が適切に推定できていることが解ります。
 次に、7月27日零時〜7月28日零時までの1日当たりの総生産量、呼吸量、純生産量を見てみましょう(図−2)。流量の少ない実験河川Bにおける日総生産量は実験河川Cより大きくなりましたが、日呼吸量は更に大きくなり、結果として純生産速度は実験河川Bにおいてマイナス値が大きくなりました。これは、流量の少ない実験河川Bが外部から流入したエネルギーに依存した系となっていることを示しています。流量の減少は、流速と水深の減少を引き起こし、生産と呼吸にそれぞれ正と負の効果をもたらすと考えられます。
 今回のケースでは、流量の減少は生産・呼吸量に正の影響を与えましたが、相対的に呼吸への影響が大きくなりました。1日だけの結果ですから明確なことは今後の研究に依りますが、本結果は、河川中流域における流量の変化が、生態系の物質代謝に影響を与える重要な要素であることを示すものでしょう。



担当:萱場 祐一
■図-1 生産速度・呼吸速度の時間変化
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■図-2 日総生産量(G.P.)・呼吸量(E.R.)・純生産量(N.P.)
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