● 背景と目的
我が国では古来より、様々な方法で川に石を配置することによる治水対策が行われてきました。一方で石により形成される間隙は、魚類をはじめとする水生生物の隠れ場所としても機能してきました。近年ではこれらの機能を併せ持つ護岸(環境)ブロックが日本全国の河川工事に使用されています。しかし、これらの生物の隠れ場所としての設計基準は、生物の隠れ場所の好みが厳密には反映されておらず、設置後の科学的評価もなされていません。従って、環境ブロックを生物の棲み場所として機能させるには、生物にとっての石の隙間の好みを明確に評価して、護岸ブロック開発に反映させる必要があります。
● 方法
2005年12月に実験河川Aに巨礫(径35p)、大礫(径20p)および中礫(径4p)の3種類の礫を水辺に敷き積み、各礫に対する調査地を3箇所ずつ造成しました。そしてそのまま半年間河川に残置させてから、2006年の6月下旬に各調査地において魚類の捕獲調査を行いました。捕獲は、各調査地の礫部を覆うように網で仕切り、すべての礫を取り除いた上でエレクトリックショッカーを用いて行いました。また、取り除いた礫を一定容器内に積めて、水を充満させることにより、各礫で形成された間隙の容積を算出しました。
● 結果と考察
礫を水辺に設置することにより、どの礫サイズにおいても40-50%の間隙が形成されることがわかりました(図1)。また、礫1個あたりの間隙の容積は、巨礫が8.06R、大礫が1.69R、中礫が0.01Rと大きく異なりました(図2)。
各調査地で捕獲された魚類群集は図3のように区分されました。グループAは中礫の3つの調査地が含まれ、底生魚であるシマドジョウ属とヨシノボリ属が代表種でした。また、グループBは、大礫の2つの調査地と巨礫の3つの調査地(大礫の1つの調査地を含む)に区分され、前者はウナギとウキゴリが、後者はタモロコ、モツゴおよびフナ属が代表種でした。以上より、礫により形成される水中の間隙は様々な魚類の棲家として機能しており、礫の大きさにより棲息する魚類の群集構造が異なることが示されました。
このような違いがみられる要因として、間隙の大きさ、形、流速、暗さ、水深などが影響していると考えられ、平成19年度には発展的研究として、以上の因子をコントロールして想定した魚類を定着させる実験を行っています(写真1)。
担当:佐川 志朗・矢崎 博芳・秋野 淳一・大森 徹治 |
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■図-1 間隙の容積割合 |
■図-2 礫1個あたりの間隙容積 |
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■図-3 各礫サイズに定着した魚類群集構造の区分 |
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■写真-1 間隙実験の様子 |
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